……本当ごめん。
ブクマ評価感謝です。
食糧品の店をあとにした俺たちはまだ買い出しを続けていた。
「じゃあ次は『アイテム』っすかね?」
「ん、アイテムって何を買うんだ?」
今までにアイテムが売っているお店には行ったことがあるが、特に買い物をしたことはなかった。
「そりゃ、回復薬っすよ。これがないと怪我した時とか困るっすからね」
「そうですね、僕も何個か買っておこうと思ってます」
…………あれ、そういえば皆は俺が回復魔法使えるの知らないのか。
「……えっと、俺が回復魔法使えるから買わなくていいと思うぞ」
「「「え!?」」」
「ギルドでもよく治療してるからな、さっきの店の人ともそういうのでお世話になってたからサービスしてもらえたんだよ」
「な、なるほど、そういうわけだったんすね。それにしても冒険者なのに回復魔法使えるなんてすごいっすねぇ」
「そんなことないと思うけど…。まぁだから回復薬はいらないと思うんだが……」
怪我したとしても、俺が居ればすぐに治療することができる。
「でも、やっぱり買いに行ったほうがいいですよ」
しかし、ゲイル曰くやはりアイテムを買うべきらしい。
「万が一、怪我を負ったときネストさんが回復魔法を使えない場合やはぐれてしまった場合なども考えると各々数個ずつは持っておくべきだと思います」
今まで一人でゴブリンとかを倒しに行っていたせいか、やはりそういうところまで気が向けられない。
確かに緊急事態などを考えると買っておくべきか……
ジェイドの提案でやはり回復薬は買うことになった。
しかし、一つだけ言いたいことがある……。回復薬、高すぎだろッ!!
「回復薬ってこんなに高いものなのか?」
だって、一個一万エンって、俺の治療費の十倍くらいだぞ!?
「え、都に売られていたやつよりもかなり安くて驚いたんですが……。ねえ兄さん?」
「あぁ、確かに安かった」
「俺も安くて驚いたっす!」
一万エンで安いって都はどんだけ高いんだよ!?
今回のゴブリンキング討伐の報酬は百万になっている。本来なら俺たちみたいな新人が倒せる相手ではなく、もっと手練の人が受けるクエストなのだが、そこは人数でカバーする。
すなわち、単純計算で一人二十五万になる。回復薬を一人五本ずつ買って五万、差し引いて二十万の利益が手に入るわけだ。
「……もしかして回復薬ってすごい効果がある、とかなのか?」
それなら納得できる。なにせ普通のヒールが傷口を閉じる程度と聞いているので、もしかしたらもうちょっとは効果があるのかもしれない。
「えっと、直接見たわけではなく聞いた話なんですけど、回復魔法のヒールに匹敵するらしいですよ」
「へ、へぇ、そ、そうなのかぁ……。ちなみに回復魔法で治療してもらうのって、ど、どれくらい掛かるものなんだ?」
ちなみに俺のヒールは一回大体、千エン前後。
「都で治療してもらった時に見た感じだと、『ヒール』が一万」
「ヒールが一万ッッ!!??」
ちょ、俺その十分の一なんですけどぉッ!?
「『ポイズンヒール』が五万、『リフレッシュ』が一万、『ハイヒール』なら十万くらいが相場になってましたね」
「……『ポイズンヒール』と『リフレッシュ」ってなんだ?」
あいにくだが俺は『ヒール』と『ハイヒール』しか知らない。
「え、協会で回復魔法を習った時に教えてもらったんじゃないんですか……?」
「い、いや、俺独学でなんかできるようになっちゃって、ハハハ……」
「そうなんですか……。独学で使えるようになるとはネストさんに元々回復魔法の才能があったのかもしれないですね」
もし本当に俺に才能があったとしたら、それは運が良かったんだろう。一目惚れした回復魔法を自分でも使えるようになったんだから。
「それで、『ポイズンヒール』と『リフレッシュ』についてですが――」
…………なんてことだ。
今の今まで、俺は勘違いしていた。『ヒール』というものはすべての怪我や病気に効果があるものだと思っていた。
けど本当は回復魔法は回復魔法でも、『ヒール』や『ハイヒール』は傷に対してのみ効果を発揮し、『ポイズンヒール』は病気や毒に対してのみ効果を発揮する。そして『リフレッシュ』は疲労などに対してのみ効果を発揮するようだ。
しかし俺の『ヒール』はお城の一件で使用人の病気を治療できている。そのあとに疲れも取れていたようにも見えた。
……ということはだ。俺は『ポイズンヒール』や『リフレッシュ』を使わないといけない場面で『ヒール』を使ってしまったということだ。
しかもそれでちゃんと効果が出たというオマケ付きで。
あの時は顔を隠していたからまだよかったかもしれないけど、これから病気の人とかを治療するときにはちゃんと使い分けをしなければいけなくなってくる。
それを今知ることが出来たのは運が良かった。
俺はもっと、自分の行動には気をつけなければいけないな…………。
「他にも回復魔法の種類とかあったら教えて欲しいんだけど……」
「すみませんが、本職ではないのでそれくらいのことしか知らないですね……。お役にたてず申し訳ありません」
「いやいやっ!!全然助かったよ」
しかし他に回復魔法があるかもしれないというのはマズイ。どこからボロが出るかも分からない。
まぁ、帰ったらトルエに教えてもらえばいいか……
それにしても…………
最初に治療してあげたおっちゃん、
おっちゃんのせいで俺すごい安い値段で治療してたな…………
いや確かにね?そのおかげでたくさん人が来てくれたんだけどもッ!!
アイテムを買っているときにやけに回復薬の売れ残りが多いと思ったけど……
それ絶対俺のせいだよ……。
………………本当ごめん。