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花の祝福は私に宿る  作者: タカのハネ
11/15

1-10「花の祝福」

続きです。

惨めだ。

俺はここで死ぬのだ。

暗い闇の洞窟で、誰にも気付かれずに、ひっそりと。

街に戻りたいと思った。

こんな結末は嫌だ。

誰かと触れ合うことの、なんと幸せなことか。

そう思えば、俺の抱いていた夢が無性に馬鹿馬鹿しいものであるように感じた。

この洞窟と街は同じだ。

暗い洞窟から見れば、あの街はキラキラと輝き。

街から見れば、世界は未知にあふれている。

両者は結局、自らにない境遇を求める、ただの好奇心の矛先だ。

エルマ。

君に会いたい。

会って、この夢のことを話そう。

そしてまた叱ってくれ。

今は君のあのお節介の声が聞きたい。


それと、言わなければならないことがある。

すまない。

今まで君に不遜な態度をとっていた。

俺は君の才能に嫉妬し、傲慢にも俺の方が上の筈だなどと、勘違いを起こしていたのだ。

そんな俺に対する説教を受ける覚悟も、今の俺にはあるから。


涙がこぼれた。

後悔の念と、この境遇を招いた自らに対する嘲笑が、腹の中でごちゃ混ぜになっていた。

涙が頬から顎へ、そしてそのまま地面に落ちていく。

パタパタと、いくつもの水滴が地面に落ちた。


その時であった。


涙で濡れた地面がわずかに盛り上がった。

その速度は徐々に加速し。

そして、芽吹いた。

不思議な芽であった。

そこらで見る草木の芽はほとんど緑色だ。

それなのに、その芽は新雪のような白を身にまとっていた。

そして、暗い洞窟を照らすかのように、わずかに光を浴びていた。


次々と落とされる涙を養分としているかのように、その芽はどんどん大きくなっていく。

芽は葉が増え、茎が伸び、それはもう芽ではなくなっていた。


花の蕾があった。




閲覧ありがとうございます。

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