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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
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漆黒の救世主、参上ッッ!!

ブクマ評価感謝ですm(_ _)m


 「オーガ討伐を記念して、乾杯ッ!!」


 「「「カンパーッイ!!!」」」


 今、俺はギルドで行われている宴会に参加していた。


 ヴァイスとの戦闘を終え、ギルドに戻った俺は、まずアスハさんに、敵と二人きりになるような場所へ行ったことを怒られ、その後は『漆黒の救世主』ではなく『アネスト』として怪我した人の治療をしていった。


 そして、血で汚れたギルドを掃除して今に至る。


 実際は、ヴァイスのことなどまだまだ本当に解決したわけではないが、今は楽しむべきだろう。


 「おうおう野郎どもッ、飲みまくってるかぁぁあああッ!!」


 「「うおおぉおぉぉぉおぉおおおおッッ!!!」」


 さすが冒険者、こういう時の盛り上がり方が違う。


 あ、ちなみに俺はギルドの宴会に参加しているっていったけど、まだ何も食べたり飲んだりはしていない。


 ……じゃあなにをしているのかというと、それは『料理』だ。


 今回のことは冒険者以外の人のほとんどは知らないので、この宴会には参加させられなかった。


 となると、料理を作れる人数が必然的にすくなってしまうわけで……。


 確かにそういうところも冒険者らしいっちゃらしいんだけどな?


 料理をしているのは、俺とリリィ、アウラとアスハさんの二組。


 俺とアウラの気まずい雰囲気を素早く察知したアスハさんは、この組み分けにしたのだ。


 ト、トルエが料理してないのは、まぁアレだ。今は家だ。


 つまり俺はリリィと二人で料理をしているということになるのだが……


 「ネストっとふったりっきりぃー」


 何がそんなに嬉しいのか、料理の合間を見つけては俺にくっついてくる。確かによく考えてみれば、このごろは忙しくてあまり遊んであげられなかったかもれない。


 「リリィは可愛いなぁ」


 くっついてくるリリィの頭を撫で回す。


 こうやって素直なあたり、どこかの誰かさんとは違う。


 「リリィは後ろからナイフでさしてきたりしないもんなぁ?」


 「んぅー?」


 俺の言葉に、その小さな頭をかしげる。


 またそういう仕草も可愛いんだよなぁっ!!


 そのあと、リリィの頭を堪能した俺は、リリィと共に料理を再開した。


 


 料理もあらかた出来上がり、俺たちはやっとのことで食事にありつくことができた。


 「おうネスト!!これお前が作ったんだってなぁ!!めっちゃ美味しいぞ!!」


 うん、それアスハさんが作った奴な。


 



 次第に冒険者のみんなも、酒で酔いつぶれていき、ギルドの床で横になり始めてしまっている。


 リリィもアスハさんとアウラに連れられていってしまった。


 とうとう起きているのが俺だけになり、そろそろ寝ることにする。


 「寝る前に便所……」


 確かギルドの廊下の途中で見かけた気がする。


 暗い廊下を歩いていくと、便所だと思われる部屋が見えてきた。


 ――――――――――――――――ガタン。


 「…………」


 それは便所の隣にある部屋から聞こえてきた、と思う。


 ……もしかしてヴァイスたちがこっそり戻ってきたとかか?


 もしそうだとしたら大変だ。俺は恐る恐る扉へと手を伸ばす。


 部屋の中にいたのは、『黒マント』――。


 しかし、暗くてそれ以上のことは良く分からない。


 



 「漆黒の救世主、参上ッッ!!」


 「いや誰だよお前ッ!!??」


 思わず突っ込んでしまったのを誰が責められようか。


 「ッ!!」


 自称『漆黒の救世主』は俺がいることに気がつくと、大慌てで隠れようとするが、正直今更としか思えない。


 「待てっ!」


 念の為に捕まえて、正体を確認しておいたほうがいいだろう。


 「……って、国王様ッ!?」


 自称『漆黒の救世主』の正体は、なんと国王様だった。


 「す、すみませんっ!!」


 慌てて頭を下げ謝る。しかし、国王様も慌てているみたいだ。


 「い、いやっ、これは違うんだ!!ちょっと『漆黒の救世主』様になってみたいとかそういうわけじゃないんだッッ!!」


 「…………」


 隠したいなら、まずは様付けからやめるべきだろう……


 国王様も今のでうまく隠せているとも思っていないのか、顔色が優れない。


 「……ひとまず、外行きません?」

 

 ここで話しているのを誰かに見られたりしたら、お忍びで来ているらしい国王様に迷惑がかかるかもしれない。


 幸い今は夜遅いし、外で話せば喋り声で起きてくるようなこともないはずだ。


 俺が先導し、誰にも見られずに俺の家の近くまでやって来ることができた。


 「……えっと、まず国王様は俺のこと覚えてますか?一回会ったことがあるんですが」


 「あぁ、覚えているぞ。娘の治療のために連れてこられた回復魔法使いの一人だったな」


 国王様とは一度しか会ったことがなかったから、てっきり忘れられてると思ったけど、意外にも覚えていてくれたようだ。


 「えぇ、それであってます。あと、一応アウラの主です」


 アスハさんから、俺がいない間に国王様の案内をしていたということを聞いていたので、そのことも付け加えておく。


 「ほう、アウラの主であったか。この度は世話になったと本人にも伝えておいてくれ。あとアウラにも言ったのだが、二人のときは敬語は使わなくていい」


 いや、ついでみたいに言ったけど普通ダメだよねそれ。


 まぁ俺は敬語使うの苦手だから、やめられるならやめる。


 アスハさんに使っているのは、もう癖になっているから仕方ないことだけど……。


 「分かった。……それで、結局国王様はギルドで何してたんだッ!?」


 俺がそう聞いた途端、国王様が俺の前までやってきて、俺の方を強く握り締めた。


 「一生に一度のお願いだっ!!あのことは誰にも言わないでくれ!!」


 必死の形相でつめよってくる国王様に、慌てて頷く。


 「わ、わかったから。一旦離れてくれっ」


 しかし、何故か国王様の様子がおかしい。黙り込んで、俺のことを目を見開きながら凝視してきている。


 ……いや、違う。たしかにこちらを向いているのは確かだが、目が合わない。


 じゃあ、どこを向いているんだ……?


 国王様の視線からすると、『耳』か?


 「えっと、国王様?」


 急な変化に驚きつつも、国王様に声をかけた。


 「…………す、すまないが、もう一回だけ、一生に一度のお願いをきいてくれないか?」


 「え、まあいいけど……?」


 そういう国王様の視線は未だに俺の耳を見ている。


 二回目の一生に一度のお願いとは一体なんだろうか。


 そう難しいことはいってこないと思うが、どうしても少し緊張してしまう。


 ……数秒の後、とうとう国王様が俺にお願いをしてきた。


 「あ、握手してくださいッッ!!」


 腰を深く曲げ、俺の目の前に、その両手を差し出しながら――――。


 

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