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私は佇んでいる。
ー何処に?
それは解らない。
ただ、私の足下は揺らいで透き通り、足場を突き抜けて外界が観える。
それは、清浄な水のようでもある。
ー海の上にいるの?
そうとも限らない。
辺りは一面、雲海だから。
私の立つ床は、爽やかな水色を反射している。
遠くの方には、真っ白な入道雲が観える。
それは、天空のようでもある。
ー空の上にいるの?
案外そうかも。
薄雲に霞んで、荘厳な柱が浮かんでいる。
淡黄色の、巨大な柱。
逆光で、よく見えないけれど、遥か遠くに神殿のような、城のようなシルエットが透けている。
神殿は、切り立った峰の頂上に聳えている。
黄金色の光が、峰の纏うヴェールを可視化している。
それは何処までも、幽玄だ。
ー崖があるみたいだけど?
そうだね。
ーやっぱり、陸の上なのかな?
さぁ。
ー綺麗な景色だね。
うん。本当にね…
言葉では言い尽くせないや。
ーずっと、此処にいたい?
出来る事なら、ね。
ー何時までも、いていいんだよ。
ーありがとう。
お目汚し失礼しました。