やはり子供でも魔族。
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「じゃああたしはここに泊まっているから、何かあったら来な」
「分かりました。じゃあ、行ってきます」
魔族の国へと来てから、一晩を過ごし、俺たちは今宿屋の一階にある食堂にいた。
御者を務めてくれていたおばちゃんが、俺たちを見送ってくれているのだ。
「またねーっ!」
そして、リリィもあいさつをすませたので、俺はリリィと二人、城へ向けて出発した。
「はぁ、なんかこんな感じで前も城を見上げた気がするなぁ……」
「んー?」
宿屋を出るあたりから、どうにも都にいた時と同じ行動をしているような感じがする。
前に都で城を見たときも、その大きさに驚いたものだ。
「これって一応、リリィが住んでたところなんだよな……?」
「そだよーっ?」
あ、因みに今城の前にいるのだが、リリィには顔を隠せるような子供用のコートを着てもらっている。
城にいるときにリリィのことがバレたら、元も子もないのだ。
「えっと、じゃあ入ろうか」
俺は、少し先に見える門番を見ながら、リリィにそう言った。
「あの、使者として来たんですけど……」
俺は、門番にそう言いながら、書類を見せる。
「あ、使者の方ですか。伺っておりますのでどうぞ」
特に何かきかれたりすることもなく、俺たちは城へと入ることに成功した。
中に入ると、都の時と同じくメイドさんたちがいる。
「ようこそおいでくださいました、……その」
「あ、すみません。アネストです。よろしくお願いします」
今のメイドさんの少しの間は恐らく俺の名前がわからなかったからだろうと思い、俺は慌てて自己紹介をする。
「アネスト様ですね、こちらこそよろしくお願い致します」
そのメイドさんを皮切りに、少し後ろに控えていたメイドさんたちも、お願い致します、と俺に言ってきた。
「それで、大変恐縮なのですが、ただ今、魔王様がお出かけになられていまして、恐らく帰ってこられるのが、今日の夜か、明日の朝になってしまうと思われます。ですので申し訳ありませんがアネスト様方には、城の一室を用意させていただきましたので、そちらでお休みになってもらうことになります」
「わ、分かりました」
俺が会いたいのは、アウラたちを間違えて連れて行ってしまった魔族の姫、確かパルフェ何とか、に会いたいのだけれど、ここは大人しく部屋に行っておこう。
もしかしたら、その間に隙を見つけて、城を回れるかもしれないし……。
そして、俺はメイドさんに連れられて、顔を隠したままのリリィと手をつなぎながら部屋に向かった。
「こちらになります」
そういってメイドさんに連れてこられたのは、さっきまでいたところから、少しだけ歩いた所にある、一室だった。
そこは、俺とリリィの二人で休むには少しばかり大きいような、そんな部屋だった。
「では、何か御用がありましたらお呼びください」
メイドさんはそう言い残すと、俺がお礼をする間もなく、仕事に戻っていった。
「ねぇー、これもうぬいでいいー?」
メイドさんが部屋から出て行ってから少しして、リリィが顔を隠すために着ていたコートを脱いでいいか、と聞いてきた。
「んー、どうだろう」
もしいきなりメイドさんが部屋にやって来たときに困るかもしれない。
「これ、あついーっ!」
だが、そんな俺の心配をよそに、リリィは着ていたコートを脱ぐと、ベッドの上に投げ出してしまった。
「はぁ、仕方ない、か……」
まぁ俺が足音なんかを聞いておけば、大丈夫かな。
俺は、部屋の中で楽しそうにはしゃいでいるリリィを見ながら、耳をすませた。
「度々申し訳ありません。実は魔王様が帰られるのが、二日後となってしまいました。ですので明日も一日お暇かとは思いますが、ご容赦ください」
その日の夕食を持ってきてくれたメイドさんが、俺にそう教えてくれた。
因みにリリィにはきちんとコートを着せているから安心だ。
「そうですか、分かりました」
俺としては正直そっちの方が好都合だ。
その分、一日中城の中を探せるからな。時間に余裕ができた。
本当に申し訳ありません、と再び頭を下げてくるメイドさんには悪いけど、俺は一人隠れてほくそ笑んだ。
「ネストー、もうねちゃうのぉーっ!?」
食事をとってから、俺はそうそうにベッドに潜り込んだ。
するとそれをすかさず、リリィが聞いてきた。
「あ、あぁ。ちょっと早いけど寝ようかなぁ、なんて……」
明日に備えて、少しでも万全の体制でのぞみたい。
そのために今日は早く寝ようとしていたのだが……
「だめだよー!!」
そんなことをリリィが許してくれるわけにもなく、無理やり布団を奪われてしまった。
やはり子供でも魔族。
腕相撲で俺がかなわなかったその力に俺が耐えられるわけもなかった。
「ネストはリリィといっしょにねないとダメなのー!」
「そんなこと言われてもな……」
俺はもう寝たいし……。
リリィに合わせて、寝る時間を遅くしてしまったら、明日万が一ってこともある。
「じ、じゃあ、リリィも一緒に俺のベッドで寝るか?」
起死回生の一手を狙って、俺がそう言う。
「ホントーっ!?」
すると、凄まじい勢いでリリィが食いついてきた。
「さいきん、アウラおねえちゃんがネストといっしょにねたらダメだっていってたからがまんしてたのーっ!」
「へ、へぇ、そうなのか……」
きっと俺が変態と噂されたあたりからだろう。
けど今回はそれが逆に功をそうしてくれたので、運が良かった。
「じ、じゃあ、寝ようか」
「うんっ!」
元気にうなずくリリィの腰に手をやり、俺は二人でベッドに横になった――。