双子
屍体の倒し方は簡単だ。
方法は色々あるが、どれも注意するのは一つ。
屍体に直接触らない。
遠距離や中距離から対処するのが一般的。
今日は長めのロープを使用。
相手は一体だったから驚異度も低めだ。
まずはロープを適当な場所に結びつける。
とりあえず道路脇の電柱に結ぶ。
そのまま道路を横断しピンとロープを張る。
あとは勢いよく回るのみ。
丁度いい位置に屍体を誘導したらロープを持ったまま電柱の周りをぐるぐる回る。
電柱を軸にして屍体の簀巻きがすぐに完成だ。
屍体のほうも抵抗はするが、鈍重なために対処はできる。
こうして身動きを取れなくしたら、あとは人それぞれ。
頭部を砕くなり、火で焼くなり、薬品で溶かすなり、好きなように無力化すればいい。
早めに処理をしたかったがそうもいかない。
なぜなら、
「おじさん、つよーい!」
「……うん。つよい」
俺の周りをうろちょろする子供二人がいるからだ。
「ぐるぐるー、ぐるぐるーって、たおしちゃったね」
「……うん。おもしろかった」
五、六歳くらいの見た目で、焦げ茶色の髪と紅の瞳という酷似した容姿を持つ二人。
片方の服装はスカートで、片方の服装はズボン。
男女の双子のようだ。
「ねぇねぇ、おじさんだーれ? なんでつよいの? どこからきたの?」
「……うん。だれ?」
スカートを履く女の子の方は良く喋り、ズボンを履く男の子の方は言葉数が少なくおとなしい。
対照的な性格のようだ。
というか、さっきから聞いてれば何度も何度も傷つく言葉を吐いてくれる双子である。
「俺の名前は木場拓未だ」
「「きばたくみ?」」
双子の声が綺麗に重なり、首を傾げる動作まで同時に行ってみせた。
「そうだ。木場拓未。おじさんじゃないからな。そこんとこよろしく」
おじさん。
自分自身で三十路手前のおじさんと自嘲する分には構わない。
だが、他人の口から『おじさん』という単語が出てくるのは許せない。
というか、許せないといま知った。
おじさん。言われてみて初めてその言葉が持つ本当の破壊力を体感する。
だから、もう聞きたくない。
二十代後半はまだまだ十分若いんだ。
おじさんなんて年齢ではないと、双子に教え込まねば。
「……きばたくみ。うん! わかった、おじさん!」
「……うん。わかった。おじさん」
「それで、おじさんはどうしてここにいるの! なんで!」
「……うん。なんでいるのおじさん?」
「…………ふ」
ねぇ、お前らわざとやってる?
名前教えたのに、おじさん呼びで固定されてるんだけど。
木場とも拓未とも一切呼ばれてないんだけど。
おじさんと呼ばれる度にこっちは精神削られてくんだけど。
そんなことも知らずに双子たちは、おじさんと連呼して質問を続けてくる。
もう止めてくれ。
これ以上おじさんって呼ばないでくれ。
「木場さん!」
おじさんではない言葉が耳に届く。
「……真理」
真理の姿がそこにはあった。
息を切らしているので、俺が飛び出してったあと、すぐに追いかけてきたのだろう。
「木場さん、この子達はいったい?」
真理が呼んでくれる自分の名に救われる。
これ以上、おじさんと言われていては心が保たなかっただろう。
そして、この双子が俺を傷つけてきたせいで話が全然進んでないことを真理に話す。
「そうだったんですか。大丈夫ですよ。木場さんは全然おじさんじゃないですから!」
力強く言って貰えて大変嬉しい。
そうだ。俺は二十代後半。まだまだ若い。働き盛りだ。まだ肌はギリギリ水を弾く。大丈夫。
「じゃあ、わたしがあの子達と話してきます。木場さん、小さい子の相手は苦手そうですし」
「……頼む」
俺はこの短時間であの双子に苦手意識が生まれてしまった。
お言葉に甘えて真理に双子の相手はぶん投げる。
俺の周りをうろちょろしていた双子達は、新たな登場人物の真理に興味の対象が移った様子。
「やっぱり、慣れてるな」
少し離れたところから様子を見てみるが、真理は小さい子の扱いに慣れてる。
施設で双子達と同じような年頃の子供の面倒を見ていたというだけある。
しゃがみこんで双子達と同じ目線で会話を交わし、会って数分もしていないのに、もう友達のように仲良くしている。
「木場さーん、ただいま戻りました」
「おかえり。で、どうだった?」
「はい。それが……」
真理は双子達と打ち解けたことで、色々と情報を掴んできてくれた。
俺一人では得るのに苦労したであろう情報を。
「……この先に双子達の家がある?」




