俺の勝手な思い込み
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俺とパルフェクト姫様に共通してつながっていること、それはリリィだ。
「お主、リリィを匿っておったな?」
案の定というべきか、パルフェクト姫様はやはりそのことを俺に聞いてきた。
冷や汗が頬を伝っているのが分かる。
「……リリィは今どこに?」
おそらく既にリリィは魔族側にいるだろうが、聞かずにはいられない。
「もちろんこちらで身柄を預からせてもらっておる」
「……」
パルフェクト姫様から、半ば想定していた通りの応えが返ってきて、俺は何も言えなくなってしまう。
「お主は妾たちがリリィを探していたのをしっておったな……?」
パルフェクト姫様が俺を睨みつけながら、そう聞いてくる。
「……」
リリィが探されているのはもちろん知っていたし、それでもリリィと一緒にいたいがために、俺は必死になってリリィが見つからないようにしていた。
だから、パルフェクト姫様の言ったことは間違っていないどころか、その通りだ。
図星をつかれた俺に残されたことと言えば、ただ、押し黙ることだけだった。
「それに、お主は色々とリリィにあのダサいコートまで着せていたらしいの」
「……」
いや、それは今言うことなのか?とも思ったけど、口を挟める雰囲気でもなく、俺はただ黙り続けている。
「他にも――」
それからしばらく、パルフェクト様から色々なことを言われた。
その間も俺は一度も口を開いていない。
「――まぁこんなものかの」
「……」
やっと解放されると思い、表には出さないが、内ではホッとしていた。
「して、お主はアウラやトルエの主、と聞いたが、本当か?」
終わったと思っていたら、パルフェクト姫様が唐突に俺にそう聞いてくる。
「は、はい。そうですけど……」
すると、俺の応えを聞いたパルフェクト姫様が明らかに落胆したような顔になった。
「……はぁ、どうしてあのような優美なものたちがお主のようなものに仕えんといけないのであろうか」
「す、すみません……」
俺はため息をつくパルフェクト姫様に、どうしていいか分からずひとまず謝る。
そこで、俺はどうして今回リリィのことがバレたのかが気になった。
「因みに、リリィのことを教えてくれたのは、アウラたちではないぞ」
「……え……?」
俺はパルフェクト姫様の意外な一言に思わず驚く。
てっきりアウラが我慢できずに言ってしまったのかと思っていたのだが、それじゃあ一体誰がバラしたのだろうか。
「リリィのことを教えてくれたのは――
――リリィ自身じゃ」
「――は?」
リリィ自身が、リリィのことをバラしたとは、どういうことだ……?
「リリィ自身がここに仕えているメイドに、自分の正体を明かしたのじゃ」
「な、なんでそんなこと……」
俺はただ、リリィのためだと思っていたのに……。
「そんなこと妾には分からんが、おおかたリリィの気持ちでも聞いていなかったんじゃないのではないか?」
パルフェクト姫様が俺を嘲るように、そう言ってくる。
「リリィの、気持ち……?」
一体何を言っているんだ。
リリィの気持ちなんてとっくの昔に聞いて―――――――ない……?
「ぇ、お、俺……」
俺がリリィ自身の気持ちを聞いたことなんて、あったか……?
俺としては、ただリリィと一緒に過ごしたい。
もちろんリリィも、俺と同じ気持ちでいてくれているはずだと、思っていた。
けど、一体誰が、いつ、そんなことをいったんだ……?
全部、全部俺の勝手な思い込みだったんじゃないのか……?
いや、リリィ自身が自分の意思で魔族側に帰っていった、ということは、もうそういうことなのか……。
「……」
俺は、ようやくそのことに気付き、ただ呆然とする。
「はっ、どうやら図星だったようじゃのう」
「……」
パルフェクト姫様は、俺の沈黙から、自分の言ったことがその通りだとわかったらしく、再び俺を嘲り始めた。
しかし、実際その通りであって、俺は言い訳をする気にもなれず、ただ自分の足元を見ていただけだった。
「はぁ、お主のような奴は父上にあう価値もないの」
ずっと黙っている俺に飽きたのか、パルフェクト姫様は呆れたような声でため息をつく。
「お主が曲がりなりにも正式な使者として来ておらんければ、アウラたちを返す必要もなかっただろうにのぅ……」
パルフェクト姫様が心底残念そうにいうのを見計らってか、ちょうどその時扉が開かれたかと思うと、メイドさんが部屋に置いてあった、俺の荷物を持って部屋の中へと入ってきた。
「これでお主の荷物全てじゃ。今すぐにでもこの城から出て行け。父上には私から謁見は中止になったと伝えておく。最後にアウラたちには既に城の外でお主を待つように伝えておる」
早口でそうまくし立てると、パルフェクト姫様はメイドさんを連れて部屋から出て行ってしまった。
部屋の中を静寂が支配する。
「……くそ……っ……」
自分の情けなさに、その頑丈な床をなぐりつける。
痛みなんてないはずなのに、どこか殴った場所がヒリヒリとしている気がして、俺は思わず目の奥あたりが熱くなった――。