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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第三章 俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。
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部屋の中には

ブクマ評価感謝ですm(_ _)m


 「はぁ、やっとついた……」


 俺は今しがた自分たちが通ってきた遥か後ろの方を見てみる。


 きっと、この馬車から続いている、通った跡はまだ残ってるんだろうなぁ、なんて思いながら俺は、前にそびえ立つ大きな建物を見る。


 それはエスイックが住んでいる王城。


 ―――そう、要するに俺たちはエスイックたちが待っているだろう都に到着したのだった。


 「……すぅ……」


 長い行程で珍しく疲れたのか、リリィはいつも通り俺の膝の上で眠ってしまっている。


 しかもご丁寧に服の裾あたりを握りながら、というオマケ付きだ。


 少し辺りを見回してみれば、そこにはトルエやアウラも二人寄り添いながら眠っている。


 「……ヒール」


 俺はそんな皆に一人ずつ回復魔法をかけてあげる。


 おばちゃんから聞いたのだが、既におばちゃんはエスイックから俺の回復魔法のことを伝えられていたようなので、特に『リフレッシュ』などと言い換える必要はない。


 俺がまずリリィに回復魔法をかけると、気持ちいいのか、軽く微笑みをその寝顔の中に浮かべていた。


 トルエやアウラたちも同様で、やはり疲れていたらしいことが分かる。


 それを和らげることに成功した俺は、軽くホッとしながらおばちゃんの方を向く。


 「俺たちは、もうすぐ降りるんですよね?」


 事前に聞いていた話では、おばちゃんが俺たちを王城の近くでおろしてくれる、ということだったので、もう一度確認する。


 「あぁ、そうだよ。あたしは馬車を返さないといけないからね」


 おばちゃんはこちらを振り返りながらそう言う。


 なんと、国王様の親であるおばちゃん自身が馬車を返すというのだから驚きだ。


 こうやって馬車の御者を務めてくれているだけでもとんでもないのに、そんなことまでするあたりが、やはりエスイックに似ているかも、とおばちゃんに言ったりはしないが、そう思った。





 「じゃあ、ありがとうございました」


 馬車からおろされた俺たちは、各々おばちゃんにお礼を言う。


 おばちゃんは気にしないでいいと言いながら馬車を返すために、俺たちとは別の方向へ向かっていく。


 馬車が見えなくなるまで見送っていた俺たちは、馬車が完全に見えなくなると、後ろを振り返り、王城に入るために玄関へと向かった。


 途中で門番の人たちに止められたが、エスイックからも何か連絡があったのか、軽く事情を伝えると、すぐに通してくれた。





 「……あれ、確かこっち、だったよな?」


 前回のように誰かメイドさんが居たりすることはなく、俺たちは前回の記憶を辿りながら、ゆっくりと廊下を進んでいく。


 「あら、アネスト様方ではございませんか」


 廊下を歩いている途中で、掃除をしていたらしいメイドさんに出くわした。


 「あ、こんにちは。えっと国王様に会いたいんですけど……」


 俺はそこで、アウラたちを見て気づく。


 馬車にのっていた時間が長かったからだろうけど、少しだけ服が汚れてしまっている。


 俺は特に気にしないが、やはり女の子というのは、こういうのに敏感なはずだ。


 「……と思ったんですけど、服って貸してもらえますかね。三人分なんですが」


 「あ、はい。ではこちらにどうぞ」


 後ろの三人に目をやりながらメイドさんに聞いてみると、俺の意を察してくれたのか、すぐにアウラたちを先導するようにして歩き始めた。


 「じゃあ俺は先に国王様に会いにいきますんで、お願いします」


 メイドさんの背中に向けてお礼を言うと、わざわざ振り返り頭を下げてくる。


 そしてすぐに再びアウラたちを先導していった。


 「……じゃあ行くか」


 俺は一人、後ろを振り返り、見覚えのある廊下を歩き出した。




 「えっと、ここ、だったよな……?」


 しばらく歩いていると、やはり見覚えのある扉が目に入り、脚を止める。


 普通の扉とは違い、少し修飾されている扉は、以前にエスイックに連れてこられた部屋だ。


 「じゃあ、失礼しまーす」


 俺は早くエスイックに帰った、という旨を伝えなければいけないと思うばかり、中を確認することなく、扉を開けてしまった。


 「…………」


 やはりというべきか、部屋の中はどこか薄暗く、エスイックの趣味を表している。


 俺は部屋の中にいる『ソレ』を見て思わず黙り込んでしまう。


 部屋の中には――――――『漆黒の救世主』が佇んでいた。


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