勘違い
「……同盟、会議?」
戸惑う声音で発した単語ながらも、その意味合いを拓未は理解してない訳ではなかった。
同盟とは共通の目的を持つ同士のことを表す言葉だったと記憶している。
つまり、それは――
「そこにいる海賊と同盟関係を結んだということだ。駄犬」
なんとも言えない表情で立ち尽くす拓未にカテナはあっけらかんとした態度で同盟の締結が完了していると宣言した。
「なんで、そんなことになってんだよ……」
カテナが寝ている間に拓未は骸骨の海賊たちと死闘を繰り広げ。
拓未が寝ている間にカテナはその海賊と同盟を結んだ。
いったい自身が寝ている間に何が起きたというのか。
拓未はぽかんと開けた口が塞がらなかった。
そんな拓未の疑問に答えたのはデイヴィッドだった。
「坊主の疑問ももっともだ。なにせ、うちのバカ共が勘違いをしやがったからな」
「勘違い?」
「あぁ。そもそもオレはお前らを拐って襲えなんて命令を出しちゃいねえのよ」
海賊船からの投網により捕縛拉致された拓未達一行だったが、一連の行動はデイヴィッドの命令を取り違えた船員達のミスだったという。
「オレは――『地上にいるあの嬢ちゃん達を船に連れてこい』――つったんだ」
そして、連れてくる選択肢に選ばれたのが投網だ。
「んで、アイツ等は手段はともかく嬢ちゃん達を船に上げた。するとだな」
投網の中からは獰猛な黒妖犬が登場である。
「オレは、嬢ちゃん達を連れてこい。と言った。そのなかにはもちろん犬の坊主に吸血鬼のご婦人様も含まれてる。だが、アイツ等はそれを理解してなかった」
結果として、船長の命令にはない謎の獣人が紛れていたと判断したエドワルドとハインリヒの二名が排除に乗りだし死闘を招いてしまったというわけだ。
「と、まぁそんなわけだ」
「そんなわけ。で、済まされていい話じゃ無い気もするが……」
報告、連絡、相談。俗にいう報連相は組織におけるもっとも重要な基本ルール。
それがなってないとはなんて海賊だ。と悪態を吐きたい拓未だったが、海賊だからこそ出来てないし、していないのだと途中から変な納得をしてしまう。
肉体には改造人間でなければ死んでいただろう傷が縦横無尽に刻まれている。
それに触れれば恨み言に怒りと様々な感情が生まれるが、拓未はなんとか飲み込んで話を進める。
「とりあえず、敵意がなかった。というのはわかった」
一応はカテナが同盟という関係を結んだ相手。
危険は無いと判断する。
拓未はデイヴィッドを信用したわけではなく、同盟関係を結ぶと決断したカテナを信じた。
「なら、次は目的を教えてくれ。どうして、俺たちを捕まえた? 何故、カテナと同盟を結んだ? そして――」
拓未は最大の疑問を口にする。
「あんた達は何者だ?」
空飛ぶ海賊船。
肉も皮も持たないというのに動く骸骨。
大量の船の残骸で形成された歪な島。
彼等について、問いただしたいことは山のようにある。
「……それは私も気になっていたことだ」
カテナが拓未の言葉に同調する。
「貴様等、どうやって不死者になった? 骨の身の不死者など珍しいものではない。西洋でも東洋でもありふれている。だが、そのほとんどは意思持たぬ傀儡に過ぎん。術者の命令に従うのみの木偶だ。しかし、貴様等には明確な意志が――魂が存在している。……実に面白い」
不敵な笑みを浮かべるカテナ。
真剣な顔つきの拓未。
両者に睨まれたデイヴィッドは口を開く。
「……オレは昔、私椋船の船長をしてた」
デイヴィッドは過去を思い返す。
「当時は大航海時代ってやつでな、大国がこぞって美味い餌場を探してた。土地と資源が豊富で文明なんてものを知らない未開人が住む土地。そんなとこを喰いもんにしてた」
デイヴィッドはそんな征服者達の一団に与して利を得ていた。
「……だからかねぇ、途中からうんざりしちまって逃げたのは」
そうして、デイヴィッドは海賊に身を堕とした。
因果な商売に見切りをつけ、より悪し様に云われるものの自由な海賊への道を歩んだ。
「――それが間違いだった」
デイヴィッドは明確に断言する。
過去の自分が選んだ道は間違いだったのだと。
「……話してやるよ。なんでオレ等が不死者になったのか」




