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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第二章  俺の本気の力がどう見てもリリィの劣化版な件について。
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二人で踊るか……?

ブクマ評価感謝しておりますm(_ _)m


 「……リリィ?」


 暗闇の中から出てきたのは、いなくなっていたリリィ。


 「あれ、どうしてここに?」


 今は普通なら、踊っている時間だろうし、リリィが踊れなかったとしても、ここに来る理由がないと思うのだが……。


 「んー?ネストとおどりたいなーっておもってたら、どっかにいくのがみえてからついてきたんだよー」


 「あ、そうだったのか。なんかごめんな……」


 「うん、べつにいいよー?」


 「えっと、二人で踊るか……?」


 リリィは別にいい、と言っているが、もしかしたらリリィは踊るのを楽しみにしていたのかもしれない。


 「え、いいのーっ!?」


 案の定と言うべきか、すごい勢いで俺の提案に飛びついてきた。


 「あぁ、いいよ」


 ここなら人もいないし、別に踊るのが下手だと言っても、恥ずかしくない。


 俺は、リリィと踊るために、ひんやりとして気持ちいい芝生から身体をおこし、リリィの下へと向かった。


 「えっと、こうするのかな……?」


 今までろくに踊りなどしたことがなければ、先ほど後ろ目でちらりと見た程度の俺は、

リリィと身体が密着するかしないかのところで、リリィの腰に手をやった。


 「ふふーんふーん」


 それからは、リリィの鼻歌にあわせて、脚を動かす。


 正直これであっているのかは分からないが、リリィも楽しそうにしているし、やってみて分かったのだが、これが意外にも楽しかったりするのだから不思議だ。




 空は暗闇に支配され、足元は綺麗に切り揃えられた芝生が生い茂っている。


 廊下から伝わってきているのか、心地いい風が頬をなでる。


 「ふーんふぅーんふーん」


 相変わらず聞こえるのはリリィの、その刻みのいい鼻声だけ。


 もしそれ以外に音が聞こえるとするならば、時折、俺が間違えたときにあげてしまう小さな声。


 俺とリリィは、誰もいない、音もない、灯りもない、そんな中で、二人楽しく踊り続けた――。





 「たのしかったーっ!!」


 しばらくして、ようやく踊り終わった俺は、再び芝生の上へと倒れ込み、空を見上げた。


 因みにリリィはというと、俺の上でくつろいでいる。可愛い。


 「……パーティー、楽しかったな」


 「うんっ。またきたいーっ」


 俺の言葉に、空を見上げながら、リリィがそう応える。


 『……あの娘は、魔族(、、)、ではないか?』


 そのとき、ふと、エスイックのそんな声が、頭の中で聞こえた気がした。


 そしてもし、本当にリリィが魔族だったら――


 ――魔族の国へと連れ帰られてしまう。


 「……」


 もう、思い切って聞いてみた方が早くていいかもしれない。


 少しの沈黙のあと、俺はついにそう決意した。


 「なぁ、リリィって――」


 できれば、違うといってほしい。


 そして、またこうやって皆で何の心配もなく楽しみたい。


 「――魔族なのか?」


 俺はリリィを自分の上にのっけ、頭を撫でながら聞いた。


 「ん?リリィは――」


 そしてついにリリィが俺の問いに応えようとした瞬間――


 『パリィィッッン』


 ――何かが割れたような、大きな音が、俺たちの耳に入った。


 「っ!?」


 今のは恐らくパーティー会場の方から聞こえた気がする。


 リリィは、今の音に驚いてしまったらしく、俺に抱きついてきた。


 『もしかしたら、パーティーの最中に、魔族側から何らかの接触があるかもしれんから、気をつけておいてくれ』


 そういえば、エスイックはこうも言っていた。


 「ッ!!」


 俺は咄嗟にリリィを抱きかかえ、音のしたパーティー会場へと走った。




 「ヒールッ!」


 回復魔法の名前を言い換えるのも忘れて、俺はひたすらに走り続け、パーティー会場へとたどり着く。


 パーティー会場の床には、恐らく窓の破片らしきものが散乱していた。


 そこにいる人たちは皆、その割れた窓を見つめている。


 「……っ……」


 俺は、あたりを見渡しながら、その人たちの間を走り抜ける。


 「……おいおい、冗談、だろ……?」


 そして、一つだけ。俺は、一つだけわかったことがあった。





 アウラとトルエが、いない――――。


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