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花の祝福は私に宿る  作者: タカのハネ
3/15

1-2「花の祝福」

続きです。

英雄に憧れる少年のように。

それは、胸の奥を焦がす思いであった。

この街は比較的大きな街だ。

学校、などという教育機関は、そうそうあるものではない。まして、この学び舎は1学年約250名のクラスがA〜Fまでの記号で分けられている。

1クラスが40名にも及ぶのだ。

これは、小さな村であればその人口に達する時もある。

つまり、この学校はそれだけ生徒を集める魅力がある、ということである。

無理もない。

マグニ・ローレンが創った街は飢えることがない。

周囲を枯れた大地で囲まれたこの街は、不思議なことに、いつまで経ってもその土地を枯らすことはなかった。

それどころか、豊穣の神が降りたかのようだった。

どんな作物でも育ち、水は溢れ、人々の腹を満たしていった。

周囲からすれば、楽園同然だったのだろう。

商人は店を開き、農夫は畑を広げ、外からも多くの人がやってきた。

気づけば、人口およそ100万を優に越す大都市となっていた。

俺は、そんな街が誇らしかった。

だが同時に、退屈を感じていた。

人は、この街でしか生きられない。

一度外に出れば、そこは不毛の大地だ。

生きていくのであれば、ここから出ずに、一生を終える方が良い。

そうとはわかっているのに、俺の胸がチクリと痛んだ。

実のところ、本当の意味ではわかっていないのだろう。

だからこんなにも落ち着かない気持ちになるのだ。


ある日、よく見る旅商人の男から話を聞いた。

曰く『塩水で出来た湖がある』のだと。

曰く『天にも届きそうなほど高い木がある』のだと。

曰く『1年でいくつかの気候を回す国がある』のだと。

そのせいだ。

その話のせいで、俺はこの街にいることが我慢できなくなった。

"外"を渇望してしまった。

だから、成人と認められる齢18までの3年間を、こうして学ぶことで埋めているのだ。

成人した途端、俺の心のタガは外れるだろう。

そして、ついに念願を叶えるのだ。

誤字などありましたら感想欄におねがいします。

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