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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第二章  俺の本気の力がどう見てもリリィの劣化版な件について。
68/181

俺はどんどん増えていく

ブクマ評価感謝ですm(_ _)m

あと、今回すこし短いです。

明日のと一緒に見たほうがよろしいかもしれません。

本当すみませんm(_ _)m

 「は、初めましてっ!私シルシエウと言います!お、お見知りおきくださいっ!」


 「わたくしはウイトエウと申します!ぜ、ぜひ今度お食事でもっ!」


 「……は、はぁ」


 メイドさんの治療を終えて、リリィと二人、隅っこの方へと戻った俺たちだったが、どういうわけか今、貴族のご令嬢たちに囲まれていた。


 さっきまでは、見向きもされなかったのに、いきなり手を裏返したかのような反応に、正直戸惑っている。


 「ネストぉー。あついー」


 未だに俺にしがみついているリリィは、その巻き添えをくらって、離れるに離れられなくなっていた。


 「本当、いきなりどうしたんだ……?」


 俺はどんどん増えていくご令嬢たちを見回しながら、人知れず、そう呟いた。






 「はぁ……っ、疲れたぁ……」


 それからもしばらく、ご令嬢たちにもみくちゃにされていたが、ようやく俺は解放された。


 「良かったわね、可愛い子たちから言い寄られて」


 「あれって、言い寄られてた、のか……?」


 俺は、後ろから声をかけてきた、アウラを振り返りながら、そう零す。


 振り返ってみて分かったのだが、アウラはなにか気に食わないのか、不機嫌そうな顔をしていた。


 「皆の前で回復魔法なんて使ったら、それだけで回復魔法を覚えられるだけの資金を持っている、って思われるのよ。そしてそんな身でも、メイドを治療したから、人柄も良いとかって思われたんじゃないかしら」


 「はぁ、そういうことだったのか……」


 あれくらいの傷の治療だったら、別に異常な回復魔法を持ってるとも思われないから、大丈夫だと油断していたけど、そんな落とし穴があったとは……。


 「……これからは気をつけなさいよね」


 やはりどこか不機嫌さを残すそんな口調で、俺にそう言い残すと、アウラは再びさっきまでいたところへと帰っていった。


 「……?」


 アウラが不機嫌な理由がよく分からずに、その場で首をかしげる。


 「なにかあったのかな、っていない……」


 こういう時は、リリィに聞いてみようと思ったのだが、先程の囲まれているのがそんなに嫌だったのか、いつの間にかいなくなっていた。





 「では、そろそろ踊りましょうか」


 いつの間に来ていたのか、聖女のルナが、そのよく通る声でそう告げた。


 「……少し、外にでも行って時間潰すか」


 俺は咄嗟に会場から抜け出した。


 どうしてかと聞かれれば、俺が踊りの経験がないからだ。


 恥をかくことがわかっているものに、自分から行くのはさすがに無理だ。


 城の中を歩き回り、その内に中庭のようなところへとたどり着いた。


 「……こんなところあったのか」


 以前に城に忍び込んだとき、色々と走り回ったのだが、ここは初めて来る場所だ。


 足元に生えている芝生は、どこも綺麗に切り揃えられており、とても整っていた。


 「はぁ……」


 その芝生をつぶしてしまうようで申し訳ないが、俺はそこにそっと横になる。


 その中庭らしき場所には、天井がなく、空を仰ぎ見ることができた。


 空は暗闇に支配され、終わることなく、永遠と広がっているような感じがする。


 「……綺麗、だな……」


 今いる中庭が、人の多い都には感じられず、どこか誰もいない、世界の果てのような気がしてくる。


 芝生は心地のよいやわらかさで、これまた夜空のおかげか、ひんやりとしていて気持ちがいい。





 『ジャリ……』


 だから、そんな小さな足音でも、容易に聞こえることができた。


 「……だれかいるのか?」


 もしかしたら、自分と同じでパーティーから抜け出してきたのかもしれない。


 「……」


 少しの沈黙のあと、ゆっくりと暗闇の中から影がその正体を現した。


 「……リリィ、だよー?」


 そこにいたのは、メイドさんに用意してもらったドレスを着ていて、さっき、いつの間にかいなくなっていた、リリィだった――。

 


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