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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
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治療を始めますね。

聖女視点で始まりました。

今回から、小説の書き方として一人称だけでなく三人称も取り入れていこうと思います。今回は視点が変わったために少し三人称を使っておりますが、これからは戦闘のシーンなどで三人称を使っていこうと思います。

感想お待ちしております。

 「おはようございます、お父様」


 聖女であり、王女でもある私は自分の父である国王のもとへ来ていました。


 用件はすでに分かっています。謎の奇病に掛かった母、女王の治療の件について、です。


 「おはようルナ。此度来てもらったのは他でもない、我が妻の件についてである。聖女でもあるルナに治療を頼みたいのだが、出来るか?」


 「……治せるかは分かりませんが、やってみます」


 私の言葉にお父様は頷くと、「では頼む」と言い残しまた仕事に戻っていきました。


 



 「お母様、入りますよ」


 部屋の外から呼びかけるも返事がないので、私は勝手に入ることにしました。


 お母様は、ベッドに横になり眠ってはいますが、顔色は優れずとても心地よさそうに眠っているとは思えません。


 服を脱がし、奇病の特徴を探します。


 背中に黒い斑点のようなものを数箇所、腕にも同じ斑点が数箇所。どうやらそれがこの病気の特徴のようでした。


 「ではお母様、治療を始めますね」


 



 回復魔法として一般的に知られているのは『ヒール』ではありますが、実は回復魔法はそれだけではありません。


 まず、この病気が毒か何かの類である場合、使用する回復魔法は『ヒール』ではなく『ポイズンヒール』を使用しなければいけません。


 そして、その病気で疲労していた時のために『リフレッシュ』も使用しなければいけなくなってくる時もあります。


 しかし、何度も何度も『ポイズンヒール』や『リフレッシュ』をお母様にかけますが、腕や背中にある斑点は一向に消える気配がありません。


 


 


 王に治療に失敗したという旨を伝えると、嘆き悲しみその日は仕事の一切に手を付けられなかったようでした。


 「……すみません、お父様。私の力が足りなかったばかりに」


 自分の非力さにお父様やお母様に合わせる顔がありません……


 



 翌日、自室で目を覚ますと、どうにも身体が怠い気がしました。


 ……昨日の治療で魔力を使いすぎたのでしょうか。


 そう思いながらも、聖女の仕事を放り出すわけにも行かないので、自室にある鏡の前で修道服に着替え始めます。


 ふと、自分の腕に何やら黒いものが見えた気がしました。


 まさか……と思い腕を見ると、そこには王妃と同じ黒い斑点があったのです。


 その時点で初めて、この病気が人に伝染るということが判明しました。


 確かに昨日の時点でそのことを考慮すればよかったのですが、自分の母の一大事にそのことすらも忘れてしまっていたようです。


 すぐさま国王の部屋まで向かいます。幸いにも朝早いということがあってか、国王の部屋の前には警備の人がいませんでした。


 「お父様、朝早くすみませんが起きていらっしゃいますか?」


 「……うむ、起きているぞ」


 未だに昨日のことを引きずっているのかお父様の声には、いつもの覇気が感じられません。


 「どうか、このままで話をさせてください」


 国王であるお父様に伝染すわけにはいかないので扉越しの会話の許可をもらいます。


 「実は、昨日治療に向かったお母様の病気についてなのですが、どうやら人に伝染る類のものであったらしく、私にも伝染ってしまいました……」


 「何ッ!?」


 「開けないでくださいっ!!」


 私の強い声に驚いたお父様は、扉を開けようとするのを止めてくださいました。


 「申し訳ありませんが、この病気は私には治せそうにありません。そして、どうやらこの病気は人に伝染ってしまうものらしいので、私とお母様を城の端の部屋に移動させてください。そして、私がここを離れたあと、すぐに換気をするように命じてください」


 「……わ、分かった。お前の言うとおりにしよう……」


 


 それを聞いた私は自室に戻り、生活に最低限必要なものを準備して、与えられた部屋に向かったのです。


 お母様は厳重な管理の下で部屋に移動させられてきました。


 


 それから数日が経った今日、食事は一日に三回部屋の前まで届けられますが、今ではそれを取りに行くことさえ私には辛くなってきました。食事も満足に取れず顔も幾分かやせ細ったように感じます。


 ……せっかく回復魔法を学んできたのに結局お母様さえ救えずに自分も死んでしまうのでしょうか…………


 こぼれ落ちてくる涙を止めることができず、私は長らく枕に顔を押し付けました。


 



 


 ……ふと目が覚めると部屋の外が何やら騒がしく感じます。


 いつもの食事を届けてくれる音ではないようで、少し耳を澄ませると微かに聞こえる警備の声でどうやら賊が城に侵入したらしいことが分かりました。


 ……おそらくですが今部屋の前で聞こえた音から、扉の外に居るのが賊なのでしょう。


 重い身体に鞭をうち、部屋に何故か置いてあった剣を手にとりました。


 


 …………扉が開かれる――


 私は手に持った剣を扉の隙間から伺える腕に向かって勢いよく振り下ろしたのでした―――


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