1-9「花の祝福」
どうして、と思った。
"花"さえ手に入れば俺は助かるのに。
すると、胸の痛みが増した。
これは、俺の傲慢さか、と納得した。
見ず知らずの相手に対し、無償でその所有物をねだる。
これが傲慢と言わずして、なんと言うのか。
『"花"は持ち主の心を映す。
貴様が正しい行いをすれば、"花"もそのようにするが、逆もまた然り。
貴様のような軟弱な意思では、"花"を腐らせるのが落ちよ。
まして、かの御仁の用いていたものだ。中途半端な者に預けることなど、他の誰が許そうと、この私が許さぬ』
そうか、と気づいた。
この人型の靄は、"花"を守る者なのだ。
そして同時に、授ける者でもある。
"花"に相応しくない者はその圧力を持って排し。
相応しい者が見つかるまで、ここで待つ存在なのだ。
ならばと、
"花"は、どんな相手に渡りたいのだろうか。
靄に聞いてみた。
靄は、わからぬ、と答えた。
続けて、ただ、己が道を知る者はよく"花"を授かった、と言った。
己が道を知る、とはなんだろうか。
哲学的な話に疎いわたしには、その言葉の意味の本質がわからなかった。
だが、なるほど、と思った。
俺が持つ傲慢は、まだ消えそうにない。
そんな俺に、"花"を持つ資格など無いのだろう。