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聖女の回復魔法がどう見ても俺の劣化版な件について。  作者: きなこ軍曹/半透めい
第三章 俺の回復魔法がどう見ても聖女の劣化版な件について。
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多分気のせい

ブクマ評価感謝ですm(_ _)m

 「はぁ……やっぱりお主だったか……」


 エスイックは顎に手を当てて溜息を吐いている


 「……本当申し訳ない……」


 俺はただただ謝る。


 ―――結局俺はニアのことを正直にエスイックに話した。


 ここ以外にニアを置いておけるような場所にアテがあるわけでもなく、実質エスイックを頼る他なかったからだ。


 俺がニアのことを話すと、エスイックはどうやら既に予想はしていたらしくあまり驚いたりすることはなかった。


 「けどまさかこんなことになるなんて……」


 しかし俺はビエスト国からの宣戦布告に対し戸惑いを隠せずにいた。


 まさかニアを連れて帰ってきたことで獣人から宣戦布告をされるなど誰が考えられるだろうか。


 「実は……」


 そこでエスイックが何やらこちらに向けて言おうとしている。


 正直『獣人』が『人間』に対して宣戦布告をしてきたという今の現状だけでもいっぱいいっぱいなのに、これ以上何があるのだろうか。


 「獣人は魔族にも宣戦布告をしてきている」


 「……まじかよ」


 俺はエスイックからの衝撃発言に思わずそう呟いていた。


 「え、で、でもなんで魔族にもなんだ?」


 俺は驚きを隠せないままエスイックに理由を聞く。


 「うむ、まぁ恐らくは人間と仲が良いから、だとかだろうな」


 「そ、そんな理由で……?」


 しかしエスイックから返って来た答えは特段意外なものでもなく、単純そのものだった。


 「え、でもそしたら獣人は人間と魔族、両方と一気に戦うのか?」


 俺が知っている魔族がおかしいだけなのかもしれないが、リリィの父である魔王様は戦ったわけではないが、ドラゴン相手に圧倒したりしていたりその実力は測りしれない。


 もちろん人間にだって腕の立つ冒険者なんかもたくさんいるだろう。


 「あぁ、確かに獣人のしていることは無謀に近いものだと言わざるを得ないが、裏を返せばそれだけ自信がある、ということかもしれん。私も聞いた話だが何でも獣人は身体能力だけでなく五感まで優れているらしいからな」


 「あぁ……」


 確かに俺もそんな話をブロセルから聞いたような気がする。


 「でもやっぱり俺のせいだよなぁ……」


 まぁどちらにせよ俺がニアを連れてかえってきたせいでこうやって戦争が起こりそうになっているわけで……。


 もちろんニアを連れてかえってこなければよかったなどと思っているわけではないが、どうしてもそのことに責任を感じずにはいられない。


 戦争といえばたくさんの人が命の危険に晒されてしまう。


 俺がもっと自分の行動を省みていれば、この事態は回避できていたのかもしれない。




 「―――まぁそう責任を感じる必要はない」


 「え?」


 俺が一人自分の行動を悔いていた時に、目の前のエスイックが声をかけてくる。


 しかもどういうわけか、責任を感じる必要はないと言う。


 「もともと獣人は人間を嫌っておった。恐らくだが今回お主が獣人の娘を連れて返ってこなかったとしても、何かに因縁つけて宣戦布告をしてきただろう」


 「……」


 「だからお主がそんなに気負う必要はないぞ」


 「……わかった」


 俺自身、それで納得したわけではない。


 しかし、エスイックが俺を慰めようとしてくれていることはわかった。


 実際それで俺の気持ちも少しは楽になった気がする。


 「うむ、じゃあその獣人の娘はしばらくは城の一室に居てもらおう。貴族にも獣人が苦手な者も少なからずいるし、それに宣戦布告のこともあるしな」


 「あぁ、ニアには伝えとくよ」


 そして何とかニアが城にいる許可がもらえた俺は、用事はこれくらいだ、というエスイックの言葉に従ってトルエとニアが待つ部屋へと向かったのだった。





 「んぅー、じゃあこの部屋からでなければいいのね?」


 「あぁ、それで頼む」


 部屋に戻ってきた俺はまずニアに獣人が宣戦布告をしてきたことを教えた。


 俺がニアを連れてかえってきたことが直接の理由だということは俺だけが知っておけばいいかなと思い、そのことは教えていない。


 ただ当然というべきかニアは獣人の宣戦布告に驚いた様子だった。


 同じ獣人として何か思うところがあるかもしれないと思っていた俺だったが、ただ驚いただけでそれ以上は特に気にしていないらしく、俺もホッと胸をなでおろすことができた。


 それから念の為にできるだけこの部屋から出ないように、ということもニアに伝えると、宣戦布告のことより明らかに落胆したような顔をしつつも渋々と了解してくれた。


 ひとまずの用事を済ませることができた俺は、一度ギルドにでも向かおうかなと考える。


 「じゃあちょっとギルドに行ってくるから」


 すぐに用意を済ませた俺は早速部屋の入口でもあり出口でもある扉へと向かう。


 「……あ、僕もいきたい」


 そこで後ろからトルエが俺に声を掛けてきた。


 「トルエちゃんは私といるから行ってきていいよ」


 別に断る理由もないので一緒に連れて行こうかと思い後ろを振り返ると、既にトルエはニアの腕に掴まれている。


 「うぅーっ」


 何やらその腕の中のトルエから呻き声のようなものが聞こえるが、多分気のせいだろう。


 しかし、いつの間にこの二人は仲良くなったのだろうか。


 馬車にいるときはどうにも反りが合わないような二人だったのに、もしかしたら俺がいないところで何かあったのかもしれない。


 「ん、じゃあ俺は一人で行ってくるから」


 「はぁーい、行ってらっしゃーい」


 そして結局俺は一人でギルドへと向かうことにする。


 部屋から出たあと、後ろからトルエの呻き声のようなモノが聞こえたような気もするけど多分これも気のせいだろう、と俺は一人廊下を歩いていくのだった。


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