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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
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これなんて罰ゲーム?

 視界を暗闇が支配する。体を覆うソレは少しひんやりとするがそれもまた心地いい。


 え、俺がどこにいるかって?布団の中に決まってんじゃん。ギルドで盛大にやらかしたあと宿屋で部屋を借りて、部屋に入ったと同時にふて寝しているのだ。


 「はぁ、明日からどうしよう……。ってその前に掃除に行かないと、でも顔合わせづらいなぁ」


 


 コンコン


 ドアがなった気がしたけどこの街に初めて来た俺に客なんかくるはずもないか。


 コンコン


 また聞こえるよ……。もしかして人恋しいのか俺。はぁ、もう寝よ。


 ゴンゴン!


 ってやっぱ俺じゃんか!


 「あ、すみません!今開けるんで!」


 宿屋のおばちゃんでした。


 「今、下にあんちゃんのお客さんが来てるよ。下で待ってもらってるから準備できたら降りてきな」


 どう考えてもギルドの人だよこれ。いや、下手したらギルドで問題起こしたからって警備の人だったりして……


 ………逃げるか。


 そう決意した俺は早速実行に移す。ろくに下も見らずに勢いよく窓からダイブする。




 下には受付のお姉さんが、にっこりと笑いながら待っているという事故。


 「え。」


 「やっぱりここにくると思ってました(ニッコリ)」


 今更、部屋に戻れる訳もなく重力に従いお姉さんのもとへ落下する。このままではぶつかるのは必至。


 しかし、さすが受付嬢。なんの造作もなく抱えられてしまった。所謂、お姫様抱っこ。俺男なんですけど!?男なんですけど!?大事だと思ったのでつい……、ごめんなさい。


 「あのー、できればそろそろおろして欲しいんですけど…」


 「えっと、降ろしてもいいんですけど逃げないでくださいね?」


 「……やっぱり捕まえに来たんですか?」


 「えっと、まず一回ギルドまで行きましょうか。」


 テンション駄々下がりの俺の手を引くお姉さん。周りからの視線が痛い。


 「手とかつないだりして(俺)大丈夫なんでしょうか……?」


 「あ、全然(私は)大丈夫ですよ?まぁ確かに今後(私の仕事に)支障があるかもしれませんが。」


 「死傷!?」


 都会では、美人と手をつなぐだけで死傷がでるのか……。恐ろしすぎる。



 

 今俺は本日2回目になるギルドの部屋に来ている。部屋には、俺、お姉さん、ギルド長の三人がいる。


 「ネスト、よく来た。実はお前さんの回復魔法のことで話がある」


 「えっと、ハイ……」


 結果発表だろうか、別にダメなことくらいわかってるから呼び出さなくてもいいのに……


 「まず、お前さんはどこで回復魔法を覚えた?」


 「えっと、独学でやりましたけど……」


 ウチは一般家庭だしな!金はあんまなかったんだ。


 「……どんなやり方でやったんじゃ?」


 ん?どんなやり方って、


 「ま、まず、指を切りました。そのあとに腕とか足も切りました。で、それをヒールで治すってやり方でやってました」


 「そうか……」


 急に難しそうな顔をして黙り込み、少しすると顔を上げる。


 「次に、お前さんのあれはヒールか?」


 「え、ひ、ヒールですけど……?」


 もしかしてヒールと思えないくらい下手なのかな。やっぱ独学じゃ厳しいよな……。


 「最後に、お前さんはギルドでなにをしたいんじゃ?」


 ギルドですることといえば……?


