ロビンソンなのね?
ザバァ………………
ザバァ………………
ザバァ………………
波打ち際に打ち上げられた難破船。
傍らの瓦礫に寄り掛かりフト、目を覚ますオレ。
『助かったのか……?』
それにしても酷い嵐だった。
辺りを見回すが誰もいない。
みんな、海に呑み込まれたらしい。
トボトボと白い砂浜を歩き出すオレ。
どこまでも、長くのびている。
『もしかしたら無人島に漂着したのか?』
食糧と水は難破船にあるから、余り離れない方がよさそうだ……
そう思ったオレは浜辺の縁まで来て岩壁を見上げて引き返した。
耳を澄ましても波音しか聞こえない。
長い砂浜にはオレの足跡だけが長くのびている。
オレは閃いた!
砂浜には【help】の大きな文字を書こう!
太い枝を折って白い砂浜に大きく救出のサインを書いた。
はて?
SOSの方がよかったかな?
どちらにせよ、同じことだ!
オレは空を仰いだ。
『おー!神よ、我を救いたまえ!』
『今から信者になります!』
その時、バタバタとヘリコプターが遠くの方に現れた。
『やった!!』
大きく手を振り助けを求めるオレ。
次第に近付いてくるヘリコプター。
『やった、助かったぞ!』
『にわか信者でも、神様は願いを聞いてくださる~♪』
『ありがたや、ありがたや、』
『おーい!ここだぁ!
『助けてくれー!』
オレの頭の真上まで来て下を見ているヘリコプターの二人。
笑い転げているようにも見える。
『?』
『なに?なに、?』
『何でわらとるんや?』
ヘリコプターは、何事もなかったようにそのまま岩壁の彼方へ消えていった。
『なんでやねん!』
『なんで、助けてくれへんの?』
棒きれを投げ捨てその場に座り込むオレ。
ふてくれさぎみ、海の水平線に目を移した。
『あーーー!!』
『船や!』
『しかも、大型客船や!』
オレは急いで薪を集めて火を付けた。
中々、
燃え上がらない……
上着を脱いで風を送る。
『はよう!!
燃え上がってくれーー!!
船ぎ見えへんようになる前に!』
努力の甲斐もあり、燃え上がる薪の炎。
これまた、客船に向かい大きく手を振り助けを求めるオレ。
『おおーーーい!!』
『ここや!ここや!』
『助けてくれーー!!』
客船は次第に浜辺に近づくも、ある程度の距離を置いて停止してしまった。
客船の甲板には大勢の人々。
老人から幼子まで指を指してオレを見て笑っている?
『なんでやねん!』
『この難破船がみえへんか?』
『笑っとる場合やないやろ!』
『はよう!、救命ボートを出さんかいな』
『へ?………………おい、おい、』
『なんで?』
『いっちまうの?』
『おーお!、見捨てへんでくれーー!!』
『頼むわ!、助けてくれーー!!』
岩壁へ大型客船は姿を消していった。
オレは天を仰いだ。
『神様!、それはないやろ!』
『喜ばしといて、落とすんかい!』
オレは砂浜に大の字になって寝転んだ。
『これから、オレはどーすりゃえーんや!』
すると、オレの顔をのぞきこむ女の子の顔。
『うわーーーーっ!!』
『な、な、なんやねん!』
『お嬢ちゃん、どっから現れたんや!』
オレをジーッと見て話し出す女の子。
『オジちゃん、何してるの?』
『これも、アトラクションのひとつなの?』
オレは意味不明な彼女の言葉に首をかしげた。
『アトラクションな、わけないやろ!』
『あの
難破船を見てわからへんの?』
『漂流したんや!』
彼女はキョトンとして、またまた笑いだした。
『漂流ゲームなのね!』
オレは憤慨した。
『漂流ゲームな、わけないやろ!』
『り、リアル漂流や!』
すると彼女の後ろからガールスカウト風の若い女性が現れた。
『お客様、もう、そろそろ閉園のお時間です。』
『出口へお急ぎくださいませ。』
オレは、またまた、意味不明な言葉を話すガールスカウトに困惑した。
そのガールスカウトは、オレの側に近付いて来て言葉を掛けた。
『お疲れ様でした。ロビンソンさん。』
彼女はオレの目の前で眼鏡を外した。
いや、それはオレが眼鏡を外されたのだ。
とたん、記憶が呼び戻された……
辺りは真っ白な広い部屋……
オレの目の前にはバーチャル立体眼鏡を下げた女性スタッフ。
『本日は当、バーチャル漂流館へおいでくださりありがとうございました。』
『またのお越しをお待ちしております。』
…………………………………。
出口のドアへ向かうオレ。
そうだった。
現実から逃避するためにここへきたんやったな……。
ドアを開け外へ出るオレ。
へ…………………………。
どこまでも続く宇宙空間。
『おーーーお!!』
『助けてくれーー!!』