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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第一章 聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。
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もし嘘だったら……

ブクマ、評価ありがとうございます。

「ねぇ、ネストそろそろ起きなさいよ」


 「き、今日は疲れてるから寝る……」


 起こしに来てくれたアウラには悪いが、昨日の一件で疲れている俺はまだ寝たいのだ。


 「ダメよ。今日だって仕事あるんだから、討伐隊のみんなだって待ってるわよ?」


 「し、仕事は休みにする」


 「ダメに決まってるでしょ。ほら、いい加減起きなさい!」


 そう言ってアウラは俺の布団を奪い去る。仕方なしに今日も仕事はすることになった。


 


 俺は昨日、ゴブリンの大群と戦った。足止めできたら御の字と思ってたのだが、蓋を開けてみたらゴブリンが弱すぎて結局全滅(?)させてしまった。


 その際、フードを被っていたので顔バレはしていないと思う。


 しかし、さっきから聞こえてくる周りの声の中でどうにも気になることがある。


 「ねぇ聞いた!?モンスターの大群をたった独りで全滅させちゃったっていう話!」


 「知ってる知ってる!『漆黒の救世主』様でしょ!」


 いや誰だよ!?もしかしなくても『漆黒の救世主』様って俺のことなんだろうけど……、それにしてもダサすぎだろ!!なんだよ『漆黒の救世主』って!!


 うんうん唸っている俺に疑うように聞いてくる。


 「あの、まさかとは思うけど『漆黒の救世主』様ってネストのこと、じゃないわよね?」


 「う…」


 そういえばアウラたちには言ってなかったっけ。出来れば内緒にしたいんだけど……。


 「え、もしかしてネスト、ホントなの!?」


 「う、うーん、どうだったかなぁ。ち、ちょっと街の外には出たけど」


 「はぁ、別に隠さなくていいわよ。責めてるわけじゃないんだし……」


 俺はアウラたちに隠し続けるのは得策ではないと判断し、事の顛末を一部を除き話した。


 一部というのは、俺が常日頃から腕や足を切っていた、というところだ。俺はこの街に来てからそれが異常だということを知ったので、最近ではやっていないが、やろうと思ったらいつでもできる。


 けど、やっぱりアウラたちに心配させるわけにはいかないので黙っておくことにした。


 皆には内緒にしておくようにお願いしたので、バレる可能性はないだろう。




 


 正直、甘く見てました。何がって?そりゃ、アスハさんを。


 俺たちをギルドで待っていたのは怪我した討伐隊でもなく、主婦のおばちゃんでもなく、ニッコリと笑顔を浮かべたアスハさんだった。


 「アネストさん、ちょっといいですか?」


 あ、これ完璧怒ってるわ。だって他人行儀でアネストって呼ばれたもん。


 「アネストさん、なんで呼ばれたか分かりますか?」


 アスハさんに呼ばれる理由といったら、昨日なにもしないで家に帰るって言ったことだろうか。


 「えっと、昨日討伐の手伝いをしなかった、からですか?」


 「いいえ?そのことは関係ありません」

 

 アスハさんは未だにニッコリと笑いながら俺の言葉を否定してくる。


 「えっと、それじゃあ……」


 他に何か呼ばれるようなことしたかな俺。さすがに昨日独りでゴブリンに突撃したことじゃないだろうし……、え、違うよな……?


 「分かりませんか?それなら教えて差し上げます」


 そう言うアスハさんは笑顔を顔に貼り付けている。正直マジ怖いです。


 「ではさっそく、『漆黒の救世主』様、とやらはアネストさん、あなたですよね?」


 ば、バレてたぁああ!!な、なんで!?


 「ひ、ひやッ?お、俺ひゃにゃいでしゅよ!?」


 いや、俺噛みすぎだよ。あ、これなんかデジャヴ。


 「へぇ、そうなんですか。なら私は信じますけど、もし嘘だったら……、分かってますよね(ニッコリ)?」


 「ご、ごめんなさい!!嘘です!俺です!!」


 「よろしい。あ、ただ確認したかっただけですのでネストさんは気にしないでくださいね?」


 ア、アスハさん怖すぎるよ……。


 怒らせないようにしよう……、と俺は肝に銘じた。


 「で、でもなんで俺だって分かったんですか?」


 「それくらい分かりますよ。この街でそんなことできるのネストさんくらいですよ?」


 「え、でも俺モンスター倒したこと無かったですよね?」


 「前にアネストさんが手を切るのを拝見させていただいた時に、ナイフの使い方がうまいな、って思ってましたから、私」


 そ、そんなこと思ってたのか。恐るべしアスハさん……。自分でも気付いてなかったのに……。


 「ネストさんがお強いのは判ってましたけど、あまり無茶しないでください!私だって心配くらいするんですから……」


 「あ、はい、ごめんなさい」


 「むぅー。ホントに判ってるんですか??」


 ジトっと上目遣いでこちらを睨みつけてくる。そんな、アスハさんの珍しい行動に思わず驚いてしまう。


 「ア、アスハでもそういう顔したりするんですね、正直意外ですけどか、かわいいですよ?」


 途中まで行って恥ずかしいことを言ってしまっていることに気付いたが、ここまできたら最後まで言ってしまえ!っと思ったが、恥ずかしさのあまり最後が疑問系になってしまった。


 「な、なに言ってるんですか!?変なこと言わないでください!!」


 そう言い残して、アスハさんは走り去っていってしまった。やっぱ似合わないことするもんじゃないな……。




 


 

 忘れてたけど、討伐隊の治療が忙しくて死ぬかと思いました。


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