男が好きなわけ
すみません!
予約ミスで遅れました><
気をつけます!!
「ほら、じゃあ明日も早いんだから寝るぞ」
アウラに服の大きさの件で言われたあと、俺は次に出てきたトルエやリリィたちの対応に追われ、それもようやく一段落し今は皆でくつろいでいた。
「そうですね……」
「えーっ!?」
俺の言葉にトルエが頷くが、リリィはまだ眠りたくないようでイヤイヤと首を振っている。
「まだ眠たくないもんっ」
「そうは言ってもなぁ……」
明日も朝早いうちに城に行って、服の準備もしなければいけない。
助け舟をだしてもらうべくアウラに視線を送る。
「……はぁ、仕方ないわね」
するとベッドに腰掛けていたアウラがその腰を上げたかと思ったらどんどんとリリィに歩み寄る。
「リリィ、あまり我が儘いっちゃだめでしょ?ほら、私と一緒に寝ましょ」
普段俺にかけないような、優しい声色でリリィを抱きかかえる。
「うんっ分かった、アウラお姉ちゃんっ!」
リリィもアウラに抱かれると今まで我が儘を言っていたのが嘘のように大人しく、俺とは別のベッドに連れて行かれていった。
「……」
俺は助かったとホッとする反面、少し残念に思いながら、布団に身をくるみ目を閉じた。
「―――ん」
ふと布団の中で何かが動いた気がした。
暗闇の中、なんとか目を凝らしてその中を見てみると、どうやら誰かが俺の布団までやってきているようだ。
「リリィか……?」
以前にも似たようなことがあったし、他の二人はそんなことしないか……。
「ご主人様……」
「っ!?」
しかし俺の予想虚しく、布団の中から微かに聞こえてきたのは、トルエの声。
まさかの事態に少し大げさな反応をとってしまった。
「ど、どうした……?」
今までのトルエからは考え難い行動に、驚きながらも起きているらしいトルエに聞く。
「ぼ、僕は、ご主人様に、もっと、もっと好きになって、もらいたいです……っ」
「……」
一言ずつ区切りながら、しっかりと自分の意思を伝えてくるに俺は黙り込んでしまう。
……これはどういうことだろうか。
「えっと、それはまたどうして……?」
やはり考えてみても分からないので、素直にトルエに聞いてみる。
「……ギルドでご主人様がいないとき、冒険者のおじさんたちに聞いたんだけど……」
俺が昼飯をとっている時なんかのことだろう。
「男の人が奴隷を買うっていうのは、その、そういうことだって……」
「う、うん?」
ち、ちょっと待て?
トルエがいうそういうこと、っていうのは、もしかしなくてもそういうことってことだよな……?
「だから、奴隷にそういうことをしないってことは、男の人が好きなのか、そうじゃなかったら―――」
トルエの言葉がそこで一度止められる。
トルエは布団の中からだんだんと上に上がってきて、いつの間にかその息が俺の首にあたる程までになっている。
そして、俺の服を強く握り締め、その小さな頭を俺の胸元にのせてきた。
「―――奴隷のことが好きじゃないんだって……」
トルエの頭があたっているあたりの服がだんだんと湿ってきている。
「……大丈夫だから」
俺は、気づけばそんなことをつぶやいていた。
布団の中で、トルエのその小さな身体を抱きしめながら、俺は何度も、トルエが泣き止んでくれるまで何度も、つぶやき続けた――。
「…………すぅ……」
泣き疲れたのか、トルエはそのまま泣き止むとほぼ同時に眠りについてしまった。
俺の腕に頭をのせながら気持ちよさそうに眠るトルエの髪をなでながら、俺も明日に備えて今度こそ眠ることにした。
「よし、じゃあ行くか」
二度寝などもすることなく、きちんと起きることのできた俺たちは、準備もすませ早目に城へと向かうことにした。
昨日の一件があってか、トルエは俺に少しずつだが甘えてくるようになった気がする。
今だって、俺の腕をずっと握りしめている。
「……」
それを少し不機嫌そうに見ているのがアウラ。
因みに、今日の朝にトルエと一緒に寝ているのを怒られなかったかというと、今日の朝には怒られなかった。
どうしてかというと、それは昨日の夜のうちに一緒に寝ていることがバレたからだ。
どういう理由か、トルエが寝たあと俺も寝ていたのだが、トルエのときと同じように何やら布団の中に入ってきたかと思ったら、アウラだった。
もちろん俺は寝始めてから少ししか経っていなかったこともあり、すぐに起きたのだが、アウラは暗闇の中でも分かってしまうくらいに顔を赤く染めると、「トルエを連れて帰りにきたのよっ!!」と大きさを抑えた声で俺に言い残し、トルエを連れて自分のベッドへと帰っていった。
そういうわけで俺は怒られずにすんだわけだ。
「お世話になりましたー」
「はいよー!!」
宿屋のおばちゃんに、挨拶をすませた俺たちは、いよいよ城へ向かうことになった。
ここからだとそこまで遠くないはずなので、少しすればつくことができるだろう。
そして、俺たちはリリィを除いて、緊張を胸にしながらゆっくりと城へ向けて、歩き始めた。
因みに、俺が奴隷に手を出さないからって、男が好きなわけじゃないからなッ!?