比べモンになんねえわ
ブクマ評価感謝です。
戦闘の描写が下手ですみません。
先に言っておきますm(_ _)m
オーガとの距離が縮まっていく。
走る俺とは逆に、オーガはゆっくりと着実に俺に向かって歩いてくる。
それは余裕の表れなのかどうかは分からないが、近づくごとにその巨躯が改めて分かった。
この前見たドラゴンに匹敵する大きさだろう。
このままいけば、俺とオーガの戦闘が始まるのは街からはある程度離れた場所でできそうだ。
そうすれば、それだけ街の人が危険にさらされる可能性も低くなり、俺も戦闘に集中できる。
オーガとの距離がさらに近づく。
既にオーガが腕を伸ばせば届きそうな距離というか、実際オーガの腕が俺を捉えようとしてきた。
しかし、遅い。どう考えてもデュード先生の方が速い。
まぁ普通に考えてもこの大きさならこのくらいの速さが限界なんだろうけど、これならいくらでも避けられる。
「ッ!?」
しかし、俺は見た。
オーガがニタリと笑うのを――
次の瞬間、それまでの速さから一変して明らかに速さが増した。
完璧に油断していた俺はその速さに対応することが出来ず、そのまま殴り飛ばされる。
ありがたいことに痛みはやはり感じることはなく、地面を転がりながらもすぐにヒールをかける。
変な方向に曲がった腕や脚が一瞬にして元に戻り、万全の状態にまで回復する。
そこでオーガの顔が笑みから困惑しているような顔に変わった。
おそらく、これまでに対峙してきた相手は今の一撃で再起不能、または即死していたんだろう。
俺も場所が悪かったら即死していたかもしれないくらいの一撃だったと思うが、今回は俺に運が味方した。
「……ハッ。やっぱ今までと比べモンになんねえわコレ」
だが、オーガにとっても俺は今までの殺られるだけの相手ではない。
気合を入れ直し、もう一度オーガのもとまで向かう。オーガの方も俺が今までの敵とは違うと理解したのか、こちらの様子を窺ってきているように見えた。
「ここからが本番だ……ッ!!」
もう、油断しない。全力で、完璧に対処してみせる――
ナイフを逆手に持ち替え、本当の俺とオーガとの戦いが始まった。
迫り来るオーガの拳を見ながら、訓練で学んだことを思い出し冷静に対処する。
オーガが人型ということもあり、訓練の成果が存分に活かしながら、着実にオーガの懐に潜り込む。
腕を伸ばせば既に届く距離にまで来ることができた。
俺の腕が、動き出す―――
いつもならそのまま相手の腕や脚を切り取るが、ゴブリンの細い腕と違ってオーガの腕は俺の身体よりも太い。
ナイフの長さ分の深さの切り傷はつけることができたが、切り取ることまでは叶わなかった。
そうなれば使い慣れていないがこの前に購入した初心者用の剣を使う方が効率がいいはずだ。
念の為に、と思い持ってきたことが功を奏した。マントの下に潜めておいた剣を取り出し腕の切り取りにかかる。
しかしオーガも簡単にはさせてくれるはずもなく、振り返りざまに拳を放ってきた。
それを下にしゃがみ込むことで危なげに回避に成功するが、俺の腕はそれすらも利用し頭上を通り過ぎていくオーガの拳に剣を突き刺しそのまま腕を切り落としてしまった。
「グギャァァァアァァアアアアアッッッ!!!!」
オーガの絶叫が響き渡る。
これまでであれば腕を切り落とした時点で戦意を失くす相手が多かったが、さすがオーガというべきか直ぐに立ち直り俺に突進してくる。
「ヒールッッ!!」
自分に回復魔法をかけながら、オーガの突進の受け流しにかかる。
回復魔法無しで受け流しをしようとすれば、恐らく腕が耐えられないだろう。
上手く突進を受け流した俺の腕が、こちらに背中を向けているオーガを捉えた。
背中から首にかけてを線を引くようになぞる。
「グギャアアアアアァァァァァァアァアアァァアアアッッッッ!!!!!」
先ほどより大きな絶叫を上げる。必死に俺から離れようとするオーガを見るとどうやら既に戦意も無さそうだ。
だからといってここでやめるつもりもない。ここで逃がしてまた街に被害を出すわけにもいかないのだ。
最後の止めにオーガの身体と頭の間を本気の力を込めて、なぞる―――
ごとん、という鈍い音を立ててオーガの頭だったものが地面に落ちた。
…………お、終わった、のか……?
「ヒール」
ひとまず戦闘で疲労した自分に回復魔法をかけておく。
目の前で首の無い状態で倒れているオーガを見る。
その時になってようやく自分が殺ったのだという自覚が湧いてきた。
どれくらいの間、見続けていたのだろうか。
後ろから足音が聞こえてきた。俺が遅すぎたのでヴァイスが自分から見に来たのだろう。
「あぁ、ヴァイスすまん。ちょっとオーガ見てたら、そっちに行くの、が遅く、なった……ってあれ?」
しかし、俺が振り返るとそこには誰も居らず、ただ生暖かい風が吹いてきただけだった。
「ヴァイス……?」
確かに足音は聞こえたはずだった。なのにそこには誰もいない。
不思議に思ったが自分の聞き間違いだったのかもしれないと思い直し、何気なく視界を下げる。
「は……?」
そこには俺の胸から血に濡れた剣が生えていた。
咄嗟に振り返ると、そこには―――
ニタリ、と先ほどのオーガと同じ笑みを浮かべているヴァイスがいた―――