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Dead Heat Zone  作者: 中村英雄
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 ――今日も朝が来た。


 住処すみかにしている雑居ビル屋上のプレハブ小屋に朝陽が射し込んでくる。

 キラキラと眩しい陽光は起きたての眼には少し眩しい。

 このままもう一眠りしてしまいたかったが、そういうわけにもいかない。

 一日のなかで行動出来る時間は限られているので、無駄なく過ごさなければ勿体無い。

 見れば、窓ガラス越しに窺える天候は晴天そのもの。雲ひとつない青空という感じだった。


「……えーと、今日は」


 半分寝ぼけながら、枕元にあるはずのカレンダーを探す。

 億劫なので布団に寝転がったまま手探りで見付けようとするせいで中々見つからない。

 一般的なワンルームマンションの一部屋より少し広いかというサイズのプレハブ小屋。中は雑然としていて、布団回りにも物が散乱していた。

 今度、暇を見つけて片付けなければ。


「お、見つけた見つけた」


 ようやくカレンダーを発見できた。

 カレンダーといっても、適当なノートに日付と曜日を書き綴っているだけの代物だ。

 最初のうちは市販されていたカレンダーを見つけ使っていたが、それも記載されていた年月日分までを気付けば消費してしまったため今ではこうしている。


「今日から六月か、もうすぐ梅雨に入るんだな」


 となると、今日のような恵まれた天候はしばらく望めなくなってくるだろう。

 本格的な梅雨入りの予想日は後でカレンダーをチェックし詳しく算出してみよう。

 結局は少ないデータに基づく素人の統計なので、外れることのほうが多いがやらないよりかはマシな努力だ。

 天気予報がとても懐かしい。

 プロによる気象予報を当時は何の有り難みもなく聞いていたが、こうなって初めてその有用性に気付かされる。


「さて、と」


 梅雨入りを控えているとあってはやることは山のようにある。

 寝ぼけていた頭も梅雨入り準備という作業をこなすためにようやく稼働しはじめた。

 とりあえずは梅雨という雨の多い季節だ。

 屋上にいくつかポリタンクを設置し生活用水として使う雨水を得よう。

 あとは、屋上に造っている菜園に幾つかの対策をしなくてはならない。

 少し考えただけで、本当にやることが山積みになっていく。

 今日は相当疲れることを覚悟したその時。

 ――ガタガタッ!


「ッ!?」


 プレハブ小屋の中。

 陽が当たらない部屋の奥。壁に立て掛けられたそれが動いた。

 ――黒い棺桶。

 普段、この時間には滅多に動くことないそれが小刻みに動いていた。


「珍しいな……」


 すぐにプレハブ小屋から屋上へと出る。

 部屋の中から見た通り強い日差しが降り注いでいて気持ちのいい天気だ。

 そのまま屋上の端へと移動して鉄柵越しに下の様子を見てみる。

 雑居ビルは四階建てでそれほどの高さは無く、地上の様子はよく見えた。

 全盛期の面影などほとんど残していない荒廃しきった街並みが拡がっている。

 幼いときに見た終末戦争後の世界を描いた映画。それに出てきた光景に酷似していた。

 普段から見馴れてる……見馴れてしまった景色。そのなかで違和感を探し出すのは簡単だった。

 少し離れた道路に数体の影を発見。

 肉眼でも捉えられる距離にそいつらはいた。


「あぁ、【屍者ゾンビ】か」

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