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プロローグ
その時がいつ訪れるかなんて誰にもわからなかった。
明確に日時が指定されていたわけではない。
ただ、漠然と“いつか”その時が来るということだけはわかっていた。
世界は常に危うい均衡のなかにあり、水面下でその均衡を崩すような権謀術数、人知れぬ戦いが日夜繰り広げられている。
そして、その均衡が崩れたならば世界には地獄が具現することになる。
たとえば、人類自らが手にした叡智の炎による自滅。
たとえば、異星からの来訪者による無慈悲な侵略。
たとえば、黙示録に語られる約束された終末。
挙げればキリがないほど世界は幾多の滅びと隣り合わせにあった。
――西暦にして、一九九九年。
一つの世紀の終わりと共にやってきた世界の破滅。
それは考えてみれば仕方のないことだったのだろう。