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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第三章 俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。
135/181

私は優しいんです

ブクマ評価感謝ですm(__)m


 「っっ!!??」


 俺はまさかアスハさんが本当にいるとは思わず、叫び声をあげそうになった。


 しかし寸前のところでアスハさんの手が俺の口を塞ぐ。


 「お、落ち着いてください」


 「むむぅぅ!?」


 ベッドの上で二人。


 さすがにこの状況で落ち着くのは酷なものがある。


 「……わ、私だって恥ずかしいんですから少し落ち着いてくださいっ」


 「……む、むむぅ……」


 しかしアスハさんの本当に恥ずかしそうな顔を見ていると、徐々に落ち着いてきた。


 「そ、それでアスハさんは何を……?」


 俺の口を塞いでいたアスハさんの手がどけられたので、俺はアスハさんに聞いてみる。


 アスハさんがこんな夜中にこんなことしてくるなんてよっぽどのことだ。


 もしかすると昼のことを本当に気にしているのかもしれないが……。


 「……」


 しかしアスハさんは恥ずかしそうな顔を浮かべるだけで一向に口を開かない。


 その間もアスハさんは俺と身体を密着させているわけで、俺は今までで一番と言っていいほど身を固くしている。


 「……あ、アスハさん……?」


 それからもアスハさんは中々口を開かないので、痺れを切らした俺は、アスハさんに呼びかける。


 「……もうすぐ、戦争に行く人たちの出発の準備が始まるそうです……」


 「……え?」


 ようやく開かれたアスハさんの口からは、まだ俺も知らなかった情報が教えられる。


 恐らくギルド職員として働いているために、そういった情報が集まりやすいのかもしれない。


 しかし、もうそろそろ俺たちが戦争に向かわなければいけないのも確かだ。


 今も着々と、獣人たちの軍勢はこちらへと向かってきているらしく、俺たち人間側も急いで準備する必要がある、みたいなことをエスイックも言っていた。


 「……やっぱり……行っちゃうんですよね……?」


 「……」


 アスハさんはどこか寂しそうな顔を浮かべながら俺に聞いてくる。


 暗くて良く分からないが、もしかしたらそこには涙も浮かんでいるのかもしれない。


 「……はい、すみません……」


 多分アスハさんは優しいのだろう。


 自分がよく受付で担当する冒険者の一人が戦争に行くということに、ここまで心配してくれるなんて。


 「アスハさんは優しいですね、ただの自分が担当の冒険者一人の為にこんなに心配してくれるなんて」


 思わず思っていたことをそのまま口にしてしまった。


 「……っ……」


 するとどうしてかアスハさんは驚いた顔をこちらに見せてきたかと思うと、すぐに顔を逸らしてしまう。


 「……アスハさん?」


 その反応の意味が分からず、俺は再びアスハさんに呼びかける。


 何か気に障ることでも行ってしまったのだろうか。


 「……そうです。私は優しいんです」


 「あ、はい……」


 まさか自分で言われるとは思わず、俺は変な返事をしてしまう。


 しかしその時、アスハさんは俺の顔を強く見つめてきている。


 「……だから……」


 アスハさんは何かを言おうとしているのか口を少しだけ開く。


 「……帰ってきてください」


 そしてそう続けた。


 いつの間にか俺の顔にその両手を触れながら。


 「……ちゃんと、私たちのところに……私のところに、帰ってきてください」


 「……は、はい」


 アスハさんは顔をグンと俺に近づけながら、そう伝えてきた。


 俺は困惑しながらもなんとか返事だけはする。


 「……約束ですよ……?」


 そして最後に念押しをするかのように、アスハさんはほとんどキスをするぐらい顔を近づけてそう呟いたかと思うと、そのままベッドを降りて部屋を出て行ってしまった。


 「……はぁ……」


 緊張が急に解け、思わずため息を吐く。


 それにしてもまさかアスハさんが一人の冒険者の為にあそこまでするような人だったとは……。


 俺だから来た、みたいなことだったら嬉しいけど、それはさすがに夢の見すぎだろうか。


 きっと俺が唯一、直接行ける距離だったからとかに違いない。


 「……それにしても……」


 ただ、アスハさんとベッドの中で一緒にいたとき、ずっと思っていたことがある。


 それのせいで緊張が増していたとも思ってもいいくらいだ。


 「……アスハさん、いい匂いだったなぁ……」


 アスハさんは本当にいい匂いでした。


 俺はベッドからアスハさんのぬくもりが無くなる前に、再び眠りについたのだった。


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一読いただけたら幸いです。

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