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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
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『漆黒の救世主』様に憧れて

ブクマ評価感謝ですm(_ _)m


 アウラと別れた俺は、ヴァイスが向かった先、つまり街の方へと走り出した。




 街は、意外にも変わっている様子などなく、いつも通りの平常運転をしている。


 一つだけ違うところと言えば、皆が俺を見ていることくらいだ。


 よく考えたら『漆黒の救世主』の格好をしているので仕方ないのかもしれない。


 「あ、あの……。あなたはもしかして『漆黒の救世主』様なんですか……?」


 俺を見ている人たちのうちの一人が恐る恐るといった感じで聞いてくる。


 ……これは本物と言わない方良いだろうか?


 本物だと分かれば、今から行動するのにも支障が出てくるかもしれない。


 「いや、『漆黒の救世主』様に憧れて、ね?」


 例え本物であるとしても、ここは嘘をついておいたほうが良さそうだ。


 俺がそう言うと、周りの人からは「やっぱりなぁ」といった納得の声が聞こえてくる。


 しかし、やはり格好が格好なのでチラチラとこちらを窺ってくる人たちもいるのは仕方ない。


 ここは一旦ギルドに行った方がいいか……。


 今なら冒険者の皆も討伐隊として駆り出されているだろうから、人数も少ないはずだ。





 出来るだけ人目につかないような道を通り抜け、俺はギルドまでたどり着くことが出来た。


 俺は念の為に、と静かにギルドの扉を開ける。


 「なッ!?」


 ギルドは、血で真っ赤に染められていた――


 以前にお世話になったギルド長や、見覚えのある鎧を着た人たちが床に転がっている。


 「……うぅ」


 「っ!?おい、大丈夫かッ!?」


 もしかしたら皆死んでいるのではという最悪の事態を想像したが、その中でギルド長がうめき声をあげた。


 よく見ると、ほかの人たちも怪我はしているが死んでしまっているのは幸いにも誰ひとりとして居なかった。


 すぐさま皆に治療をかける。


 ギルド長以外は治療しても意識がまだ戻らなかったので、唯一意識のあるギルド長の下へ、何があったのか確認に向かった。


 「ギルド長、なにがあったんですか……?」


 「……冒険者が来たと思ったら、いきなり斬りかかって来たんだ。私はあまり接近戦は得意ではなく、不覚にも遅れをとってしまった……」


 恐らくだが、それはヴァイスのことを言っているんだろう。


 「……それで、その冒険者は今どこに?」


 一刻も早くヴァイスを追わなければ、さらに被害が広がってしまうかもしれない。


 「ハッ!!そうだった!!今そいつはギルドの奥にある部屋に向かったはずなんだが、そこでアスハと国王様を待機させていたんだった!!」


 「えぇッ!?」


 万が一国王が殺されでもしたら、一大事では済まされなくなってしまう。


 しかも、そこにはアスハさんもいるというではないか。


 俺は、その言葉を聞くやいなや、ギルド長の静止もろくに聞かずギルドの奥へと一心不乱に走り出した。




 ギルドの長い廊下の角を曲がろうとしたとき、何やら奥から大きな音が聞こえた。


 何かと思い身構えた瞬間、曲がり角から見覚えのある人物が飛んできた。


 受付嬢の制服に身を包んだアスハさんだ――


 とっさにヒールをかけ、間一髪で抱きかかえる。


 「えッ!?ネストさん!?」


 黒マントを見てもアスハさんは直ぐに俺だと気づいてくれた。

 

 しかし俺の腕の中で顔を紅に染めたかと思うと、今すぐにでも俺の腕から降りようとする。


 それに従いゆっくりと慎重に腕から降ろす。


 「アスハさん、国王様は!?」


 アスハさんが飛ばされてきたということは、既にそこにヴァイスがいるのだろう。


 「へ、部屋の中にっ」


 「了解ですッ!!」


 全速力でアスハさんが居たであろう部屋に向かう。


 部屋に入ると既にヴァイスが王様へとナイフをふり下ろそうとしてきた。


 ……クソッ!!これじゃナイフは避けられないッ!!


 俺は咄嗟に国王様とヴァイスの間に身体を滑り込ませ、降ろされてくるナイフに腕を突き出した。


 今も薬が効いているのか、前と違って身体の中に異物が入ってくるのが分かる。


 どうやら、国王様を守ることはできたようだ。


 「国王様ッ!!今のうちに早く逃げてくださいッ!!」


 ヴァイスは殺したはずの俺がここに居ることに呆気にとられて未だ現状を把握しきれていない。


 「わ、分かったっ」


 俺の言葉に慌てて部屋を飛び出す国王様。ひとまずはこれで安心できる……。





 「……どういうことッスか?確かにあの時、殺しちゃったと思ったんスけど……」


 ようやくヴァイスが口を開く。


 そしてやはりというべきか、その件について聞いてきた。


 「あぁ、あれね……。うん、あれ死んだフリ」


 「……」


 ヴァイスはその事実に空いた口がふさがらないといった感じで呆けている。


 「まぁ今はそんなことは関係ないだろ?」


 「……それも、そうッスね」


 俺とヴァイスは、静かにナイフを構えた――。


 


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