お前それ言っちゃう!?
ブクマ、評価、感謝です。
討伐隊の治療がやっとのことで終わった俺たちは、今ギルドのテーブルでお茶を飲んでいた。
「き、今日は多かったわね……」
アウラが満身創痍といった感じでぐったりとしている。
トルエも回復魔法の使いすぎで魔力が切れそうなのか辛そうにしている。
まぁ、リリィに至っては途中から俺の膝の上で寝てたんだけどな。
しかし、かく言う俺も疲れていないわけではない。魔力は全然余裕なのだが、一日中おっちゃんたちに回復魔法をかけ続けるというのは、なんかなぁ、分かるだろ?
「じゃあそろそろ帰る?」
未だに皆ぐったりしているようだったが、いつまでもここに居るわけにはいかない。
リリィは最後まで起きなかったので俺が抱えて帰ることになったのだが、
「ロリコン」
「ちょ、お前それ言っちゃう!?」
「ご主人様は、ロリコンなんですか……?」
「いやトルエ、違うからな?俺はロリコンじゃないからな?」
次の日、俺がロリコンだという噂がギルドで流れた。
おい、おっちゃんたち昨日治療してやったのに!!
アスハさんには一日中無視された……。
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「では、優秀な回復魔法使いを集める、ということでよろしいですか?」
「うむ。よろしく頼む」
私は焦っていた。一刻を争う事態に頭がよく働いてくれない。
しかし私にはやらなければいけないことがまだまだ残っている。
そして私は椅子から立ち上がった。
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ロリコンという疑惑をなんとか解消した翌日、俺は家でゆっくりしていた。
今日は3日ぶりの休みだ。昼まで寝たらどこか遊びにでも行こうかな、と思いもう一度眠りにつく。
そして今は昼過ぎ、珍しく一人で街をぶらついている。
相変わらずこの街の人はいい人ばかりで俺を見かけると手を振ってきてくれたりする。
そんなみんなに手を振返しながら、あの時ゴブリン倒してて良かったなぁ、なんて考えていた。
「あなたは回復魔法使いアネスト様でいらっしゃいますでしょうか!!」
俺は突然の声に驚きながら何事かと思い後ろを向く。そこには全身を甲冑で覆っている人が数人立っていた。
「は、はぁ。アネストは俺ですけど……、な、何か御用ですか?」
もちろんこんなやつらは俺の知り合いには居なかったはずだ。それなのに向こうは俺のことを知っているらしい。
「王の命令で、都からあなたをお迎えに参りました!!何でも、緊急の事態だったようなので一緒に来てもらいます」
そう言って、俺の両脇を抱える甲冑野郎。
「って今すぐ!?ちょ、その前に少し時間くれよ!!」
アウラたちにも一言入れておかないと後で何を言われるか分からない、主に俺の身が。
「すみませんが一刻を争うということだったので申し訳ありません」
おいおいマジかよ……、これ帰ってきたら説教だわ……。
「あれ、ネストさん?」
偶然通りかかったのか、俺たちの横に宿屋の看板娘ちゃんが来ていた。
「あ、ちょうど良かった!もしアウラたち見かけたら俺、王様に呼ばれて都行ったから心配しないでくれって伝えといてくれ!!」
そう言い残すと同時に、俺は甲冑野郎に連れて行かれてしまった。
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今、私たちはこれからのことについて話し合っていた。
どうやら、ネストが私たちの知らないところで都に連れて行かれたらしい。
「まったく、ネストはなにやってるのよ……」
思わず口から溢れるため息。
いつもはニコニコしているリリィでさえも今の状況に顔を暗くしている。
「ネスト、大丈夫なのぅ?」
「それは多分大丈夫だと思うわ。何でも王様からの命令らしいし」
しかし大丈夫だと思っていても、どうしても悪い可能性を思い浮かべてしまう。
「うん、やっぱり考えても無駄ね!もう私たちも都に行くわよ!!」
「おぉー!!」
そうと決まれば話は早い。お金はいつもの仕事で貯めてるのもあるからそれで足りるだろう。
そして、残りはどうやって行くか、だが……
「アスハさん。都まで行きたいんですけど何かいい方法ってありますか?」
私たちはギルドにいるアスハさんに聞いてみることにした。
「あ、もしかしなくてもネストさんのことですよね?私も行きたいんですけど仕事を抜けられなくて……。ですが、移動手段だったら行商人に頼ればいいと思いますよ。幸いにもトルエさんが回復魔法を使え
るということなので簡単に乗せてもらえると思いますよ」
「じゃあよろしくお願いします」
私たちは都まで乗せていってくれるという行商人に挨拶をすませ、荷馬車に乗り込んだ。
全てはネストに会うために。