知らない天井
ブクマ評価感謝m(_ _)m
すこし視点が変わります
アウラ視点はあと一話で終わらせられると思います。
「はぁ……」
私は今、エスイックに招待されたパーティにやってきていた。
私たちが会場についたときには、既にそこにはたくさんの招待客がやってきており、会場に入った瞬間、私は何人もの男性に囲まれてしまう。
そのせいでネストとも引き離されてしまった。
「俺は――」
いろんな方向から、それぞれ自己紹介されるが、正直全く頭に入ってこない。
私はそんな中、ひとりイライラが募っていた。
まず、もともと私はイラついていのだ。
どうしてかという、それはネストのせい。
私とリリィとトルエがそれぞれドレスに着替えたとき、一番最初に私にネストは「似合っている」と言ってくれた。
そう言われたときは、誰にも言わなかったけど、褒められたことが嬉しくて、頬が緩むのをこらえるのに必死だった。
私の次にネストが褒めたのはリリィで、なんと私には言わなかったくせに、リリィには「可愛い」と言ったのだ!
しかも抱きつきながら、というのも頂けない。
最終的に、ネストに「可愛い」と言われなかったのは、私だけだった。
そんな訳で私は今、絶賛イラつき中なのだ。
しかし、そんなにいつまでもイラついているワケにはいかない。
もうすぐ皆のお楽しみの踊りの時間があるのだ。
男性と女性が二人一組になって、抱き合いながら踊るソレは、意中の相手にアピールできる絶好の機会。
私もさっきは、何人もの人に誘われたが、丁重にお断りさせてもらった。
私が踊るのは、もう決まっているからだ。
私が踊るのはそう、きっとそんな踊りの暗黙の了解さえも知らないような、私のご主人様―――
―――ネスト、ただひとり。
「……っていないじゃない!!」
そう思って探していた矢先、既にそこにはネストは居なかった。
「もう、ネストのバカ……」
私のそのつぶやきに返事してくれるのは、誰もいない。
それからは、特に誰かと踊る気にもなれず、ただひとりで、会場の隅っこのほうで、軽く食事をとっていた。
「あら、トルエじゃない」
「あ、アウラさん、こんなとこにいたんですね」
ふとその途中でトルエを見つけてからは、二人で一緒に行動した。
なんでもトルエの方も、いろいろと大変だったらしい。
ほんと、ネストも含めて男ってやつは、なんでこうアレなのかしら……。
私は人知れず、ため息を零した。
『ネェネェ、ココカラリリィサマノニオイガスルヨ?』
『ホントダ』
その二つの声が聞こえてきたのは、いつだっただろうか。
確か、踊りの時間がそろそろ佳境に近づいてきたころだったと思う。
「……?」
どこか拙い喋り方の声が、聞こえてきた。
辺りを見回すと、トルエも同じことが聞こえたのか、私と目が合うと「今のって……?」と首をかしげている。
……本当になんだったのだろうか。
『アハハ、ボクタチノスガタガミエナイナンテ、ヤッパリボクタチハカクレルノガウマインダ』
『アハハ、ソウダネ。アト、タブンコノフタリカラリリィサマノニオイガシテルヨ?』
『ホントダネ、ドウシヨウカ』
『ドッチガホンモノカナ?』
その声は次第に大きくなって、いつの間にか、かなり近づいてきているような気がした。
でも、何を言っているのかは、話し方が変だからか良く分からない。
『ンーワカンナイヤ、モウイッソノコトフタリトモマトメテツレテイコウヨ』
『ダイジョウブカナ?アトデオコラレタリシナイカナ?』
『イイヨイイヨ、パルフェクトサマダッテヨロコンデクレルヨ』
『ソウダネ、ソウシヨウ』
最後に聞こえたその声は、私たちのすぐ近くで聞こえた。
トルエは怖いとは言わないけど、私にくっついてきている。
正直私だって怖いが、ネストがいない今、トルエをしっかり守ってあげなければいけない。
「……」
しかし、そんな私の思いとは裏腹に、それからは一向に声は聞こえなくなった。
「えっと、もう、大丈夫かな……?」
トルエが、私の服を握り締めながらそう呟いてくる。
「そうね、多分、大丈夫……ッッ!!??」
大丈夫、と言った直後、目の前に黒の塊のようなものが現れた。
「ッ!?」
そして私たちは、抵抗することもできずに、ただその中へと引きずり込まれた。
「……ん……?」
どれくらいの時間が経ったのだろうか。
何かに引きずりこまれた私の目が覚めると、そこには知らない天井が広がっていた―――。