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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
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この人王様だ!

……今俺は都にいる。


 右には甲冑野郎、左には甲冑野郎、そして後ろにも甲冑野郎。


 「ウザいわ!!」


 「えっと、すみませんが我慢してください。王命なもので……」


 俺の心からの叫びに申し訳なさそうに頭を下げる甲冑野郎。


 「というか、なんで俺呼ばれたんですか?」


 「いえ、王様より優秀な回復魔法使いを探して来いと言われまして、街で聴き回った結果あなたの名前が挙がりまして」


 街のみんなのせいかぁあああ!!


 「ギルドの受付の方もベタ褒めしていらっしゃいましたよ?」


 アスハさぁあああああああん!!??


 思わぬところからの裏切りにガクッと肩を落とす。


 「そういうわけであなたをお連れしたのです、いきなりで申し訳ないとは思ってますが……」


 「い、いや。だ、大丈夫です……」


 「そうですか!なら、このまま王様がお話があるようなので、向かいましょうか」


 「ちょっと待てぇぇえええええ!!!!」


 今王様とか聞こえたぞ!?


 「わっ!ど、どうかしましたか?」


 「どうかしましたかじゃねぇよォォお!!!え、何今から王様のとこ行くの!?なにも準備とかしてないけど!?」


 さも当たり前のように言ってくる甲冑野郎だが、いきなり王様って一般市民の俺にはきつすぎる!


 「そんなに元気なら大丈夫ですよ」

 

 そしてニコッと笑いかけてくる(気がする)甲冑野郎。


 「いや、どのあたりが大丈夫なの!?そこちゃんと説明してくれよ!ねえ!?」


 俺の抵抗虚しく、結局大きい扉の前に連れてこられる。


 これ絶対中に王様いるやつだよ……。だって扉の前に怖そうな人が並んでるもん!!


 『入ってくれ』


 扉の中から響いてくる声に扉の周りの人達が反応し大きな扉を開ける。




 


 中には、俺と同じような一般人っぽい人達が数人、そしてその奥には一目見て、この人王様だ!って分かる人がいた。


 どうやら、呼ばれたのは俺だけでなく部屋の中にいる人全員がそういうことらしい。 


 「君たちを呼ばしてもらったのは私だ。突然のことで申し訳なかったが一刻を争う事態でな……」


 そこで王様が俺たちに説明をしてくれる。


 簡単に言うと、『自分の奥さんと娘さんが謎の奇病にかかってしまった。だから治療できそうな者を連れてきた』って感じだった。


 そこで俺はふと疑問に思ったことを聞いてみる。


 「あの、王様。俺たちを連れてきた理由は分かったんですけど、聖女様とかの方が可能性としては高いんじゃないんですか?」


 一般的に最も優秀とされる回復魔法使いは聖女様である。なのに、ここにはその聖女様がいないのである。


 俺の質問がまずかったのか王様は顔をしかめる。


 「実はな……、聖女とは私の娘なのだ」


 「「「はい?」」」


 突然の爆弾発言に、俺を含めて連れてこられた一同が皆唖然となっていた。


 「え、でもさっき娘さんは奇病になった、って……?」


 「そうなのだ。本当はその病気にかかっていたのは私の妻だけで、聖女である我が娘が治療を試みたのだが、逆に娘にまで伝染ってしまったのだ」


 その言葉に皆が固まる。今の言葉は言い換えてしまえば、一番の回復魔法の使い手である聖女が治療に失敗した、ということになる。


 そんな病気を少し優秀な回復魔法使いが治療できるとも思えない。


 「無理なことを言っているのは分かっている……。だから、無理だと思うものは辞退してもらっても構わない……」


 王様のその言葉に最初は動けずにいた俺たちだったが、最初の一人が出て行ったのを皮切りにして続々と皆がでていく。


 もしかしたら、俺だったら治すことができるかもしれない……。でもやっぱり確証もないし、それにやろうと思うきっかけもない。


 気がついた時には俺と王様以外その部屋には誰もいなくなっていた。護衛の人もこの気まずい空気を読んだのか部屋の外に出て行ってしまった。


 そんな中で俺は王様に最後に聞いてみた。


 「王様、もし誰かが二人の治療に成功とかしたりしたら…………どうするつもりだったんですか?」


 王様は部屋に誰もいないと思っていたのか、俺が居ることに気がつくと若干の驚きを見せる。


 「あ、あぁ。それは、聖女である娘でも治療できなかった病気を治療できる程の素晴らしい腕を持った回復魔法使いであれば、娘と婚約させたいと思っている。もちろん本人たちの意思を尊重するが……」


 「へ、へぇ、そうですか……」


 一瞬、「俺やります!!」とか言いそうになったが、よく考えてみたら超絶美人の聖女様が俺みたいなのを相手にするわけもないだろう。


 そうなれば、ただ俺の回復魔法について知られるだけになってしまい損をするだけになる。


 「やっぱり俺に出来るとも思えないんで、辞退させていただきます」


 王様には悪いが、やっぱり自分の身が大事だ。見ず知らずの人のために危険なところに行けるほど俺は善人じゃない。


 そう、それができるのは俺じゃない。


 それができるとしたらそれは……



          『漆黒の救世主』様だ。


 


 


 

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