認められてみろや!
ブクマ、評価ありがとうございます。
アウラとリリィの描写を少し加えました
俺は翌日ギルドに来ていた。フードをかぶっていたお陰かどうやら昨日のアレが俺だとはばれていないっぽい。
「アスハさん、おはようございます。あ、これ昨日の弁当箱です。おいしかったです。」
「ネストさんおはようございます。わざわざ弁当箱ありがとうございます。あと、治療はあちらのテーブルを用意しましたので使ってください。」
そういいながらアスハさんは俺に一つのテーブルを示す。
「基本的に値段などはネストさんが決めてくださって大丈夫です。さすがに高すぎるのアレですけど、ネストさんならその心配もないので。よろしくお願いしますね。」
とは言っても今日は治療をする気はない。どうやら俺のヒールは異常なようなので、最低限普通のヒールも使えるようになりたい。今日一日で覚えられなかったら明日もやるけど、今までと違って現物を間近で見ることができたし。多分すぐ覚えられるだろう。
『治療始めます。値段は傷の具合を見て要交渉。』
「よいしょっと。」
おれはあらかじめ作ってきた看板を机の横に立てる。周りは何事かとこちらを見ていたが看板をみるとどうやら少し喜んでいるようだった。
俺は荷物からナイフを取り出す。
「じゃあ始めますか。」
俺は今までと違い、手に少し残る程度の傷跡を付ける。ここで傷を全て直しても意味ないので傷が少し治るように集中する。
「ヒール。」
しかし、少しだけ治るようにしたかったのだがやはりというべきか、一回目は全て治ってしまい失敗に終わった。
少しでも魔力のコントロールが良くなるように、何度も何度もただ繰り返す。
「ヒール。」
そして、何回目か分からなくなってきたあたりで、ようやく成功した。
それからは失敗することなく順調に成功を重ねた。
これで怪しまれることなくヒールを使える。
そこで俺はそれ以上特になにもすることはないので、ギルドを後にした。
俺は、宿屋に帰る途中でおもしろいものを見つけた。「奴隷市場」だ。
今まではそんなこととは縁のない生活を送ってきたので少し興味がわいた。
奴隷市場にはたくさんの奴隷がいた。種族は様々。人間からエルフまでいる。もちろん奴隷は高い。特に買う気は無いのだが、見て回ってるとある一文が目に入った。
『奴隷市場からの挑戦状! 傾国の姫に認められてみろや!』
内容は、簡単に言ってしまうと「昔、お姫様だった奴隷が言うことを聞いてくれない。もし、彼女が主君と認めるならばあなたに無料で差し上げよう!ただし、失敗すればいま所持しているお金の半分を置いていってください※誰でも可」ということらしい。
別に今持っているのは少々の金だし、これならやってみてもいいか。どうせ俺明日から稼ぎ口あるし……。やるなら金がない今だな!
そして今俺は元お姫様と会っている、はずなのだが何故か彼女は後ろのベッドで横になっている女の子を介抱している。
後ろから覗ける彼女は、ショートに切り揃えられた赤い髪がなんともいいがたい魅力を放っている。
ベッドの子の方は気分が悪いのか、顔が青く、自身の髪の色である青と遜色ないほどだ。
「あのー、元お姫様?ちょっとお話がしたいなぁーなんて……。」
「喋りかけないで!私は今忙しいんだから早くどっか行って!!」
これは良い商売してるなぁ奴隷市場さん。ちょっと厳しすぎだろ…。
「えっと、その子は?」
もうお姫様は無理だなと思った俺はずっと気になっていた女の子のことについて聞いてみた。
「ッ、……この子は私の妹なの。血は繋がってないけど。」
「はぁ、そうなのか。というか、どこか具合でも悪いの?」
そうでなければお姫様がこんなに必死に看病するとも思えないし。
「この子は病気なの。それも治す手段は見つかってない病気。今は薬でどうにか生きてるけど、その薬っていうのを貰うためには私がここで貴方たちを追い返さないといけないの。だから早く帰ってくれない?」
ほぉー。今の時代そんな稼ぎ方があるのか。奴隷市場の人は頭いいな、感心感心。
しかしどうしよう……。これは回復魔法を使うべきなのだろうか。可哀想だし……、はぁ。
「ヒール。」
できるだけ使わないって決めたんだけどな、これは仕方ないか。
女の子の体が光に包まれる。光は一瞬で収まりそこにいるのは気持ちよさそうに寝ている女の子だけ。
「え、あ、あなた何したの!?」
「えっと、回復魔法だけど。多分その子治ったと思うよ。」
「回復魔法って……。」
お姫様はなにやら口を開けたまま呆然としている。
「じゃあ俺もう帰るね。その子多分もうすぐ目を覚ますと思うし。」
「え、ちょ、ちょっと待って!」
部屋から出ていこうとする俺の腕を掴む元お姫様。なんかデジャヴを感じる……。
「あ、あなた私が欲しいんじゃないの!?だから直してくれたんじゃないの!?」
あぁー確かに客観的に見たらそういうことになっちゃうのか…。でも別に俺は奴隷が欲しいわけでもないんだけど。
「えっと、別に面白そうだからやってみたってだけで、よく考えたら宿代とか嵩むし、別にいらないかなって。」
「別にいらない!?」
何故かお姫様がショックを受けているようだが、気にせず外へ向かう。
「わ、私なら夜の相手もで、できるわよ……?」
ピクッ。
まず、俺は言うまでもなく女性経験はない。童貞だ。それがこんな甘い誘惑を受けた時はHPなんて残り1くらいだ。
「で、でも、お姫様が出て行ったらその子はどうするんだ?」
HP1でなんとか反撃を試みる俺。
「実は、その子は奴隷じゃないの、ただここにいるってだけで。だ、だから今ならもう一人付いてくるわよ?」
―――――――――――――――――お父さんお母さんごめんなさい。俺のHPはもう0です。
「はぁ~、やっとあそこから出れたー!」
となりを歩くのはお姫様。そして女の子は俺の背中で寝ている。
奴隷市場の人は最初ものすごい驚いていたが、そこはプロ。すぐに顔を引き締めて契約を済ませてくれた。すこし悔しそうな顔をしていたのは見ないふりをした。
というか、勢いで奴隷貰っちゃったけど、これから実際どうしよう……。俺は一人、頭を抱えていた。