今まで見ていたハズ
ブクマ評価感謝ですm(_ _)m
キリが悪いです、申し訳ない><
「……え……えっ!?」
綺麗なドレスを着て、部屋の中にやってきたのは、どこからどう見てもメイドさんだった。
それも俺にこの部屋の場所を教えてくれたりと、色々お世話してくれたメイドさんだ。
「……め、メイドさん、ですよね……?」
俺は魔王様とパルフェクト姫に恐る恐る尋ねてみる。
「あぁ、私の妻だが?」
「…………え?」
えっと、どういうことだ?
メイドさんじゃないの……?
ま、魔王様のおくさん……?
「ど、どういうことですか……?」
俺はもしかしてと思いながらも、恐る恐る魔王様に聞いてみる。
「私の妻の夢がメイドさんだったらしくてな、やりたいというからメイドをしてもらってるのだ」
「えぇ……」
そんなことって普通あるだろうか……。
メイドさんだと思っていたから正直どんな接し方をしていたかが分からない。
もしかしたら何か無礼なことをしていたかもしれないし、色々とマズイことをしていたかもしれない。
そしたら今の『リリィを連れてくる必要がない』ってのも、もしかしたらそう言う意味なのだろうか……。
「……」
俺は何と言ったらいいのか分からず、パルフェクト姫と同じように黙ってしまう。
「ん、それでリリィを呼ぶ必要がない、とはどういうことなのだ?」
ちょうどその時、俺が聞きたかったことを魔王様が聞いてくれた。
俺は思わず悪い予感が頭をよぎり、身を固くしてしまう。
「それは―――」
ついにメイドさん、もとい魔王様の奥さんが口を開く。
一体、何を言われるのだろうか。
魔王様の奥さんが応えるまでの間が、とても長く感じた。
「―――自分でここまで来てくれると思いますので」
「―――え?」
俺は魔王様の奥さんのその言葉に、ゆっくりと顔をあげる。
「い、今なんて……?」
俺は気づけば、魔王様の奥さんに聞き返していた。
「リリィはここへ自分でやってくると思われます、と言いましたが何か?」
そう再び応え直してくれるメイドさんは相変わらずの無表情。
だけど俺はその言葉に思わずホッとせずには居られなかった。
「だがリリィは風邪だと聞いたぞ?」
そんな時魔王様がそう声をあげる。
確かにパルフェクト姫が言うには、リリィは風邪だということだったのだが……。
俺と魔王様は未だに下を向いているパルフェクト姫に目を向ける。
そんな視線を察したのか、パルフェクト姫がビクッと肩をはねさせた。
「リリィは風邪などには掛かっていないので安心してください」
「……え?」
それならどうして、パルフェクト姫はそんなことを言ったのだろうか。
いやまぁ、リリィが元気というのであれば俺としても嬉しいのだが……。
「それは一体どういうことなのかね?」
やはりというべきか、どういうことか気になったらしい魔王様がパルフェクト姫に問い詰める。
「い、いや……」
辛うじてパルフェクト姫が顔を上げるが、それだけ言うとまた黙り込んでしまう。
「……」
その間、俺は何かできるわけでもなく、ただことの成り行きを見ていた。
「……むぅ、それで実際のところどういうことなのだ?」
魔王様は、これ以上パルフェクト姫に聞いても教えてくれないと思ったのか、今度は自分の奥さんに聞いている。
「それはリリィ本人から聞けばよろしいかと」
しかし、その魔王様の奥さんも教えてはくれなかった。
魔王様もそれを聞いて諦めたのか、今からやって来るらしいリリィに聞くことにしたようだ。
「……」
そうは言っても、いつになったらリリィが来るのだろうか。
魔王様もそこは別に気にならなかったのか、特に聞こうともしない。
「えっと、リリィは……?」
俺は思わず、魔王様の奥さんにそう聞いてみる。
「恐らく、もうすぐかと」
しかし俺が期待していた応えとは違って、それだけを告げるだけの魔王様の奥さん。
「……あ、はい」
それ以上無理に聞くわけにもいかず、俺はまた黙り込む。
「……」
結局その後は特にだれも喋ったりすることはなく、ただ時間だけが過ぎていった。
「……はぁ」
俺はたまらずため息をこぼしてしまう。
『ドゴォォ……ン』
その瞬間、どこか遠くの方で何かが崩れるような音が聞こえた、ような気がした。
「……え?」
俺は音の聞こえた気がした方向を見てみるが、ただ扉があるだけで何も変わった様子はない。
周りを見てみると、魔王様の奥さんは特に何か反応するようなことはなく、そして、パルフェクト姫はというとさっきみたいにその肩をビクッとさせて、さらに魔王様を見てみると、意外にも俺と同じように何があったのか気になるかのように辺りをキョロキョロしていた。
「……今のは?」
そんな魔王様は、目があったらしい奥さんに聞いているが、当の本人は特に何かを答えたりするようなことはせず、ただ無表情のままだ。
「……」
無視された魔王様は、どこかシュンとしたような顔を浮かべながらも、すぐに気を取り直したかのようにしていた。
『ドゴォォォ…ン』
『ドゴォォォン』
『ドゴォォォンッ』
そんなことをしている間にも、音は鳴り響き続いていて、しかもその音はどんどんと近づいてきているらしい。
その音が近づいてくる度に、パルフェクト姫だけでなく、俺と魔王様も肩をビクッと揺らしてしまっていた。
ただ魔王様の奥さんだけが何も気にすることなく、いつもの無表情でいるだけだ。
『ドゴォォォォンッ』
そしてついに、その音は、いや、その轟音は部屋の間近で聞こえた気がした。
「……」
すると、その轟音が聞こえたとき、どういうわけか魔王様の奥さんが横に動いている。
どういうわけか分からなかったが、特に気にする必用もないし、そんなことよりも今は近くで鳴り響いている轟音の方が大事だと思い直す。
「……」
そんな時、ふとどうしてか分からないけれど、何気なく扉のほうが気になった。
そしてそのまま扉のほうを見続けている。
その間、特にさっきまでの音も聞こえなくなり、少し安心していた。
『ドゴォォォォォォオンッッッ!!!!!』
「―――え?」
しかし、そんな風に油断していたとき、ソレはやってきた。
気がつけば目の前に、今まで見ていたハズの扉が、近づいてきていた。
「ぶぎゃっっ!!」
そしてそのまま俺は、本来あるべきはずのところから吹き飛んできた扉に、吹き飛ばされたのだった―――。