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1-11「花の祝福」
続きです。
靄が言う。
『‥‥"花"よ、それは同情か。
この死にゆく若者と、生きていくつもりか。
それは、石の上に根を生やすのと同じであるぞ』
"花"。
これがそうなのか。
だが、まだその花弁は閉じたままだ。
花の蕾が揺れた。
りん、という音がして、周囲が白く光りだす。
俺もその光に巻き込まれた。
晴天の空の元で、青い芝生に寝転ぶような暖かさを感じた。
花の蕾が何か言っているような気がした。
『誓え』
と、靄が言う。
『信じられないことだが、花は貴様を生かすことを望んだようだ。
だが、ゆめゆめ忘れるな。
それは貴様の思うような便利なものではない。
貴様がまた罪を犯そうものなら、花は途端に答えなくなるであろう。
だから、誓え。
その花に敵うよう生きることを。
もう、貴様は間違えてはならないのだ』
俺は、膝立ちになり、両手の指を組み、
目を閉じた。
「‥‥誓います」
ゆっくりと目を開けた。
そこには、白く綺麗な、一輪の花があった。
これが、俺ーー-イオ・アルバーナと"花"の出会いであった。
一話完結です。
次は街を出ます。