▼ お疲れではありませんかぁ?
友人に主人公(女装)を書いてもらったやつを清書してもらいました。
ありがとうございます!
腕を切られたという描写を少し切られたという描写に書き直しました。
…………日が沈み辺りを暗闇が支配し始めた頃、俺は再び城の前まで来ていた。
城の門のところには当たり前だが、2人ほど門番が居座っている。
今から城に侵入する俺だが、彼らに警戒を与えないようにするための準備はしてきている。
俺は目一杯の愛嬌をふりまきながら彼らに近づく。
「ニャー、ニャぁぁ、おじさま方、お疲れではありませんかぁ?」
――――女装をしながら。
結局、化粧はトルエにしてもらったのだが、服は「私のじゃ色気が足りないわね……」というアウラにより、色気がある(?)服を買うことになった。
門番の二人はそんな俺に機嫌を良くしたのか、特に警戒はしていないようだ。
「おう、これは可愛い娘さんが来たもんだ」
「いえいえ、そんな私なんて……」
謙虚にすればそれだけで可愛さが増す!というアウラのアドバイスに従う。
「そんなことより、お茶なんてどうですか?実は今日いいお茶が入って、おじさま方と一緒にお茶したかったんですけど……。ダメですか?」
これを言う時に俗に言う上目遣いが大事らしい。それだけでなく飲ませるだけでなく自分も飲むことが怪しまれないことに必要だそうだ。
確かにいきなりお茶を飲ませてくる奴がいたら驚くだろう。
「い、いやっ!いただこうかな!!」
俺は自分の分と門番の二人分のお茶を準備し、まず自分でそれを飲む。
もちろんその中には睡眠薬が入っているが、小声でヒールと呟き、睡魔からの脱却に成功する。
俺が飲んだのを見て、門番たちもお茶を口にする。
「な、急にねむ、く……」
「お、俺も、だ……」
門番たちは睡眠薬が効いたようで、すぐに眠りについてくれた。
最初の計画が成功した俺は、城へ侵入すると中に警備がいないか確認し、女装から『漆黒の救世主』の姿へと着替える。
しかし、王女様の部屋を探そうとして、自分が部屋の場所を知らないことに気付いた。
「おい!あんた大丈夫か!?何があったんだ!?」
その時、門番がいる方向から大きな声が聞こえた。これはマズイ……。まさかこんなに早くに気づかれると思ってなかった!
俺は慌ててその場から走り出す。後ろからは何人もの足音が聞こえているが、そんなこと気にせず走り続ける。
俺は、しばらく走り続けながら件の部屋を探していたが、一向に見つからない。
そんなことをしている内に、ついに挟み撃ちをされてしまった。
「この賊めが!城に忍び込むとはいい度胸だがここまでだ!!成敗してくれる!!」
そういうと同時に何人かが飛びかかってくるが、ここで実験の成果を発揮する。
素早く懐からナイフを取り出した俺は、飛びかかってきた奴らの腕を切り落とし、その間に再び逃げ出す。
「……え?……ぅ、うわぁぁああああああ。腕がぁあああああ」
「ヒールッッ!!」
俺は痛みで転がっている奴らに向かって走りながら治療する。
切られたはずの腕がまた生えてきたことに茫然自失になっているみたいだけど、そんなことを気にしている暇はない。今はただひたすら走って部屋を見つけることに専念する。
走ることに集中しすぎたのか、俺は今、城の明かりすら点いていないようなところに来てしまった。
そこには少し古びた扉があるだけで、他はとくに何もない。
さすがにここに聖女様はいないよな……と思い、また探そうと後ろを向いたとき、部屋の中から何やら音が聞こえてた、気がした。
どうにもその音が気になり、俺は扉を開ける。
「ッッ!!??」
その瞬間俺は、中にいた人物に剣で腕を少し斬られてしまった。痛いというわけではないがとにかく驚いた。
「あなたが、何者であっても、私は、屈することなど、ありません、から」
その娘は、以前にも聞いたことがあるような声をしている、ものすごい美人な女の子だった――――――
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「ご主人様、行ってらっしゃい……」
「おう!」
僕たちは、今しがた睡眠薬入りのお茶を持ち、門番のところへと向かっていたご主人様を見送っていた。
失敗すれば捕まってしまうというのに、それでもお姫様を助けに行くご主人様はやっぱりすごい人だ。
奴隷である僕たちにも優しいご主人様。
ご主人様が帰ってきたら、女装を立案した僕に何かご褒美をくれるかもしれない。そしたら今度こそお風呂で身体を洗ってもらおう。
「ねぇー、アウラお姉ちゃん達ー」
リリィが声をかけてくるが、今回あまり手助けできなかったから何か思うところがあるのかもしれない。
「なに……?」
「えっとねー?別にご主人様が女装しなくても、私たちの誰かが行けば良かったんじゃないのー?」
「「あ」」
…………どうやら、今回のご褒美はお預けになりそうだ。