まずこいつ誰だよ
ブクマ評価感謝です。
これから物語も進めていきたいので少しずつキリが悪いことが増えてくるかもしれませんm(_ _)m
「それでビエスト国の宣戦布告に対する対応だが、どうするか」
「うむぅ……」
俺の前では今、緊急の会議が行われていた。
俺は一応参考人として居合わせてはいるが、多分俺の出番はないのではないだろうか。
なぜなら会議に出席しているのは国王のエスイックを始めとした国のお偉方々であり、さらに言えば魔族の王でもありリリィの父でもある魔王様、そしてその部下の方々といった物凄い面子によって進行されているからである。
最初はエスイックたちの人間だけで進行していた会議だったが、途中で部屋の窓から飛んで入ってきたのだ。
さすがにそれを事前に知らなかった俺は一体何事かと思ったが、窓から入ってきたのが魔王様だったのですぐに落ち着くことができた。
それからは二種族合同での会議で進んでいるのだが、順調に進んでいるとは言い難い。
先程から同じことばかりを議論しているような気もする。
しかし確かに難しい問題であることも確かで、俺も何かを言えるわけでもない。
「……むぅ。一方的に宣戦布告をしてきたからなぁ……」
エスイックも難しそうな顔をして唸っている。
「やはり、戦争は避けられないかもしれませんな……」
魔王様も顔をしかめながらそう呟いた。
その言葉に周りの人も仕方なさそうな顔を浮かべながら頷いている。
「となるとまず人数を集めないといけないのか」
人間の方のお偉方の内にいる一人がそう切り出す。
「まずギルドで冒険者に頼むとして、城が抱える騎士たちも駆り出さなければいけないな」
そしてまた別の一人がそれに反応するような形で少しずつ会議は進んでいく。
俺はエスイックの後ろの席で大人しく目の前で行われている会議を聞く。
資金はどうするか、予想される被害、他にも色々と話が進んでいく中で、俺はふと疑問に思ったことがあった。
「あ、あの……戦争を避けるために何か考えたりは、しないんですか?」
俺は意を決して、質問してみる。
そう、今まで会議が進んでいく中で、戦争をどう対処するかということはたくさん話し合っているにも関わらず、一度も戦争を避けるために何かできることはないかということは議論されていなかった。
戦争の直接的な原因を作った俺が言うのもお門違いではあるが、ただ今回の会議でそれだけが気になっていたのだ。
「…………?」
しかし俺の質問に対しほとんどの人が意味が分からないような顔を浮かべながらこちらを見てきている。
まずこいつ誰だよ、とか思われているのかもしれない。
「まずこいつ誰だよ」
というか言われた。
魔王様が連れてきた部下の一人が俺に突っかかってくる。
「あぁ、私の直属の部下、といったところだな」
するとそんな俺を助けてくれようとエスイックがそう周りに宣言してくれる。
エスイックの言葉もあってか、俺に突っかかってきた魔族だけでなく、周りの皆もそれからは特に俺に構うようなこともなく、そして俺の質問は流されつつ会議は進んでいった。
「はぁ……疲れた」
会議も終わり、俺は少し大きめの溜息を吐いた。
やはりこういった緊張感漂うような雰囲気は苦手だなぁ……と一人考えながら、俺は部屋に残っているエスイック、そして魔王様に目を向ける。
「やっぱり戦争、しちゃうんだな……」
俺の言葉に王様二人は浮かない顔を浮かべている。
結局先ほどの会議ではほぼ確実に種族間の戦争が行われるということでまとめられた。
これは既に決まってしまったことなので、その決定を覆すことも難しいはずだ。
「……準備も急がないといけないな」
エスイックは疲労感を含んだ声でそう呟く。
何でも部下からの報告で、既に獣人たちの軍勢がこのヒュメアン国の都に向かってきているらしいのだ。
「……うちも急いでこちらに向かってもらっている」
魔王様もやはりどこか疲れを隠せていないような声でエスイックに反応する。
会議が終わってすぐに、魔王様の部下たちが自国へと軍を呼びに行っているので恐らく間に合わないことはないだろう。
「……はぁ」
やはりどうにも戦争を避けられなさそうな現状に思わずため息が隠せない。
「お主はやはり怪我人の治療、であるよなぁ……」
エスイックの言葉に、魔王様も頷く。
確かに自分でもそれが一番たくさんの人を治療できる最善手かなと思う。
「はぁ…………」
俺はこれから起こってしまう戦争を思い浮かべて、恐らく本日一番だろう溜息を吐いたのだった。
落下物にお気を付けください。という新作です。
一読頂けたら幸いです。
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