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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
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泣いちゃいますからね?

ブクマ評価感謝ですm(_ _)m


 「はぁ、戻ってきたな……」


 「そうっスね」


 俺たちは、ゴブリンキングを倒した後帰路に着き、やっとのことで街まで帰って来た。


 「じゃあ俺は荷馬車返してくるっすから先ギルド行っててくださいっス」


 「了解」


 ヴァイスには、借りてた荷馬車を返しに行ってもらい、俺たちはギルドでクエストの完了報告をしに行く。


 「……なんか街が慌ただしくないですか?」


 ゲイルに言われ、周りを見てみると確かに何か慌てているような感じがする。


 しかし、慌てているのは冒険者らしき人たちだけで、お店の人なんかはいつも通り仕事をしていた。


 「……どうなってんだ?」


 ひとまずギルドに行けば何があったのか分かるだろう。


 




 「あ、ネストさん!おかえりなさい」


 ……こういうのが誤解を生む原因なんだろうかと思いながらも、ただいまと返す。


 「アスハさん何か冒険者の人たちが様子がおかしい気がするんですけど何かあったんですか?」


 ギルドの中に冒険者はほとんどおらず何処かへ行ってしまっていた。


 「あ、もしかして、また何かモンスターが現れたとかですか?」

 

 半分冗談、半分本気という割合で聞いてみる。


 「……実は、そうなんです」


 「街の人達は、知ってるんですか?」


 「いえ、まだ公表していません……」


 あぁ、だから冒険者の人だけが何か慌てていたのか。


 「でもなんで公表してないんですか?」

 

 ゴブリンの時は早々に街の人たちに公表していた気がするのだが……。今回は何か問題でもあるんだろうか。


 「……そのモンスターが厄介でして、『オーガ』なんです。街の近くに現れたモンスターっていうのが」


 「『オーガ』ですか……」


 やばい、俺の知らないモンスターなのは確実だ。大きな蛾とかか……?


 後ろのサイアンたちの驚きからしたら強いモンスターっていうのは分かるんだけど。


 「今、調査隊に確認しに行ってもらってるんですけど、最初に発見した冒険者のパーティーからの報告では、おそらくその数『三』。今、ギルドに所属しているメンバーでギリギリ対応できるかできないかのレベルです」


 「そ、それってヤバくないですか?」


 「ヤバイんです」


 大きな蛾だとしたら、どんな攻撃をしてくるんだろうか……


 うん、全く想像がつかん。


 「ネストさん、ちょっとお話があるので少し奥に行けませんか?」


 「あ、はい」


 ここで話さないということは、サイアンたちには聞かせられない話なのだろうと思い、素直に付いて行く。


 




 「それで付いてきてもらった理由なんですが、オーガを足止めしてもらえないでしょうか。『漆黒の救世主』として」


 …………アスハさんも知ってたんですねソレ。


 「さっきはああ言いましたが、今のギルドで対処できるのは精々二体までが限界です。危険は承知でお願いします。街を、街の皆を救ってください」


 肩を震わせ顔を俯かせながらそう頼んでくるアスハさんに、無理とは言えない。


 「えっと、分かりました。だから顔を上げてください」


 オーガのことは全く知らないけど、アウラを連れていけば大丈夫なはず。指揮コースに通っているアウラならオーガの戦い方なんかも詳しいだろう。


 さすがに戦闘に参加させるつもりは無いので、離れさせてはおくが……


 「……ありがとうございます」


 しかし、アスハさんの顔は未だに暗い。


 「……えっと、他に俺に出来ることがあれば聞きますけど」


 「………」


 やはり反応が薄い。こ、これは早くオーガの場所とかを聞いて行ったほうが良いかもしれないな……。


 「それじゃあ、オーガのところ行ってくるんですけどどこに居るんですか?」


 「……三体のオーガはこの街を囲うように三方向から近づいてきています。ネストさんにはここのオーガをお願いします」


 簡易的な地図で場所を示しながら説明してくれる。


 「じゃあ早速行ってきますんで」


 「…………」


 説明はしてくれたが、それ以降の反応が無くなってしまった。まぁ、何か思うところがあるのかもしれない。


 ……しかし、サイアンたちがいるところへ戻ろうとした時後ろから引っ張られた。


 もちろん引っ張っているのはアスハさんしか居ない。


 「ア、アスハさん……?」


 初めて会った日のことを思い出し、緊張してしまう。






 『…………絶対、私の前から居なくなったりしないでください。もし、そんなことしたら私、泣いちゃいますからね?』






 「ッッ!!??」


 耳元でそう囁かれたかと思うと、頬に柔らかい『何か』が……


 アスハさんは顔を俯かせながらその場からすごい勢いで走り去っていった。


 「オ、オーガ、倒しにいくか……」


 気持ちを切り替えようとそう呟いてみたものの、頭の中はアスハさんのことで一杯だった。


 さすがに今のがギルドの仕事という訳ではないだろうし、かといって俺に好意を持ってくれると考えるのも自惚れだと思う。


 ――――けど俺は、そんな未来に期待せずにはいられなかった。


 「アスハさん、か……」


 自分の気持ちは判らないけど。


 もし、そうだったら嬉しい、かな……



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