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作者体験談

愛の討論

作者: こころ


「恋の味ってどんなだろう?」


「……はっ?」


昼下がりのファミレスの一角。

先程まで文庫本にあった彼女の瞳が僕を映す。その瞳の中の僕は少し間抜けな顔をしていた。

そんな僕を見て「ぶふっ」と吹き出す彼女。


「ちょ…ちょっと待って。その考えに至った経緯を教えてほしいんだけど」


「経緯も何も、この『コックのレシピは恋の味』に決まってんじゃん」


「あんたバカなの?」と彼女。一言多いのはいつものことだ。

そんな彼女が持っている文庫本には題名のロゴといっしょに、食事を振舞う男性と目を輝かせた女性が描かれている。

タイトルからして、きっと恋愛ものだ。


「レモンとかハチミツとか苦めのココアとかかな?あっ、塩とか辛子とか胡椒こしょうだったりして!恋をすれば分かるのかな?ねぇねぇ、どんな味だと思う?」


黙ったままの僕に焦れを切らしたのだろう。好奇心いっぱいの弾むような声。


「それを聞いて君には何の得があるの。そういうのは女性同士でするものだろう」


「まぁそうなんだけどね。でも私の目の前にいるのは男じゃん?まっ…まさか、オカマだったの!?」


「ちげぇよ!なんで君はこう、斜め上の方向に考えるんだ!」


なんか頭が痛くなってきた。僕がため息を吐いたことでむかっとしたらしい彼女は「別に今そんなことどうでもいいの!」と話を無理やり中断させた。


「ほら、質問に答えて。そうしないと、あんたの口に唐辛子吐くほど入れるからね」


確かに僕は辛い物が苦手だ。だが、どんな人間でも吐くほど入れられたら死ぬ。

彼女は考えるより先に口に出てしまうタイプだ。大学で初めて会ったときから分かってたけどな。

そして、そんな本能で生きているような彼女の相手をする僕は世界一優しいと思う。



もう1度、ため息を吐いて彼女に向き直る。


「これは僕の勝手な考えだけどね…その人の気分次第なんじゃないかな。レモンと思うならレモン。塩と思うなら塩。唐辛子と思うなら唐辛子。逆に味が無い、という考えもあると思うしね」


「ファーストキスはレモンの味」なんて昔からある言葉だけど実際は無味であったり煙草であったりすると聞いた。それと同じだろう。


「恋なんてそんなものだよ。って何その顔?」


「ふーん…」と感心した声とは裏腹になぜかニヤニヤとしている彼女。こういう時の彼女はろくでもないことを考えている。


「あんたって恋したことあるんだ」


ほらな、ろくでもない。茶化したように言う彼女にむっとする。


「君、僕のことなんだと思ってるの?」


僕の質問に少し考えた彼女は


「専門書ばっか読む変態」


「誰が変態だ、こら」


彼女にデコピンをすると、「女の子に暴力はいけないんだぞ~」とあまり痛くなさそうな声が返ってきた。


「あっ話を戻すけどさ人の気分次第の恋って、さっきは食べ物で考えたけど具体的にどんな感じなの?」


彼女はストローでグラスの中のアイスコーヒーを混ぜた。氷がぶつかる音が耳を掠める。


「さっき言ったけど僕の勝手な考えだからね。

恋っていうのは不思議なものだよ。よく漫画で魔法だとか病だとか言われてるけどその通りだね。ある人は夢中で情熱的な恋を、またある人は少しずつ想いを募らせていく恋を。

女はこうだとか男はこうだとか言ってても本質は一緒。夢中になったかと思えばすぐに飽きてしまうこともある。

恋は確かなものでもあるけど、不確かなものでもあるんだ」


一通り喋り終え、アイスココアを一口飲む。やっぱり甘いって素敵だ。

前からズズッと音が聞こえて彼女に視線を向ける。考え事をしながらなのか、飲み干したのに気づいていないようだ。



「じゃあさ…愛は永遠なの?」



少し聞くのを戸惑っているかのような声に内心、納得した。「そうだなぁ…」と言ってアイスココアを飲みながら考える。

飲み終えたころになってようやく考えがまとまった。

そして、僕は口角の上がった口を開いた。



「永遠の愛には期限がないものとあるものに分けられる。

期限がないものには、どんなに断ち切ろうとしてもいつまでも繋がっているものが多い。例外はあるけど家族とかが挙げられるかなぁ。

期限があるものには、突然に出来たものが日々を重ねるうちに薄れてしまう。童話とかは多分その傾向があるよ」


首を傾げた彼女に笑いかけながら続ける。


「例えば、『白雪姫』。あれって結局は見知らぬ王子に顔で一目惚れされて勝手にキスされて意識が朦朧とする中で夢見る白雪姫はそれを『愛』と勘違いした。

まぁ、僕の勝手な想像だから実際は分からないけどね。でも、他のラブストーリーな童話だってそんな感じだろ?」



軽く伸びをして疲れをほぐす。考えを人に伝えることは好きだけど、まとめるのは苦手だ。あとで甘いものでも頼もうかな。

前を見るとポカンと間抜け面をしていた彼女ははっとして


「あんたは乙女の理想をぶち壊す男ね」


酷い言い草だ。聞いてきたのはそっちなのに。と言おうと思ったが、妙に納得した顔で


「まぁでも、恋とか愛とかって結局そんなものか」


と言うので「そうだね」と一応相槌を打っておく。


「さっきから何度も言うけど、これは僕の勝手な考えだからあんまり真に受けないでね。それにさ、ここまで話して今更って感じなんだけど……」


自分でも困ったような顔をしているのが分かる。なんで気付かなかったんだろう。もしかして、当たり前すぎて忘れていたんだろうか。





「僕たちって恋人同士だよね?」





おわり



男の子が言っていた「僕の勝手な考え」は、私が学校の宿題だった(3年間書き続けた)日記の一部を切り取ったものです。日記に何てものを書いて先生に読ませてんだって話ですね、はい。先生は律儀にコメントを返してくださいました。皆さんもどうぞ、コメントをください。

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