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私のことも助けてください

ブクマ評価感謝です。


『キャアアア―――――ッ!』


 そして続いて聞こえてくるのはアウラの悲鳴。


「ッ!」


 俺とアスハさんは慌てて声のする方へ駆け出す。


 聞こえ方から察するに、さほど遠くはなかったはずだ。


その見立て通り、徐々にアウラたちの背中が見えてくる。


 そしてその背中の奥に見えるのは漆黒のマントを被った侵入者。


「ヴァイス……!」


 間違いない。


 あれはつい先日、俺が一戦交えたヴァイスだ。


「ネ、ネストっ!?」


 俺の声に気付いたアウラたちがこちらを振り返り、駆け寄ってくる。


「アウラ! 無事か!?」


「わ、私は大丈夫だけど……、グリムって子が……っ!」


 アウラに言われる通りグリムを見てみると、どうやらヴァイスに立ち向かって返り討ちにあったのか怪我をしている。


 ただこちらはルナが既に治療を始めていて、怪我も徐々に治っていっている。


「ヴァイス……っ!」


 俺は目の前にいる侵入者――ヴァイスを睨む。


 フードで顔は見えないが、隠れた顔には笑みが浮かんでいるような気がした。


「くそ……っ」


 このままでは不味い。


 俺は懐から取り出したナイフをヴァイスに向けながらも、この状況の危うさに気づいていた。


 今俺はアウラやルナたちといった皆を庇いながら戦おうとしている。


 アスハさんも応戦してくれるだろうが、この状況でどこまで凌げるか……。


 そして更にはここには現国王の子息や娘といった面々が集まっている。


 恐らくヴァイスもそれを見越して侵入してきたのだろうが、もしヴァイスがその中の誰かに手をかけたりなんてことがあったら、同盟どころの話ではない。


 国王様は責任問題を問われるかもしれないし、獣王様や魔王様たちとの中も険悪になってしまう可能性だって全然ある。


 もしそんなことになってしまったら、これまで頑張ってきたこと全部が水の泡になる。


 それだけは、避けなければならない。


「……っ」


 だが、それが分かったところでどうする。


 俺とアスハさんがヴァイスを足止めしている間に、他の面々、特にリリィ、ルナ、グリムの三人をどこかに隠れさせるか。


 でもそんなこときっとヴァイスだって予想しているだろうし、侵入者がヴァイスだけとは限らないのだ。


 でもこのまま戦い続けていてもジリ貧になるのは目に見えてる。


 どうする、どうする……!?


「……ネストさん」


「……?」


 そんな時、突然隣にいるアスハさんから声がかかる。


 俺はヴァイスから目を離さず、耳だけをアスハさんに傾ける。


「私が、時間を稼ぎます」


「な……っ!?」


 しかしアスハさんの提案は目を見張るものだった。


「そ、そんなの無謀です……!」


 アスハさんには失礼かもしれないが、この際構っていられない。


 アスハさんではヴァイスには敵わないだろうし、危なすぎる。


「……ですが、これしか方法がありません」


「……っ」


 俺は思わず唇を噛み締める。


 悔しいがアスハさんの言う通りだ。


 きっと現状ではそれが一番の最善手なのだろう。


 しかし頭では分かっているが、納得出来るわけがない。


「ネストさん」


「なん、ですか……?」


「大事な、大切な皆さんのことを、絶対安全だと思うところまで連れて行ったら今度は私のところへ来てください」


「…………」


「そしたら、私のことも助けてください」


「……っ」


 きっとアスハさんも自分が目の前の敵に敵わないことを理解しているのだろう。


 それでも俺が、大切な人達を守るための時間を稼ごうとしてくれているのだ。


 自分の身を挺しながら。


「……分かり、ました」


 俺はヴァイスに向けていたナイフを下げると、戸惑う他の皆に向かう。


「出来るだけ早く戻ってきますから……!」


 俺は皆の背中を押すようにして、アスハさん達から離れていく。


 その間、俺は一度も振り返らない。


 振り返る一瞬さえも、惜しいように感じた。




 静かな廊下に鳴り響く、幾つもの足音。


 俺は絶対に安全な場所、というのを探して城を駆け回っていた。


 思い当たるところといえば、以前一度だけ入ったことのある国王様の自室。


 あそこならば誰にもバレずに隠れられるだろう。


 ただ以前一度だけ教えてもらっただけなので、どこにあるのかすっかり忘れてしまっていた。


 ルナに聞いてもどうやら知らないらしく、俺は皆を連れてただひたすらに走り続けていた。


「……はぁっ……はぁ」


 息が切れる。


 以前であれば回復魔法をかけて疲れなんて取れていたはずなのに。


 ルナに頼もうにも、本人も辛そうで頼むには厳しいだろう。


「……くそっ」


 思わず悪態が出る。


 一刻も早くアスハさんの下へ帰らなければならないというのに、こんなに時間をかけていられないのだ。


「――――」


 気のせい、だろうか。


 その時微かに、ナイフの弾かれるような嫌な音がした。


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