表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
46/181

これで、終わりだッッ!!

ブクマ評価感謝です。

また中途半端なところできれてしまって申し訳ないm(_ _)m



 「……クソッ」


 俺とヴァイスは未だに決着がついていなかった。


 俺の唯一の攻撃手段である腕の攻撃は、ヴァイスの二本のナイフによって尽く弾かれてしまう。


 「こんなもんッスかぁ?」


 どちらも当たらない攻撃を繰り返す中で、ヴァイスが軽い口調で言ってくる。


 これまでは、俺が意識せずとも腕が勝手に反応して相手を斬ることができていたのだが、それを防がれてしまっている今、俺に他の攻撃手段はない……。


 ヴァイスの言っている通り、俺の本気はこんなもんでしかなかった。


 「……ハァ、正直がっかりッス。それなら俺も遊びはこれくらいにしとくッスか」


 「ッ!?」


 次の瞬間、ヴァイスの攻撃の速さが明らかに上がり、それだけでなく力も上がったようだ。


 てっきりヴァイスも本気だと思っていたので、最終的に回復魔法を使い続けての体力勝ちも厳しくなってきた。



 


 ヴァイスがまじめに戦い始めてから、俺は防戦一方になっていた。


 腕の反応する間もなく攻撃を繰り出してくるヴァイスによって、俺は徐々に追い詰められていく。


 前までは避けることができていたその攻撃も、今では避けきれずに傷をつけられることが多くなってきた。


 かろうじて首への攻撃だけは避けている、そんな状態だ。


 しかし、まだ俺には回復魔法が残っている。


 「……ッ。ヒールッ!」


 傷をつけられては治療をして難を逃れていた。





 しばらくの間、それを繰り返していた時、ヴァイスがふと攻撃を止めた。


 「……やっぱりその回復魔法は凄いッス。でも、さすがに首まで斬られたりしたら、どうなるか分からないッスよね?」


 俺の首を見ながら、ニヤリと笑いかけてくる。


 あからさまに首を守っていたのが、仇になってしまった……。


 「まぁ、簡単には斬らせてもらえないかもッスけど、これならどうッスか?」

 

 そう言い切ると同時に、ヴァイスの姿が消えた。


 どこへ行ったかなど、探すのを後回しにして慌ててナイフで首を守る。


 「ッッ!!」

 

 瞬間、腕に物凄い衝撃がやってきて、受けきれずに後ろへ吹き飛ばされてしまう。


 「ヒールッ」


 起き上りざまに治療を終わらせ、次の一撃に備える。


 しかし、ヴァイスは先程まで俺がいた場所から動かず、俺の準備ができるのを待っているのか何もしてこない。


 「……今のはまだ本番の前の準備運動みたいなもんッス。これから、今出せる全力を見せるッスから、頑張ってくださいッスね」


 「いやいや、今のが本気じゃないとか有りかよ……」


 俺なんて、ずっと前から手詰まりだっていうのに……。


 けど、泣き言ばかりも言っていられない。


 すでにヴァイスは攻撃の準備に入っている。


 ……なにか、なにかもう一回だけヴァイスを出し抜けるようなモノはないだろうか。


 この前、ドラゴンに遭遇した時に、色々と自分のことを話してしまったのがダメだった。


 



 その、何かを探している俺の目に『ソレ』がとまった。


 「……」


 俺は『ソレ』を手に取ると、自分の真上へと思いッ切り投げた。


 「……今更自棄になっても遅いッスよッッ!!!!」


 その瞬間、ヴァイスが再び消えた。だが、おそらく狙いは俺の首。


 衝撃に耐えられずにナイフが壊れてしまうかもしれない。


 ……けど、それが何だ。


 俺にはもっと、もっと凄い回復魔法があるじゃないかッ―――!!


 


 腕に、攻撃の衝撃が伝わり始め、ナイフが砕けていくのが分かる。


 やがて攻撃は完璧にナイフを砕ききり、俺の首へと伸びてくる。


 それを感じながら俺は腕を前へと突き出した(、、、、、、、、、、)


 「ヒールヒールッヒールヒールヒールヒールヒールッヒールヒールヒールッッッッ―――!!」


 折角、痛みがないんだ。それならもっと自分の身体を使えばいい――。


 そして折角、回復魔法が使えるんだ。それなら今こそ、それを使えばいい―――。


 ……薬のせいか、ヴァイスのナイフが手の中に入ろうとしてくるのが良く分かる。


 けど、そんなことさせない。


 俺はただひたすらに回復魔法を使い続けた。





 ……次第に、攻撃の勢いがなくなってくる。


 「おいおい、これなんの冗談ッスか……」


 ヴァイスのナイフは、俺の手によって止められていた。


 「ハッ……。これが、俺の本気(、、)だよ」


 「け、けどもうネストっちには、ぶ、武器がないッスよね……?」


 ヴァイスはよほど自分の全力を止められたことが驚きなのか、俺から離れることも忘れてしまっている。


 ふと何時かのデュード先生の言葉が頭によぎる。


 『敵の渾身の一撃を防いでみろ!!それだけで相手は『詰んだ』と勝手に思ってくれる!!そんな奴にお前らは負けるのかぁ!!』


 ……あぁ、ホントだわ。マジで、負ける気がしねぇ―――。


 「……武器がないなんて、誰が言ったんだ?」


 俺はナイフから手を離し、落ちてきた『ソレ』を掴み取る。


 それは、一本の木の棒―――。


 「これで、終わりだッッ!!」


 腕が、反応する。


 手に持った木の棒が、呆然としているヴァイスの腕を、切り落とした――――。



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