一緒に寝るのは恥ずかしい
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「うーん……大切なもの、かぁ……」
俺にとっての大事なものといえば、それはアウラやリリィたちであることは明白だろう。
けどそれがどうして、回復魔法を覚えるコツになるのかがイマイチピンとこない。
「うー……ん」
俺はベッドに横になりながら唸る。
「大切なもの……」
既に何回目か分からないその言葉を呟きながら。
…………。
だがやはり良く分からない。
「まぁ、また明日にしよう」
既に結構な眠気があったこともあって、俺は温かいベッドの上で目を閉じた。
「うっ!!??」
それはいきなりのことだった。
何も見えない暗闇の中で、俺の身体に何かが飛びかかってきた。
「えっえっ!?」
突然のことに慌てる俺と、どうやら俺にしがみついているらしい何か。
一体何が起こっているのだろうか、と未だによく働かない頭で考える。
しかし何も見えない中で、それを理解するというのはあまりにも酷。
とてもじゃないが寝起きの俺では無理だ。
「んぅぅぅ」.
そんなことをしている間にも、俺の身体の上にいる何かはぎゅぅぅっと俺にしがみついてきている。
「うおっと!」
何とか脱出を試みた結果、俺はその何かと共にベッドから転げ落ちてしまった。
「みゃっ!」
その時、変な声が響いたかと思うと、それと同時に俺の拘束が解かれた。
「……ってニア、か?」
すぐに離れて、確認してみるとそこには何やらもぞもぞしているニアが転がっていた。
「……えっと、何をしてるんだ?」
「…………」
俺の問いに対して、俯くニア。
暗闇の中でも分かるくらい、ニアの顔は真っ赤に染まっている。
「……ょうきなの」
「え?」
その時、ニアが何かをぼそぼそと呟いた。
「……つじょ…きなの」
「……え」
「……発情期、なの」
「…………」
マジですか。
発情期と言えば、あれだろうか。
その、何か……そう、性的に興奮する時期、とかそういうやつだったはず、だ……。
「そ、その、私今回が初めての発情期で……我慢ができなくて……」
「…………」
ニアはそれだけを言うとまた恥ずかしそうに俯く。
「……え、発情期っていうのは初めてだと我慢とかはやっぱり難しいのか?」
俺は自分の頬が火照っているのを感じながらも、俯くニアに尋ねる、。
「…………うぅ」
「……?」
しかしその問いに対して、ニアの顔がより一層赤く染まったような気がする。
「……最近、ご主人様がその………構ってくれなかったから……」
「え……」
一瞬自分の耳がおかしくなったのかと思ったが、ニアの顔を手で塞いでいる様子を見るとどうやら聞き間違いじゃないようだ。
「……あ、あー……ごめんなさい?」
確かに言われてみれば、この頃ニアと一緒にいる時間が少なかったかもしれない。
しかしそれはニアが悪いとかではなくて、ニアが獣人である為に城の中といえど、おおっぴらに出来ない。
まだ獣人との戦争が終わったばかりのこの時期に、実は王城に獣人が紛れ込んでいるなどという噂が流れてしまってはマズイというものでは済まされないのだ。
だからこの頃、どうしてもニアに構える時間が少なくなっていた。
きっとそれが今回こういう事態に陥ってしまった理由の一つなのだろう。
「そ、それで俺に何かできることがあるのか……?」
こうなってしまった要因が自分にもあるのであれば、俺が解決するのを手伝うのは必然だ。
「それなら……」
「それなら?」
どうやら何かあるらしい。
俺は、次のニアの言葉を待つ。
“ 一緒に、寝てくれない……? ”
「は?」
一緒に寝る……?
「ち、ちょっと待て」
「やっぱり、だめ……?」
「うっ……」
獣耳をヒクヒクさせながら、そう言ってくる。
上目遣いで。
「で、でも……」
寝るっていうのはつまり、そのそういう訳で……。
「あっ、そ、その寝るっていってもただ一緒に横になってくれれば……」
「あ、あぁそういうことか……」
俺の戸惑いを察してくれたニアが慌てて弁解してきて、ようやくその意味を理解しホッとする。
「そ、それなら……まぁいいよ」
俺は、床に落ちた布団を拾いながら、ベッドに戻る。
当然、一緒に寝るのは恥ずかしいが、それでニアが少しでも楽になるならそれでいい。
「ほら、おいで」
俺はニアに手を差し出す。
「……っ」
ゆっくりとニアがその手を掴み、ベッドに入り込んできた。
二人の距離が無くなり、背中にはニアの温かみを感じられる、
「…………」
あぁ、やっぱり緊張する。
何だかんだ言っても女の子と一緒に眠るというのはこう、くるものがある。
「……おやすみ」
「あぁ」
俺は、ゆっくりと目を閉じながらニアの頭を撫でた。
眠ってしまうまでずっと、撫で続けた。