 「お金貯め、ですかね」


 「何故お金を貯めるんじゃ?」


 「えっと、俺って独学で回復魔法勉強したんですけど、やっぱりヒールまでしか覚えられなかったので本職の人に教えてもらおうと思って。そうなるとやっぱり沢山お金がいるので……」


 そうすれば、もっとたくさんの回復魔法を使えるようになるだろうし。


 それから質問は終わったのかギルド長とお姉さんは二人で話し込んでいた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


 今、私は目の前の人物、ネストについて考えていた。


 いきなりギルドに来たと思うととんでもない回復魔法を使ったソイツは、何を思ったのかいきなりギルドを飛び出していった。


 今はアスハ(受付嬢)が再度連れてきたのだが、聞くところによるとあの回復魔法はヒール、らしい。


 本来ヒールというのはせいぜい傷口を治す程度の効果しかない。いや、それだけでも十分にありがたいのだが、ネストのあれはもはやヒールなどでは収まりきれないほど規格外な代物であった。


 そして、自分ではそれが並以下と思っているのか回復魔法の本職に教えを乞いに行くという。


 「ギルド長、彼のことどうするお考えですか?できれば、私はギルドに置く方針でお願いしたいのですが」


 アスハは、首の傷の一件で信頼を置いているので、私にそう進言してくる。


 




 「……うむ、ギルドの一部のスペースを貸すか」 




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ネスト、ギルドはお前に一部スペースの使用を許可する!」


 話し込んでいると思ったら突然ギルドの使用許可がおりた。


 「え、ホントですか!?ありがとうございます!」


 よ、よかったぁ。これでひとまず安心だ。てっきりダメだと思ってたから逆に驚いた。


 「あと、これは他言無用なのだが……」


 え、なんだ……?もしかして悪い話……?


 「お前の使った回復魔法は、ヒールじゃない」


 ガビーーーーーーーーーン!むっちゃ悪い話でした。まさか、俺が使ってたのがヒールじゃなかったなんて……。


 「いや、これは決して悪い話をしているんじゃない」


 いやいや悪い話ですよ。だって俺、自分ヒール使えますって言ってたのに実はヒールじゃなかったなんて……。これなんて罰ゲーム?


 「あのな?普通ヒールっていうのは傷口を閉じるくらいの効果しかないはずなんだ」


 え、ヒールは傷口を閉じるだけ……?


 「え、でも俺のヒールって腕とか復活するんですけど」


 てっきり俺はそれが普通なんだと思ってたけど、違うの?


 「あれは異常だ。確かに私は本職ではないが、それでもあれがおかしいことくらいわかる」


 ま、マジですか。


 「まぁ聖女とかになったら或いはそれくらいのことができるかもしれんが」


 「聖女ってなんですか?」


 初めて聞く単語に俺は惹かれた。


 「都にある教会で一番優れている回復魔法使いに与えられる称号だ。しかも今代のはかなりの美人でもあるらしい」


 ま、マジデスカ!!!俺と同じ回復魔法つかいで、しかもそのトップ……。何より美人!!


 「やっぱりネストさんもそういうのは興味ありますよね」


 冷たい声が響き渡る。


 「お、お姉さん……?」


 「私はアスハです。お姉さんではありません。」


 ピシッと言い放つアスハさん。


 「は、はいアスハさん!すみません!」


 「いえ、いいんですよ?男の子ですもんね。ワカリマス」


 絶対わかってない。だってアスハさんの笑顔、怖いもん……。


 「……それでだ、話を戻すがその聖女ならネストが教えを乞えるだけの能力を持っているやもしれん」


 「そ、そうなんですか。まさか俺の回復魔法が意外に凄かったなんて、マジで普通かと思ってました」


 「意外どころではないぞ、もう化物といっても差し違えないほどだと思うぞ。あ、そういえば明日聖女がここ来るから」


 化物……。うーんあんま嬉しくないなぁ。


 「って聖女が来る!?明日!?」


 「あぁ、慈善活動でギルドで怪我してる奴を治療して回ってるんだ」


 明日……。明日になれば聖女に会えるかもしれない。もしかしたら教えを乞えるかもしれない。今日できることといえば、早く寝るしかないな!!


 「ギルド長、アスハさん!今日俺早く帰ってもう寝ますね!あとギルドの一件ありがとうございますーーー!」





 そして俺は帰って寝ようと思ってたのだが窓から飛び降りたことが宿屋のおばちゃんにばれていて、こってり絞られた。


 な、泣いてないからな!!!

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