あっぱれである。
ブクマ評価感謝ですm(_ _)m
あと、感想でご指摘を受けたので一応確認をしておきますね。
自分がかるく流したので勘違いしてしまった方もいらっしゃるかもしれませんが、リリィは奴隷ではありません。
勘違いさせてしまった方々、申し訳ありませんでしたm(_ _)m
俺はついに魔王様がいると思われる部屋の扉を開ける。
「―――え」
重たい扉を開けた先は、ただ椅子が一つ置かれているだけの部屋だった。
俺としてはもっとごちゃごちゃしているのかと思っていたのだが、何とも驚きだ。
だがしかし、俺はもう一つ驚かされたことがある。
今、部屋に唯一置かれている椅子の上には、魔王様が座っているのだが、なんとその魔王様には見覚えがあった。
魔王様は、以前ドラゴンに襲われている俺を助けてくれた、あのおじさんだった。
「――良く参った。小さきものよ」
部屋の中を、魔王様の低い声が響き渡る。
どうやら魔王様は俺が俺だということに気がついていないのか、特に気にしていない様子だ。
「……あ、はい」
思わず素で返事を返してしまう。
そこでふと、開けたままの扉が気になったので、一度閉める。
さきほど撒いた警備の魔族の方たちに気づかれないようにするためだ。
もちろんこんなことをしてもほんの少しの時間稼ぎになるかも怪しいのだが……。
「安心して良い。この部屋の周りには魔力の多い者以外は入ることができない結界をはっている。優秀な者たちではあるが、その結界を越せるまでではない」
そんな俺の行動から、俺の心配を読み取ったのか、すぐにそう教えてくれる。
しかし魔王様は前にあった時のような、優しい調子ではなく、魔王様らしい威厳のある雰囲気を周りに放っている。
「――私の配下たちの警備を掻い潜りここまでやってくるとは、敵ながらあっぱれである。だがしかし、私を警備の者たちと一緒にしてもらっては困る。もしそう思っているならば早々に立ち去るが良い。一度は見逃してやる」
「……ッ」
俺にそう告げる魔王様は、自分の手のひらに何やら黒いモノを浮かばせる。
さらに背中からは、巨大で漆黒の翼がまるで俺を威嚇しているかのように広げられている。
「……」
俺はそのとき、このマントを脱ぐか脱がないかで迷っていた。
このマントを取ればきっと、魔王様は俺に気がついて話を聞いてくれるかもしれない。
でもそれ以上に、俺のことを知っている人に『漆黒の救世主』の正体を知られたくないという気持ちが大きかった。
「――どうした小さき者よ。それほどまでに私との対峙を望むか」
そんなこんな考えているうちにも、どんどんと話は進んでいってしまう。
「……ぅぅ」
この際『漆黒の救世主』の正体がバレてしまうのも致し方ない。
「父上ッ。ご無事ですかっ!?」
「ごふばッッ!!??」
『漆黒の救世主』の正体をバラすために、自らに身につけている漆黒のマントを脱ごうとした、その瞬間、真後ろにあった扉がものすごい勢いで開けられた。
そうすればもちろん扉の前にいた俺は開けられた扉にぶつかってしまうわけで、そのあまりの勢いに俺は軽く宙に浮くとそのまま魔王様の手前あたりにまで飛ばされてしまった。
「……」
魔王様もまさかこんなことになるとは思っていなかったのか、呆気にとられたように黙り込んでいる。
「ひ、ヒール……」
回復魔法を唱えながら、開け放たれた扉の方へと視線を向ける。
「そ、そいつが敵ですか!?」
するとやはりというべきか、そこにはパルフェクト姫が立っていた。
確かに魔王様の娘であるパルフェクト姫であれば、魔王様が言っていた結界だって関係ないだろう。
まぁまさかこんな早くにやってくるとは思っていなかったのだが。
「パルフェクト、落ち着きなさい」
魔王様はやや取り乱しているパルフェクト姫を宥めようとする。
手のひらの上に浮かばせていたモノはいつのまにか消えており、翼も今となってはどこかへ行ってしまっている。
「……」
魔王様がパルフェクト姫を宥めているあいだに俺は足に力をこめて立ち上がる。
「―――あ」
しかし、俺が立ち上がった瞬間、今までの攻撃の積み重ねのせいか、なんとマントが脱げてしまった。
今現在、俺の前には魔王様、後ろにはパルフェクト姫。
その状態で俺の黒マントが脱げてしまえばどうなってしまうかなど分かりきっている。
「ん、君はたしか……」
「お、お主は……っ!!」
やはり、魔王様には覚えられていたようで、意外そうなものを見るような目でこちらを見ている。
そしてパルフェクト姫様のほうは、まるで嫌なものでも見たかのように、顔をしかめている。
「ん、パルフェクトも知っているのか?」
「ち、父上こそご存知なのですか……っ?」
しかしそこでどちらともに面識があることを互いに驚いている。
魔王様は、俺に対して何かあったのか、というような視線を向けてくる。
「……」
そこで、俺のことを見るパルフェクト姫の視線が厳しいものだということに気付き、僅かに目を細める。
「……何があったのか、聞こうか」
たったそれだけで魔王様は何かを察したのか、俺たち二人にそう聞いてきた。
パルフェクト姫は、肩をビクッと揺らし、顔を下にむける。
「……はい」
再びその場を支配し始めた、魔王様の雰囲気に、俺はただ頷くことしかできない。
「実は―――」
そして俺は、ここにやってくるまでに至った、いきさつを話し始めた。