聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について
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「……ひっ……」
聖女様は俺と目が合うと、怯えたような声をあげ次の瞬間には悲鳴をあげようとしている。
「す、すまんッ!!」
俺はその前に身体を回転させてすぐさま部屋の扉をしめた。
……というか、トルエが言ってた客というのがまさか『聖女』様だったとは思わなかった。
それにしても、もしかして都からここまで独りで来たのだろうか。
「……あ、あの、まだいらっしゃいますか……?」
あれこれと考えている内に部屋の中から小さな声で呼びかけられた。
「あ、あぁ、はい一応いますけど」
「……え、えっと、着替えが終わったので、もう入ってきても大丈夫です」
聖女から入室の許可をもらった俺は、慎重に扉を開ける。
……ただし、聖女と話すときに一つだけ気をつけなければならないことがある。
それは俺が聖女の正体を知っていることを、気づかれたらいけないということだ。
「えっと、初めまして。ルナと申します。当代の『聖女』を務めさせてもらっております」
……そんな俺の杞憂を知ってか知らずか、聖女様が意外にもすぐに自分の素性を明かしてしまった。
「あ、あれ、自分が『聖女』っていうのは、そう簡単にバラしても大丈夫なモノなんでしょうか?」
以前の慈善活動かなんかの時は、てっきり素性がバレないようにするための服装なんだと思っていたのだが……。
「…………」
するとどうしてか、聖女様が無言になり顔も青くなり始めた。
「ダ、ダメだったんでしょうか…………?」
そして、顔を青くしたまま俺に聞いてくる。
「あー、これからは確かに言わない方がいいかもしれませんね。俺は誰にも言わないので安心してもらっても大丈夫ですけど」
「あ、ありがとうございます。で、でも私だって今からそれを頼もうとしてたんですっ」
こちらとしては気を使って言っただけなのだが、どうやらこの聖女様は負けん気が強いのかもしれない。
であれば逆にそれを利用しない手はないか……
「じゃあ俺も敬語とか使わないほうがいいよな?何が原因でバレるか分からないんだし」
「っ、えぇ、それで構いません」
「あ、それじゃあなんだけど、聖女様はどうやってここまで来たんだ?見たところ護衛とかもいないよな」
聖女様からの了承をもらった俺は、早速敬語なしで気になっていたことを聞いてみた。
「……それが、私も最初は数人の護衛を連れていたんですが、道中で真っ赤なドラゴンに襲われてしまって」
あ、あれれ?真っ赤なドラゴンってもしかして俺たちが見たやつじゃないよな……?
「普通ドラゴンがそんなところに出たりするわけないはずなので、もしかしたら近くで傷を療養し終えたドラゴンに運悪く遭遇してしまったのかもしれません……」
うん、多分それ俺が治療したやつだろうなっ。
「た、大変だったんだな」
動揺を悟られないように必死に平静を装う。
「護衛の人たちが囮になって、私を先に行かせてくれたのでここまで来れたのですが、護衛の方たちが心配で……」
「そ、そうだな」
ホント、心から護衛の人たちの無事をお祈りしておきます。
「あと、そういえば、どうしてこんなところに来たんだ?」
さっきはどうやってここに来たのかを聞いたが、どうしてかという理由は聞いていなかった。
「そ、それは……」
「ギャァァァァアアアアアッッ!!」
聖女様が何かを言いかけたとき、部屋の外から国王様の叫び声が聞こえた。
すっかり忘れてしまっていたのだが、確かにトルエの料理を食べ始める頃合だろう。
「今のは……お父様っ!?」
「あっ、おい!」
俺は急に部屋から飛び出していった聖女様の追いかけ、トルエたちのもとへと向かった。
俺が聖女様に追いついたとき、部屋の床では、白目をむいて倒れている国王様に聖女様が回復魔法をかけており、トルエはというと部屋の隅っこで、膝を抱えながら座っている。
「ヒールッ!……やっぱりヒールじゃダメみたいですね……なら、デスポイズンッ、リフレッシュッ、ハイヒールッ!!」
怒涛の回復魔法三連続が功を奏したのか、国王は意識は戻っていないにしろ、その顔は幾分か楽になったような表情を浮かべていた。
「はぁ、これで安心ですね。……あら?」
治療し終えた聖女様の目にはどうやらトルエ作の料理が映ってしまったようである。
「そういえば、まだ何も食べていませんでした。お父様も頂いたようですし、私もすこし頂かせてもらいますね?」
冷静に考えれば、何が原因で国王様が倒れていたのかわかるはずだが、疲れていてその判断力も鈍っている聖女様には厳しかった。
「……うぐっ……」
俺が止めるまもなく、料理を口にした聖女様は、先ほどの国王様と同じ道をたどってしまった。
せっかくの綺麗な顔でさえ、白目をむかせてしまうトルエの料理に改めて恐怖を感じた……。
「……ぐすっ……っ……」
この状態をつくりだしたのが自分だということが分かっているトルエは今もずっと隅っこにいる。
「……トルエ、誰だって失敗はあるさ。つ、次また挑戦、す、すればいいよ」
「……ご、ご主人様ぁ」
トルエをなぐさめ終わった俺は、倒れたままの聖女様に近づき治療を行う。
「ヒール」
先ほど聖女様が使って治療できなかったトルエの料理。
しかし、俺が治療をした瞬間、辛そうに白目をむいていた聖女様の顔には、穏やかになり元の綺麗な顔が戻っていた。
「はぁ、やっぱりそうなるよな……」
やっぱり一回くらい、
聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について、
誰かどういうことか説明してくれっ!!
そしてこの状況もついでになんとかしてくれッ!!
俺は、床で寝転がっている二人を見ながら、人知れずそう呟いた―――。
ひとまずは連載当初自分が書きたかった(?)ところまでは終えることができましたっ!!
ここまで読んでくれた皆さんに本当に感謝しています!!
な、なんかあとがき書いててこのまま終わっちゃうような雰囲気の書き方だと自分でも思いますが、まだ全然続きますので!!
そこは安心してくださいっ!
一日一回更新のほうも続けていくと思いますのでよろしくお願い致します。
これからもみなさんの期待に応えられるような作品になれるように頑張りますので応援お願いします!!
ではそろそろ失礼します<(_ _*)>