二人で踊るか……?
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「……リリィ?」
暗闇の中から出てきたのは、いなくなっていたリリィ。
「あれ、どうしてここに?」
今は普通なら、踊っている時間だろうし、リリィが踊れなかったとしても、ここに来る理由がないと思うのだが……。
「んー?ネストとおどりたいなーっておもってたら、どっかにいくのがみえてからついてきたんだよー」
「あ、そうだったのか。なんかごめんな……」
「うん、べつにいいよー?」
「えっと、二人で踊るか……?」
リリィは別にいい、と言っているが、もしかしたらリリィは踊るのを楽しみにしていたのかもしれない。
「え、いいのーっ!?」
案の定と言うべきか、すごい勢いで俺の提案に飛びついてきた。
「あぁ、いいよ」
ここなら人もいないし、別に踊るのが下手だと言っても、恥ずかしくない。
俺は、リリィと踊るために、ひんやりとして気持ちいい芝生から身体をおこし、リリィの下へと向かった。
「えっと、こうするのかな……?」
今までろくに踊りなどしたことがなければ、先ほど後ろ目でちらりと見た程度の俺は、
リリィと身体が密着するかしないかのところで、リリィの腰に手をやった。
「ふふーんふーん」
それからは、リリィの鼻歌にあわせて、脚を動かす。
正直これであっているのかは分からないが、リリィも楽しそうにしているし、やってみて分かったのだが、これが意外にも楽しかったりするのだから不思議だ。
空は暗闇に支配され、足元は綺麗に切り揃えられた芝生が生い茂っている。
廊下から伝わってきているのか、心地いい風が頬をなでる。
「ふーんふぅーんふーん」
相変わらず聞こえるのはリリィの、その刻みのいい鼻声だけ。
もしそれ以外に音が聞こえるとするならば、時折、俺が間違えたときにあげてしまう小さな声。
俺とリリィは、誰もいない、音もない、灯りもない、そんな中で、二人楽しく踊り続けた――。
「たのしかったーっ!!」
しばらくして、ようやく踊り終わった俺は、再び芝生の上へと倒れ込み、空を見上げた。
因みにリリィはというと、俺の上でくつろいでいる。可愛い。
「……パーティー、楽しかったな」
「うんっ。またきたいーっ」
俺の言葉に、空を見上げながら、リリィがそう応える。
『……あの娘は、魔族、ではないか?』
そのとき、ふと、エスイックのそんな声が、頭の中で聞こえた気がした。
そしてもし、本当にリリィが魔族だったら――
――魔族の国へと連れ帰られてしまう。
「……」
もう、思い切って聞いてみた方が早くていいかもしれない。
少しの沈黙のあと、俺はついにそう決意した。
「なぁ、リリィって――」
できれば、違うといってほしい。
そして、またこうやって皆で何の心配もなく楽しみたい。
「――魔族なのか?」
俺はリリィを自分の上にのっけ、頭を撫でながら聞いた。
「ん?リリィは――」
そしてついにリリィが俺の問いに応えようとした瞬間――
『パリィィッッン』
――何かが割れたような、大きな音が、俺たちの耳に入った。
「っ!?」
今のは恐らくパーティー会場の方から聞こえた気がする。
リリィは、今の音に驚いてしまったらしく、俺に抱きついてきた。
『もしかしたら、パーティーの最中に、魔族側から何らかの接触があるかもしれんから、気をつけておいてくれ』
そういえば、エスイックはこうも言っていた。
「ッ!!」
俺は咄嗟にリリィを抱きかかえ、音のしたパーティー会場へと走った。
「ヒールッ!」
回復魔法の名前を言い換えるのも忘れて、俺はひたすらに走り続け、パーティー会場へとたどり着く。
パーティー会場の床には、恐らく窓の破片らしきものが散乱していた。
そこにいる人たちは皆、その割れた窓を見つめている。
「……っ……」
俺は、あたりを見渡しながら、その人たちの間を走り抜ける。
「……おいおい、冗談、だろ……?」
そして、一つだけ。俺は、一つだけわかったことがあった。
アウラとトルエが、いない――――。