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少しだけ怖い

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「そういえば、近々会談をすることになってるんだ」


「会談?」


 城の中で国王様とすれ違った時に、ふと声をかけられる。


 突然のことに驚きはしたが、それよりも内容の方が気になった。


「国王三人だけで、これからの種族同士の関係について話す予定だ」


 国王様は思い出したように言うが、かなり重要なことだろう。


「それって大丈夫なのか?」


 俺が言っているのは安全面に関して、だ。


 今回、恐らく都にはヴァイスがいる。


 もちろん今現在に、城にいるかは分からないが、その可能性だって少なからずある。


 そんな状態で国王三人で会談なんてしたら、狙われてしまうのではないだろうか。


「それは大丈夫だ」


 俺の言葉の意味を理解してくれたのか、国王様はそう言う。


「私はまだしも獣王と魔王は腕が立つからな」


「なるほど」


 言われて思い出したが、魔王様が強いことは覚えている。


 獣王様もかなりの力を持っていると聞いた。


 確かにその二人が一緒にいるならば、国王様の安全も大丈夫だろう。


 そこらの護衛なんてつけても逆に邪魔になるのは分かり切っている。


「うーん……」


「どうしたんだ?」


 俺はヴァイスのことを考える。


 確かに獣王と魔王は強いし、きっと大丈夫だろう。


 ここでヴァイスのことを言って、変に心配させすぎるのも良くないかもしれない。


「……いや、何でもない」


 結局俺はヴァイスの言うのはやめておいた。


 そもそも俺の勘違いかもしれないし、可能性の話をするのはあまり良くない。


「ん、そうか?」


 国王様は俺の反応に若干首を傾げていたが、それ以上追及してくることはなかった。


「因みに、このことは一応極秘のことだから内密に頼む」


「り、了解」


 じゃあなんでこんな廊下で話した、と突っ込むのはやめておこう。




「うーん、やっぱ言えばよかったかなぁ……」


 俺はそれからしばらくたった後ベッドに横になりながら、未だにヴァイスのことを伝えるべきだったのか悩んでいた。


 いくら可能性の話だったとは言え、せめてヴァイスと会ったことくらいは言っておくべきだっただろうか……。


 しかし折角これからの三種族の未来について話し合うって時に、無駄な心配をさせたくないというのも分かってほしい。


「どうしたのー?」


「うおっ!?」


 いきなり布団から出てきたのはリリィ。


 いつの間に潜り込んでいたのか分からないが、全く気付かなかった。


 リリィは俺が悩んでいると、首を傾げる。


「そんなこわい顔しちゃだーめだよ?」


 リリィは俺の頬を軽くパチンと挟み、顔を近づけてくる。


「あ、ありがと」


 俺は思わずたじろぐ。


 リリィが可愛すぎるのだ。


 本当に可愛い、これはやばい。


 俺は可愛い顔のリリィの頭を撫でる。


 やわらかい髪を手櫛てぐししてあげると、気持ちよさそうに目を細める。


 その流れでほっぺたに手をやると、ふにふにしていてとても気持ちいい。


 この気持ちよさをどう表現すればいいんだろうか。


 ただ、ずっと触っていたいと思えるふにふにの気持ちよさだ。


「むー? 元気出たー?」


 そんなことを考えていると、リリィがぱっちりと目を開き、そう聞いてくる。


 これがまた可愛い。


「出た出た、ちょー出た!」


 ヴァイスのことは結局答えは出ていないが、これ以上考えても仕方ないだろう。


 俺は、暗くなっていく部屋の中でリリィの可愛さに癒される。


 ベッドはリリィがいるせいで少し狭く、落とされないように身体を中央に寄せている。


 すると必然的にリリィとは身体がかなり触れ合ってしまうわけで。


 リリィの心臓の音が聞こえる。


 いつも元気だからか、その鼓動は少しだけ早い。


 俺がリリィの頭を撫で続けていると、リリィは俺の身体をぎゅっと抱きしめる。


 身体が痛くならないように気を付けてくれているのか、その力は普段のリリィの力から考えるととても優しい。


 そんな気を遣ってくれるリリィの優しさに思わず嬉しくなる。


 以前、リリィを魔王城から連れ戻してきたときのことを思い出すと、本当に良かったと思う。


 今ここにリリィがいなかったら、どうなっていたんだろう。


 というよりも、リリィだけじゃなく、俺の周りにいる人たちのうちの誰かが欠けていたどうなっていたんだろう。


 そう考えると少しだけ怖い。


 出来るならこれからもずっと、一緒にいられたらいい。


 そのためにはまず、種族間の隔たりを無くさなくてはならないのだ。


 それが一番重要で、一番難しい。


 ヴァイスがどうしてこんなところにいるのかは、やっぱり分からないけれど、その邪魔だけはさせるつもりはない。


 それは俺が回復魔法が使えるとか使えないとかそんなことは関係ない。


 会談しているところを邪魔しようとするなら、どうにかしてでも止める。


 俺は、眠たそうに目蓋を閉じていくリリィの頭を撫でながら、密かにそう決意した。



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