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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第三章 俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。
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俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。

ブクマ評価いつもありがとうございますm(_ _)m


 「あっ! ネストどこ行ってたのー?」


 「あぁ少し用があってな」


 会場に戻ると、まず初めにリリィが駆け寄ってきた。


 「もう、探したんだからね?」


 その後ろからは少しだけ不機嫌そうな顔をしているアウラ。


 「もう用は大丈夫なんですか……?」


 さらにその後ろにはトルエ。


 本当だったらニアもいたかもしれないのだが、さすがに獣人ということもあり今回は留守番してもらっているのだ。




 「ネストもちゃんとかえってきてくれたし良かったぁー!」


 リリィは俺の腰に腕を回しながらそんな嬉しいことを言ってくれる。


 俺はリリィの頭を優しく撫でながら祝賀会の会場を見渡す。


 そこには何時かの会議かで話し合ったりした国の偉い人達、そしてその他にも俺の知らない人がたくさんいる。


 さらに言えば、人間だけでなく魔族もたくさん祝賀会の出席しているようだ。


 場所によっては人間と魔族の友人らしき人たちが仲良くお酒を飲み交わしている姿も見受けられる。


 ただ、ここにはまだ獣人がいない。


 国王であるエスイックや魔王様の目指している未来はまだ遠い。


 しかし今回の戦争で、人間や魔族の皆の、獣人に対する敵対心はあまりうまれなかったはずだ。


 もちろん最初から多少はある獣耳などに対しての嫌悪感はあるだろうが、それはまた敵対心とは別物だと信じたい。


 獣人が今人間たちのことをどう思っているかという正確なことは分からない。


 それでも今回の俺の計画は、一つの夢物語が実現できたのだろう。


 「……回復魔法、か」


 ここ最近忘れかけていた、回復魔法への憧れが少しだけ自分の中で蘇ってきたような、そんな気がして俺はそう呟いた。


 「んぅー?どうしたのー?」


 「いや、何でもないよ」


 俺は不思議そうに首を傾げるリリィの頭を撫でた。





 「あぁー少し喉渇いたかも」


 祝賀会に用意された料理はどれも絶品で、食べずには居られない。


 しかしたくさん食べた後、ふと何か飲み物がほしくなった俺は辺りを見回す。


 「あ」


 するとちょうど近くにメイドさんが飲み物の入ったグラスを歩きながら配っている姿を見つけることができた。


 「すみませーん、一つください」


 「あ、はい。どうぞ」


 メイドさんから受け取ったグラスからは、柑橘系の果汁の匂いが香ってきている。


 「っ」


 しかしいざ飲もうとした瞬間、俺は誤ってグラスを手から滑らせてしまった。


 直後響き渡るグラスの割れるような音。


 「あぁー……」


 思わずそんな声を上げながら俺はすぐにグラスの破片を集める。


 周りからの視線が集まっているだろうことを予想し、俺はきまずさを感じていた。





 「痛っ」


 床に散らばった破片を集めているとき、ふと指先に痛みを感じた(、、、、、、)


 見てみるとどうやら破片で指先を切ってしまっているらしく、今も血が少しずつ流れ出している。


 「……ん?」


 その時俺は何かが何時もと違うような、奇妙な違和感を覚えた。


 「……?」


 しかしいくら考えてみてもその違和感の正体は分からず、俺は多分気のせいだろうと一人納得する。


 だがこのまま血が流れ出し続けるのも床が汚れてしまう。


 「ヒール」


 そう思った俺は何時もの如く回復魔法を唱えた。


 俺の回復魔法は切った腕でも生やすことができる。


 そして今回の怪我はグラスの破片で少し切った程度の切り傷。


 そのはずだ。


 「…………」


 ならどうして治らないんだ(、、、、、、)


 「ヒ、ヒール」


 ヒール、ヒール、ヒールヒール。


 どうしてか治らない切り傷に俺は何度も回復魔法をかけつづける。


 しかし結果は変わることなく、依然として血は流れ出している。


 「…………」


 そこで俺は床に落ちているグラスの破片の一つを手に取った。


 そして俺は自分の指を撫でるように滑らせる。


 「っ」


 次の瞬間、確かな痛みと共に(、、、、、、、、)薄らと血がにじみ出てきた。


  「……ヒール」


 俺はとある確信を持ちながら、小声で回復魔法を唱える。


 「……」


 案の定というべきか、俺の予想通りそこには治る様子のない傷跡が残っている。




 「あれ、ネストさん何してるんですか?」




 俺はすぐ近くからかけられた声の方を振り返る。


 そこには先ほども少し会話したルナが不思議そうな顔をしながら立っている。


 「……あぁ、いきなりで悪いんだけどこれちょっと回復魔法かけてくれない?」


 俺は指先に残っている二つの傷跡をルナに見せながらそう呟く。


 「? 別にいいですけど………」


 ルナは首を傾げながらもすぐに回復魔法を唱える。


 「…………まぁそういうことだよな」


 先程まで確かにあった傷跡は、もはや最初からなかったのではないかと疑ってしまうほど完璧に無くなっている。


 つまりはそういうことだ。





 「……あー…………」


 さすがにこれは自分ひとりだけではどうしようもない。


 一度、エスイックや魔王様に相談した方がいいだろう。


 俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。


 そして痛覚も戻ってきている件について。


 「はぁ…………」


 俺はこれからの想像もできない未来に思わずため息をこぼした。


以下あとがき

まずこれまで読んでくださってきている皆様、何時もありがとうございますm(_ _)m

ひとまずですがこれで第三章は終了となります。続きが気になる終わり方になってしまいましたが如何でしたでしょうか。継続回復は結構前々からやりたかったことだったので今回それを書く事ができたのは作者としても楽しかったです。(まぁちゃんと書けているかは別として……

一応ですが、今回の話をもってこの作品の隔日更新の方も終了となります泣。これからは三日に一度の更新となりますのでよろしくお願いしますm(_ _)m


次回からは今までの回復系主人公から一転して貧弱系主人公になってしまうかもしれないネスト君ですがこれからもよろしくしていただけると幸いです。


では、この辺で失礼します<(_ _*)>


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