表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
22/181

渡しちゃったの……?

ブクマ評価感謝です。

前回の話を三人称から一人称にもどしました。

そちらからご覧いただけると幸いです。

 剣を振り落としていた私は初めてそこで件の賊でない可能性の有に気がつきました。


 咄嗟に腕を下げ、大怪我を負わせること防げたことに安心したのも束の間、部屋に入ってきたのは、見るからに賊の男。


 こんなことならそのまま切り落としておけばよかった……


 しかし、私にそれ以上の行動をとれる体力は残っておらず、床に倒れ込んでしまいました。


 


 


 それからは、賊だと思っていた男が私とお母様を治療していきます。


 その後、私は自分以上の回復魔法の使い手の男に対し、いつかまた再会できるように、という祈りを込めて自分のイヤリングを一つ送りました。


 


 

 賊の男が出て行ってから少し経ち、お母様が目を覚まされました。念の為に身体に斑点が無いかを調べましたが、私共々に身体には斑点は見つかりませんでした。


 「あら、あなたイヤリングはどうしたの?」


 お母様が私の片耳にイヤリングがついていないことに気付いたようで事情を聞いてきます。


 「実は……」


 私は先程までの出来事と、再会のためにイヤリングは差し上げたということを話しました。


 「あなたあのイヤリング渡しちゃったの……?」


 「はい、渡しましたけど……。なにかまずいことが……?」


 「……あれは王家の直系の人間が再会の祈りをこめて渡すものだから、別に間違ってはいないのだけれど……」


 しかし、という顔の王妃に私は戸惑いました。


 「…………簡単に言っちゃうと、あのイヤリングは結婚相手に対して渡すものなのよ。私もお父さんに貰ったのよ」


 「ッ!!」


 私としてはそこに他意などなく純粋に再会を祈って渡したのですが、どうやら少々まずいことをしてしまったようです。


 賊の男の人がそのことを知った時のことを考えると……


 私は恥ずかしさのあまり、お父様に報告することも忘れて布団にくるまり続けてしまいました。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 ……俺は一人宿屋に向かっていた。


 「はぁ……」


 ため息だって吐きたくなる。王女様を治療しに行ったのに、結局治療できたのは使用人であるだろう二人だけ。


 「はぁ……」


 ため息だって二度くらい吐きたくなる。王女様さえ治療できなかった俺は指名手配されるだろう。明日くらいにはギルドでも『手掛かり求む!』みたいな依頼がきているかもしれない。


 俺は一人暗闇を歩きながら、耳に付けたイヤリングをパチン、と指で弾いた。




 

 「はぁ!?城に行ったけど治療できなかったぁ!?」


 「……はい」


 案の定、俺はアウラに説教されている。


 宿屋に帰った時は、心配してくれていたのか安心したような顔だったはずなのだが、俺が治療に失敗したということを言うとすぐに正座させられてしまった。


 「……で?どうして治療できなかったわけ?」


 「えっと、警備が思ったより多くいて、部屋も探したんだけど……」


 「そんなの最初から分かってたでしょ!!」


 「はい……」


 「まぁ、無事に帰ってきてくれたのは良かったけど……」


 しばらく説教された後解放された俺は、身体を洗ったりしてからベッドに横になった。


 今の部屋は、さすが都というべきかやはり広い。ベッドが二つもあるので俺以外はもう一つのベッドで眠れるのだ。


 


 


 皆も寝静まった頃だろうか、俺のベッドに何かが入ってきた気がしたが、俺も眠くてしかたなかったので気にせずにそのまま眠ることにした。


 …………暑い。俺は重い瞼を開け布団の中を覗き込む。


 そこには、俺に抱きつきながら眠っているリリィの姿があった。……さすが幼女というべきか、女の子の特徴とも言えるお胸は慎ましいもので、女性経験皆無の俺でも全然耐えられそうだ。



 暗くて見えにくいが、俺の服が湿っていることからどうやら泣いていたらしい。これで涎とかだったらさすがに御免被るのだが、乙女が涎垂らしながら眠るなんてことはないと祈りたい。


 「…………リリィ」


 起こそうと揺さぶってみるも逆に抱きつく力が増したような気がする。


 このままにしておくか…………


 俺は途切れてしまいそうな意識の中で、目の前にある頭を撫でながら再びの眠りについた。


 



 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