よく考えてみろ。
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「え、リリィ……?ど、どこにいるんだ……?」
俺は慌ててベッドから起き上がり、部屋中を探し回った。
ベッドの下に始まり、机の下、カーテンの裏、本当に部屋のあらゆるところを探し尽くした。
それでも、リリィは見つからなかった。
「ど、どうしよう……」
もしかしたら、少しだけ部屋の外に行っただけなのかもしれない。
実際リリィにとっては自分の家な訳だし……。
もしかしたら今にでも扉の向こうから足音が聞こえてくるかもしれない。
『コトンコトン』
そんな期待をしていると、偶然にも本当に扉の向こうから足音が聞こえてきた。
俺は、その相手がきっとリリィだろうと思い、ほっと安心する。
そして、帰ってきたら少しは注意をするようにいった方が、いいかもしれない。
『コトンコトン、コトン……』
足音が、恐らく扉の前でとまった。
『コンコン』
そして、扉の向こうにいる相手は、扉を二回ほど軽く叩いてきた。
「……?」
そこで少し疑問に思った。
普通に考えて、リリィがこの部屋の扉を叩く必要があるだろうか。
どう考えてもそんな必要はない。
では、今扉を叩いたのは、誰なのか。
『ガチャリ』
まるで、その答えを俺に示すように、その扉が開かれた。
そして、扉をあけて、部屋に入ってきたのは――
――メイドさんだった。
「おはようございます」
相変わらずの無表情で、俺に挨拶を告げてくる。
「あ、おはようございます」
リリィじゃなかったことに少しがっかりしつつも、俺は挨拶を返す。
それにしても、何か用事だろうか。
けどまだ朝食には早い気がするし、何よりメイドさんは何も持ってきていない。
「アネスト様、本日の夕方に魔王様に謁見されるご予定でしたが、その前に魔王様の娘様、パルフェクト姫様にお会いになっていただきます」
「……はぁ」
いやまぁ別にそれはいいのだが、急にどうしたんだろうか。
「では、部屋の外で待っていますので、準備ができたら一声お掛けください」
メイドさんはそう言うと、一度部屋を出て行った。
ガチャリ、と閉められた扉の音が嫌に部屋の中に響く。
「……リリィはどうしよう」
俺が魔族の姫様と会っているときに、帰ってきて俺がいないことに慌てたりしないだろうか。
他にもあれこれと心配事があるが、それより今は早く服を着替えないといけない。
部屋の外でメイドさんが待っているので、あまりに時間をかけすぎると迷惑になってしまう。
都から持ってきていた使者としての正装に慌てて着替える。
「……よしっ、と。あのー、準備できましたー」
きちんと鏡の前でおかしいところがないかを確認し、俺は部屋の外にいるはずのメイドさんに声をかける。
「分かりました、では部屋を用意してありますので向かいましょうか」
メイドさんが扉を開けながら、俺にそう告げ、自分は俺を先導するために前を歩き始めた。
「……」
互いに無言のまま、俺はただメイドさんの後ろをついていく。
そして少し、その状態が続いた後、メイドさんはすこし大きな扉の前でその脚を止めた。
「ここです」
メイドさんが淡々とその扉を示しながら、俺にその部屋に入るように告げる。
「えっと、失礼します?」
やはり、こういうことにあまり慣れていないので、自分でもこれからどうしたらいいのか分からない。
ひとまず、メイドさんに言われたとおりに、ゆっくりと扉をあけて、部屋の中へと入る。
「うむ、その椅子にでも座ってくれればいいのじゃ」
「あ、はい」
部屋の中には、昨日アウラたちを探している時に見た鼻血を流していた女の人がいた。
美人なんだけど、鼻血を流していた衝撃が強すぎて、つい女の人の鼻を見つめてしまいそうになるのを、ぐっとこらえる。
俺は、女の人に与えられた椅子に座ると、女の人と向かい合った。
「まず、知っているかもしれんが妾の名前はパルフェクトじゃ」
「あ、俺、いや、自分はアネストって言います。よろしく、お願いします」
噛みそうになるのを、どうにか言い切れた俺は、ほっと胸をなでおろした。
「えっと、それで自分ってどうしてここに……?」
元々俺は、パルフェクト姫様に会う予定はなく、最初から魔王様に会う予定だったのだ。
呼ばれたからには何か用件があるはずだ。
「うむ、お主に一つ聞きたいことがあってな」
「聞きたいこと、ですか……?」
俺は今までパルフェクト姫様と会うような機会はなかったはずだし、聞きたいこととは、一体なんのことだろう。
別にパルフェクト姫様との関係も何のつながりもない。
「お主――」
そんなことを考えていると、パルフェクト姫様が口を開いた。
そこで俺はひとつのことに気がついた。
別にパルフェクト姫様との関係も何もない、だって――?
馬鹿言うな。
よく考えてみろ。
俺とパルフェクト姫様の間につながることが一つだけ、たった一つだけあるじゃないか――。
「リリィを匿っておったな?」
そうそれは、紛れもなくリリィのことだ――――。