扉をそっと閉めた。
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扉を開けたら、そこにはアウラとトルエ、そしてあと一人の女の人が、下着姿で部屋の中にいた。
「……っ!?」
しかも、俺が呆然とその光景を眺めていると、唐突にこちらを振り向いてきたアウラと目が合ってしまった。
俺は慌てて部屋の外に出て、音がたたないように扉をそっと閉めた。
「……」
今のは一体なんだったのだろうか……。
アウラたちの声がすると思って扉を開けてみれば、中にいたのは下着姿の三人。
そのうちひとりはどういう訳か鼻血も流しているようだった。
「はぁ……」
その事実に、張り詰めていた緊張が一気に解れ、俺は思わずため息をこぼさずには居られなかった。
しかし、下着姿を見られたアウラが、悲鳴をあげたりしなくて助かった。
普段だったらきっと俺が弁解する間もなく悲鳴をあげるだろうし、もしかしたらアウラはアウラで何かを察してくれたのかもしれない。
『ガチャ』
「っ」
そんな風に、俺がいろいろ考えていると部屋の扉がいきなり開いたので思わず身構えてしまう。
「……ってアウラか」
部屋の中から出てきたのは、先ほど俺に気付いたアウラだった。
「……どうしてネストがここに?」
部屋の扉を閉めたアウラが、小声で俺に聞いてくる。
「えっと、人間の国からの使者ってことで、アウラたちを迎えに来たんだけど……」
「……あ、そういうことね。てっきり一人で来ちゃったのかと思ったじゃない」
アウラは得心がいったという顔で頷く。
「それにしても、どうしてこんなところに一人でいるの?」
アウラがいうこんなところとは、今いる廊下のことだろう。
「あー、実はな……」
俺は、ここに来るまでに至った理由を簡単にアウラに教えてやる。
「へぇ、そういうことだったのね」
「あぁ、それで探す前に一回魔王様に謁見しないといけないみたいなんだけど、その前にアウラたちを探しにきたんだ」
魔王様を待っている間に一度でもアウラたちの安全を自分の目で確認しておきたかった。
「えっと、それでなんだけど……」
アウラたちにはもう一つ伝えなければならないことがある。
「実は、リリィのことなんだけど……」
「……魔族、なんでしょ?」
「え、知ってたのか」
そう、アウラが言うとおり、言わなければいけないもう一つのこととは、リリィのことである。
リリィは魔族で、そしてお姫様らしいのだ。
「……言うの?」
アウラが俺を真剣な顔で見つめてくる。
「魔王様に言うつもりは、悪いけどあまりない」
単なる俺のワガママだけど、俺はリリィと一緒にいたい。
「今、私とトルエと一緒にいる人は、リリィの本当のお姉さんで妹のリリィを探してるわ。私たちが連れて行かれたのは、リリィの匂いで私たちと勘違いしたからみたい」
「……黙っておくのは、難しいか?」
さっき、少しだけ部屋の中を覗いたとき、三人は仲良さそうにしていたのを覚えている。
もしかしたら、そんな仲の良い相手に隠し事、しかも妹のことを黙っておくのは、辛いものがあるのかもしれない。
「……私もまだリリィと一緒にいたい。悪いことしてるってのは、わかってるんだけど……」
アウラは相手に対する罪悪感からか、下を向いているが、それでもやはり俺と同じでリリィと一緒にいたいようだ。
「じゃあ、悪いけどそれで頼む……」
俺はそれだけを言い残すと、誰かに見つかる前に早々に自分の部屋へと向かった。
「……はぁ」
「どーしたのネストー?」
部屋へ戻るやいなや、ベッドに倒れこんだ俺にコートを着たリリィが駆け寄ってくる。
「い、いや、何でもない……」
俺は早々のうちに、今感じている罪悪感を少しでも忘れるように、ベッドに潜り込んだ。
すぐ近くでリリィが奏で始めた鼻歌が耳に入る。
しかし、いくら布団に頭をおしあてても、ついさっき見たアウラの辛そうな顔だけは、頭の中から離れることはなかった――。