近寄らないで、ください……
すみません、今回かなり短いです。
次からは長くしますのでm(_ _)m
「あなたが、何者であっても、私は、屈することなど、ありません、から……」
そう言う美人さんは顔色が悪く、立っているのもやっとだったようで、言い切ると同時に倒れてしまう。
「おい、大丈夫か!?」
「近寄らないで、ください……」
しかし、ここで放置するのも後味が悪い。こんな城の端っこにいるってことは治療代も払えないような使用人なんだろう。
「……えっと、ヒール」
出会ったのも何かの縁だろうし、俺は彼女に回復魔法を使った。
「……え?」
次第に顔色が良くなり、具合も戻ってきたのか、静かに立ちあがる美人さん。
「あ、あなたがやったんですか…………?」
「ん?治療したのは俺だけど……。あ、お金は要らないからね?」
これ以上ここに居ても警備の人が来たら危ないし、そろそろお暇させていただこう。
「じゃ、じゃあ俺はこれで……」
「ま、待ってください!!あの、できれば母も、治していただけませんか……?」
どうやら親子二人で病気にかかってしまったようで、今は奥のベッドで寝ているということだった。
「ヒール」
お母さんのところに案内してもらい回復魔法をかける。顔色が良くなり、前はつらそうにしていた寝息も徐々に安定してきた。
「あ、あの!これを……」
今度こそ出ていこうとしていた時に美人さんが何やら渡してきた。よくみると自身がつけているイヤリングの片方を渡してきている。
「これは……?」
「はい、これは代々私の家に伝わっているもので、再会を願ってあなたに渡しておきます。治療代とでも思って頂ければ……」
「へぇ、そういうことなら貰っておこうかな。じゃあ、今度こそ俺は行きますね」
それにしても、綺麗なイヤリングだなこれ。どうしてこんなものを使用人なんかが持ってるんだろう……。
俺は部屋を出て、再び聖女様の部屋を探す。しかし、いくら探しても結局見つけることができず、どんどん警備の人数も増えてきて、俺は仕方なしに宿屋に帰ることにした。
「はぁ、せっかく女装までして忍び込んだのに結局治療できたのは使用人の二人だけ、か……」
俺は重たい足を引きずりながら、宿屋に帰った。