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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
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ヒールしか使えません。

ぱっと思いついたので適当に書いたのですが。

感想お待ちしております。

受付嬢の描写を少し加えました。

「ヒールッ!」


 今日は快晴、回復魔法日和だ。


 俺こと、アネストは昔、回復魔法を目の当たりにし、今ではすっかりハマってしまっている。


 本来、回復魔法を習うには、教会への多大な寄付金がいる。しかし、唯の平民の一般家庭として生まれた俺ではどう背伸びしても払える額じゃないのは子供ながらに理解していた。


 じゃあどうするか。


 それは、自分でやるしかないだろう。


 「じゃあ、やりますか!」


 俺は、「自分」の「腕」を切り落とす。昔やった時はかなり痛かったが今になってはちょっとかゆいレベルだ。


 「えっと、ヒールッ!」


 腕がみるみるうちに復活する。そして、数秒とかからないうちには前と変わらない腕がちゃんと肩にはできている。


 え、どうやって回復魔法を覚えたかって?そんなの、人間誰でも死にそうになればそれくらいできるようになるさ。最初は指を、次は手、足、腕。とにかくやれることは何でもやった。でも、独学じゃこれくらいが限界だろう。そろそろ誰かに教えてもらうしかない。



 回復魔法というものはどんなものでも使えるだけで重宝される、らしい。少し大きな街で治療でもやれば頑張れば寄付金ぐらいなら貯められると思う。


 俺は今日から16歳。まぁ大人として見られはじめる歳だ。今までは我慢してきたがそれも今日までだ。今日、村をでることは既に親に許可ももらっている。


 「おー、ネスト!もう行くのかい?」


 「おっちゃん!もう準備も終わったから大丈夫!」


 商人のキャラバンに同行して街までは連れて行ってもらう。




 その街はでかかった。俺の村なんかでは比にならない。でも都はもっとでかいというのだから恐ろしい話だ。


 「あ、あのー、ここって冒険者ギルドですよね?」


 俺は今冒険者ギルドにいる。冒険者になるつもりではない。


 「はい、もしかして新規の方ですか?」


 受付というのは美人が多いのか、長い茶髪が背中あたりまであるのが印象的だ。女慣れしていない俺にはちときつい。


 「い、いえ。登録ではないんですけど、ギルドのテーブルを一つ少し貸していただきたくて」


 ギルドといえば沢山人が集まる。自分で場所を借りるよりかは、ギルドでやった方がいいと思ったのだ。


 「えーっと、それはどういう目的で?」


 心なしか、なんか警戒されてる気がする。そ、そんな睨まないでほしいんだけど。はっきりいって怖い。


 「い、ひや、ですね。そ、そこでちひょうを……」


 噛みすぎだ俺。しかしそこは受付嬢。さすがというべきか俺が言いたいことを分かってくれたようだ。


 「あー、そういうことですね。すみません。それなら大丈夫だと思いますけど、一応規則ですのでギルド長に会ってもらいますね」


 まさかのギルド長。え、ちょっと早くないですか?


 「ギルド長!私ですけど、今大丈夫ですかー?」


 「ん、大丈夫だ」


 お姉さんに連れてこられたのはある一室。中に入るとそこには子供がいた。


 「あ、あれ?なんで子供……?」


 「あぁ、私はエルフだからな。どうしても成長が遅いんだ。これでも100は余裕で生きてるぞ」


 「ロリババァだとぅ!?ハッ!ごめんなさい、何分田舎から来たもので……」


 そうだ、しっかりしないと、テーブル貸してもらえないかもしれない。


 「今回、こちらの、えっと……」


 「あ、アネストです。親しい人にはネストって呼ばれますけど」


 「あ、分かりました。それでこちらのアネストさんがギルドのテーブルを一つ貸していただきたいということでした。そこで治療をするという話でしたが」


 あ、さらっとネストって言われなかった。まぁたしかに俺とじゃ釣り合わないけども!!顔面偏差値が!!!皆まで言わすな!!


 「そういうことか。えっとネストだっけか?お前さんはどれくらい回復魔法が使えるんだ?」


 「えっと、ヒールだけなんですけど、大丈夫ですか?」


 そう、俺はヒールしか使えない。魔力は多いのか判らないけどそれなりの回数使えると思う。前、一日に何回できるか試したけど結局朝から夜までやったけど全然余裕だったし。ヒールの魔力消費が少ないのかもしれない。


 「んー。ヒールだけか……」


 やはり難しそうな顔をしている。おい誰だよ!回復魔法は使えるだけで重宝されるとか言った奴!


