二人きりの部活
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「ネストさん、ここが食堂ですよ」
「う、うん」
「あっ、ネストさん、ここは図書館ですね!」
「あ、うん」
「ネストさんっネストさん!ここは」
「あーっ!分かったから、ちょっと待ってくれ!」
…………。
一体どうしてこんなことになってしまったのだろう。
まず聖女であるルナが今更回復魔法の学校にいることがおかしい。
そしてルナはこんな風に俺の世話を焼いてくれるわけで……。
「…………」
そんなことを続けていた結果、俺は聖女と親しい男として嫉妬や奇妙なモノを見る目で周りから見られ始めていた。
一部では俺がどこかの大貴族の隠し子などではないかなどと馬鹿なことも噂されているらしい。
そんなことがあってつまり、俺は今誰ひとりとして友達がいないという状況に陥っている。
それも当然だろう。
だって俺の隣にはずっと聖女が待機しているのだから。
「なぁルナ、さすがにずっと一緒だと誰も寄ってこないんだが……」
「え?でも私自己紹介の時にそういうことは気にしないでいいですよって言いましたけど……」
そんな言葉だけで聖女に近寄ってこれるようになる人なんてほとんどいないに決まってるだろう。
しかしルナもルナなりに俺が色々と学園生活で困らないように頑張ってくれているのも事実。
そんなルナに対して「邪魔だ」など言えるわけもない。
「……はぁ」
俺は人知れず小さなため息をこぼした。
「……はぁ」
俺は今、自分の机に突っ伏していた。
ちょうど今まで教鞭を振るっていた教師が、教室から出て行っている。
「これ、難しすぎじゃないか……?」
チラリと周りを見回してみるが、特にきつそうな様子もなく皆のほほんとしている。
俺からしてみれば最初から最後まで意味が分からないことの連続で、いわゆる知恵熱というものを体験していた。
回復魔法の学校だから、回復魔法だけを教えるのかと思っていた俺だったが、どうやらそれは間違いだったらしい。
何やら計算をさせられたり、国の歴史を覚えさせられたり。
ルナに聞いてみたところ、回復魔法だけを訓練する特別コースみたいなのもあるらしいが、エスイックが俺に常識を覚えさせるために普通コースにしたようだ。
くそ、エスイックめ!
今度会ったとき成敗してくれるわっ!
「では次始めますよー」
「…………」
だが俺がそう決意した時には既に、次の授業の教師がやって来ていた。
「終わった……ようやく帰れる……」
本日の全ての授業が終わり、ようやく帰れる時間となった。
きっとリリィたちが俺の帰りを待ってくれていることだろう。
「よし、じゃあ」
「ネストさん、では行きましょうかっ」
帰ろう、と言おうとした時、ルナから声がかかる。
そしていきなり俺の手を掴んだかと思うと、そのまま教室を出てずんずんと廊下を進んでいく。
帰るのかとも思ったが、俺とルナは荷物を教室においてきたままなのでそれはありえない。
「ここですっ」
そういって連れられた先には一つの扉があった。
どうやらこの部屋になにかがあるらしい。
「えっと、何?」
「部活ですっ!」
「……ぶかつ?」
俺の問いに対して首を傾げながらルナはそう教えてくれる。
それにしても“ぶかつ”とは一体なんだろうか。
「では入りましょうか」
依然として手はつないだまま、俺はルナと部屋の中にはいる。
「…………?」
何かあるだろうと思っていた俺だったが予想に反して、その部屋には机が数個あるだけでどこも不思議なところはない。
「えっと、ルナ?」
意味が分からず、俺はルナに聞いてみる。
「これからネストさんの回復魔法を戻すための部活をやりますっ」
「は?」
「大丈夫です!私がちゃんと教えてさしあげますので!」
「あ、あぁ」
ルナは俺の異常な回復魔法について知らない。
一緒に過ごしている時にそれとなく聞いてみたが、どうやらエスイックもルナには普通の回復魔法が使えなくなったと説明しているようだった。
「これでも私聖女ですからねっ!頑張りましょうっ!」
確かに、教師なんかに教えてもらうよりも、一番の回復魔法の使い手であるルナに教えてもらうのが一番の回復魔法再習得の近道かもしれない。
俺はそんなことを思いながら、二人きりの部活に臨んだ。
新連載始めました!
しゃもじの英雄~ごはんを食べて異世界最強~
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