ネストかっこいいーっ!!
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「そ、それじゃあ、また……」
「うむ」
エスイックとの話も終わった俺は、先ほど歩いてきた廊下を、再び戻り、メイドさんたちがいるだろう部屋まで帰って来た。
「もう、おそいわよ」
「……あれ?」
部屋まで帰ってくると、そこには別れたはずのアウラたちが、メイドさんたちと待っていた。
しかも、皆も既にそれぞれに合ったドレスに身を包んでいる。
「……これ、どうかしら」
そこで、昨日と同じようにアウラが俺に感想を求めてくる。
「あ、あぁ。えっと、似合ってるよ」
きっと、私服には出すことのできない、アウラの気品のようなモノが前面にでていて、正直見惚れてしまった。
恥ずかしいから、言わないけど……。
「ネストぉー!わたしはぁー?」
その時、俺とアウラの間に、リリィが割り込んできた。
一瞬、珍しくリリィに対し、不満そうな顔をアウラが浮かべた気がするけど、気のせい、か。
「おー、やっぱリリィは可愛いなぁー!」
何の躊躇いもなく、俺に抱きついてくるリリィに、今さっきエスイックに言われたことを思い出したが、今は、まだ聞かなくてもいいか。
「むー!」
俺がリリィの頭を撫でていると、何かを察したのか、リリィが不満そうな顔で俺を見上げてきている。
「あはは、ごめんごめん」
それからは、目の前のことに集中して、リリィの頭を撫でまくった。
リリィを褒め終わったあとは、トルエの番だ。
昨日の夜の一件もあったし、ここで失敗は許されない。
「トルエはやっぱり大人っぽいなぁ」
「……うん」
元々あまり喋らないことや、リリィとは違って、直接あまり俺に甘えてこないあたりが、トルエを年齢よりも、大人らしさを出している。
「……」
俺の言葉に頷くだけで、それ以降はやはり話そうとはしてくれない。
「えっと、こっちにおいで」
俺はそんなトルエに、手招きをして、すぐ目の前にまでやって来させると、先程のリリィと同じように、トルエの頭を撫でてあげた。
「……んっ……」
トルエがくすぐったそうに身をよじっても、俺は撫でるのをやめない。
「……大丈夫、トルエもかわいいよ」
俺は一度だけそうつぶやくと、再びトルエをなで続けた。
「あ、ありがとう……」
「どういたしまして」
しばらくして、トルエが満足そうにしたので、俺はトルエから離れた。
離れる時に、少し手元が名残おしい気がしたけど、あまり女の子の頭を撫でるのもアレかなと思い、我慢する。
「ネスト様方、そろそろ会場へと移動していただきます」
ちょうどその時、メイドさんからお声がかかる。
「あれ、でもまだちょっと早くないですか?」
もらった手紙によると、確か夜に始まる、と書いてあった気がするのだが……。
「いえ、パーティーへと参加される皆様は、挨拶などもしてまわったりするので、これくらいの時間が妥当かと」
「あ、そうなんですか」
メイドさんがそういうのなら、きっとそうなのだろう。
俺たちは、メイドさんに連れられて、パーティーの行われる会場へと脚を運んだ。
パーティ会場には、メイドさんの言うとおり、既に何人もの貴族だろう人たちが来ていた。
「なぁ、アウラ、こういうときってどうすればっ!?」
俺たちも挨拶とかをしたほうがいいのか、ということを、アウラに聞こうとしたら、いきなり俺とアウラの間に、何人もの男が割り込んできた。
「お、俺アイウイって言いますっ!」
「僕はウエイムです!よ、よろしくお願いします!」
何かと思えば、皆はアウラに自己紹介をしているようだった。
まぁ、確かにアウラは美人だから、こういう場所で囲まれてしまうのは仕方ないのかもしれない。
「じ、じゃあ、トルエに聞こうかって……」
時すでに遅し。
トルエもまた、数人の男の子に囲まれてしまっていた。
リリィは大丈夫なのかと思い、見てみると、どうやらリリィは俺にくっついて、難を逃れたらしい。
「……」
え、俺には誰も来ていないのかって?
……リ、リリィが来てるじゃないかっ!
「……えっと、端っこの方に行くか……」
「うん?」
結局、俺は首をかしげているリリィを連れて、会場の端っこの方へと行くことにした。
そんな時、どんどんと会場には食事が運ばれてきていた。
肉や野菜、さらには果物まで、本当にたくさんの種類の料理がある。
周りの人達を見るに、運ばれてきた料理は、食べてもいいらしい。
「リリィも食べる?」
「んー」
リリィの顔を見ると、あまりまだお腹は空いていないようなので、もう少し待つことにした。
『パリンッ』
ふと、皿が割れるような音が響き渡った。
「す、すみませんっ!!」
ついで聞こえてくるのが、女の人の謝罪。
何かと思い見てみれば、どうやら若いメイドさんが、料理の入った皿を落としてしまったようだ。
何度も頭を下げながら、今も割れた皿の片付けをしている。
周りの貴族の人たちは、非難の声こそあげていないが、やはりあまり良い顔はしていない。
「痛っ!」
そこで、メイドさんが皿で指を切ったらしく、少しだけ声をあげた。
「ネストー?」
リリィから声をかけられた時には、俺は急いで、そのメイドさんのところへ駆け寄っていた。
「うふふー」
俺が、自分の言いたいことを分かっていたことが嬉しいのかリリィが笑っている。
「手、出して」
「え、は、はい……」
メイドさんが恐る恐る俺に怪我してない方の手を差し出してくる。
もしかしたら、何か怒られるのかと心配しているのかもしれない。
「こっちじゃなくて、そっち」
俺は、メイドさんの反対の手を取った。別に悪いことをしようとしているわけではないので、メイドさんが恐がっているのはこの際無視していいだろう。
「ヒール」
俺は回復魔法を唱える。
すると、今まで血が流れていたメイドさんの手の怪我は、綺麗さっぱり無くなった。
「えっと、じゃあ俺はこれで」
呆けているメイドさんを残して、俺はリリィと二人、先程までいた会場の端っこの方へと、再び戻ることにした。
「ネストかっこいいーっ!!」
「ありがと」
俺は、リリィからの賛辞に、頬を緩ませながら、歩き続けた。