 「実は、今この街には回復魔法を使えるやつがいなくてな。ヒールだけしか使えなくてもネストのところにはたくさんの客がくるだろうけど、それを捌ききれるかなと思ってだな。それに、一概にヒールといっても治り方には個人差があるらしいしなぁ」


 「あ、人数なら大丈夫だと思います。一日ずっと使っても結構余裕だったし」


 「?、回復魔法は魔力の消費が激しいはずなんだが……?もしかしてネストが言ってるのはヒールじゃないんじゃないか……?田舎から来たって言ってたし……」


 なにやら俯いて呟いている。はぁ、やっぱダメなのかなー。今更村に帰るわけにもいかないしなぁ。はぁ、ホントどうしよ。


 「おい、ネスト。一回お前さんの回復魔法を見してくれないか?ちょっと確かめたいことがあってな」


 お、もしかしてこれはラストチャンスか!?これで失敗したらあとがないぞ。頑張らないと。


 「あ、あの、では今からやりますので、どちらかでいいので俺の両手両足を切り落としてくれませんか?あまり剣使えないので……」


 「「ハ?」」


 お姉さんとギルド長の声がかぶった。え、それだけじゃ足りないのか……?もしかして頭!?


 「あ、ごめんなさい。さすがに頭は無理です!ごめんなさい!」


 「い、いや、そういうことではなくてな?ていうか両手両足なら大丈夫なのか?」


 ギルド長とお姉さんが疑うように俺を見てくる。ん、どうゆうことだ?別に手足が切れたって死んだりするわけじゃないし。


 「えっと、別に両手両足なら大丈夫ですけど……?」



 


 「ギルド長、もしかして彼は止血するということでしょうか。たしかにヒールではそれくらいなら傷が治りますし……」


 「うむ、もしかしたら後から腕とかは治してもらえばいいと思っているんだろう。さすがにそれでは可哀想だしせめて手にすこし切り傷くらいにしてもらうか。それが治せるだけでも実際ありがたいしな……」



 なにやら二人で話し込んでいる。俺が無能すぎてギルドでは使えないってことかも……


 「あのな、ネスト。切るのは手をちょっとだけで大丈夫だ。それなら自分でも切れるだろう?」


 「そうですね、それがいいです」


 なにやら息ぴったりだが、やっぱり俺が無能すぎて切るのも嫌だということか……もうギルドじゃ無理っぽいな。早く終わらせて別のとこ行こう……


 「えっと、手をすこしですね……?分かりました……」


 テンションが下がるのを誰が責められようか!いや、誰も責められまい!



 俺は手を切り落とした。俺の手だったものが床に落ちる。


 「「ッ!?」」


 二人が驚いた顔をしている。俺の切り方そんなに下手だったんだろうか。今まで気にしたことなかったけど。


 「おいっ!何をしてるんだ!少し手を切るだけで良いっていっただろうがこの馬鹿!!手を切り落としてどうする!?」


 えっと?、なにを取り乱してるんだ?


 「ギルド長そんなことよりも治療を!ネストさんはやく止血を!!」


 あ、受付のお姉さんにネストって言ってもらえた。なんか慌ててるみたいだけど。よし!これだけで明日からも生きていける!


 「ヒール」


 俺の腕が治る。あ、やべ!この部屋血だらけにしちゃった!どうしよう掃除すれば弁償とか言われない、よな?


 「「ハ?」」


 「えっと、終わりました。やっぱりダメですよね、これくらいじゃ」


 結果は聞くまでもないだろう。というかやっぱり恥ずかしい!


 「掃除は明日するので今日は帰らせてください……」


 意気消沈な面持ちでドアノブを回す。


 「ちょ、ちょ、ちょっと待ってください」


 「エ」


 後ろからお姉さんが抱きとめてくる。もう一回言おう。抱きとめてくる。要するに大きなお胸さんが背中に当たってるわけで。


 「いgぱjg「いおあjがあfぱjあァアあぁアアアアアファファアアアアアア」


 その弾力に耐えられるわけもなく、俺はお姉さんを即座に引き剥がしその場を逃げ出した。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 「に、逃げられちゃいましたね」


 私がそう言うと、ようやくこの事態からギルド長が復活した。


 「あ、あれはなんだったんだ。あいつは『ヒール』って言ってたがあれがヒールならば世の回復魔法はなんになるんだ。ゴミか?」


 確かに彼が使ったヒールは明らかに常軌を逸していた。手を切り落としたと思ったらモノの数秒でまた復活したのだ。新しく生えてきたのだ。現に前の手だったものが今も床に転がっている。


 「惜しいことをしましたね」


 おそらく彼はもうギルドには来ないだろう。どういう思惑があったのか知らないが、こんなことになるなら最初からテーブルでもなんでも貸しておけばよかったと思う。


 「って、お前さん。首の傷、な、治ってないか?」


 「え……」


 昔、私が現役の冒険者時代だった頃に付いたものだ。ソレを機に冒険者を引退し受付の仕事についたのだが、これのせいで周りには気味悪がられた。今では髪を伸ばして隠していたのだが……


 ギルド長が私に鏡を渡してくれる。



 



 そこには傷一つない私の首があった。


 あの異常な回復魔法を見てからでは、どう考えても彼のせいだとしか思えない。


 「ネスト、か……」


  

 


 


 なんだか、頬が熱い

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