お口に合わなかったようだ。
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「うーん、晴れてよかったー」
俺は青い空を見上げながらそう呟く。
そして突然だが実は俺は今、馬車に乗っている。
もちろんトルエやブロセル、ニアに獣人の子供達も一緒だ。
どうして馬車なんかに乗っているのかと聞かれれば、ニアが夜に俺の部屋を訪れてきた翌日にまで遡る。
ニアから獣人の国『ビエスト国』へ連れて帰ってくれないかと頼まれた俺は早速、国王であるエスイックに頼み込んでいた。
といっても皆が乗れるだけの馬車が一つあれば良かったので、エスイックはすぐに用意してくれることになった。
因みに今回御者はブロセルが務めることになっている。
ビエスト国に着くまで時間もかかりそうなので、その間に俺が御者のやり方を教えてもらえば大丈夫だろうと考えたわけだ。
しかし俺がビエスト国へ行こうとしたとき、エスイックではなく聖女であるルナが口を挟んでくる。
何でも一緒に城の外へ行く約束はどうするのか、ということらしく俺は頭を下げながら、帰ってきたら城の外へ行こうと何とか説得することに成功したのだった。
「あ、あのねご主人様」
「うん?」
俺が馬車に揺られながら景色を眺めていると、後ろからニアが声をかけてくる。
因みにニアはあの夜の一件以来俺のことをトルエと同じように『ご主人様』と呼ぶようになった。
「…………ううん、やっぱ何でもないや」
しかしどういう訳か都を出発してから、ニアの元気がないように見える。
もしかしたら尻尾が治ったことで自分もビエスト国へ帰りたくなったが、それを言い出せないのかもしれない。
だが俺はこんなこともあろうかとニアとの奴隷契約書を持ってきている。
これならばビエスト国に着いた時に、この契約書を俺が破ればそれで万事解決だ。
俺は、遠くまで広がる草原に目をやりながら、一人のんびりとそんなことを考えていたのだった。
「よし、じゃあ作るか」
「うん……」
俺は隣で意気込んでいるトルエに声をかける。
トルエも久しぶりの料理だからか、少しだけ緊張しているようだ。
そう、俺とトルエは今料理を始めようとしていた。
以前では考えられなかったようなことだが、それにはちゃんとした理由がある。
それは、人間と獣人の味覚の違い、だ。
これまでブロセルやニア、そして子供達と過ごしてきてどうやらやはり人間と獣人は味の感じ方が違うらしい、ということがわかった。
それならば、トルエに任せようというブロセルの意見もあって、こうしてトルエが料理をしようとしているのだ。
もちろんそれでは俺とトルエは何を食べたらいいのか、という事態になる。
その結果、俺が自分とトルエの分の食事、そしてトルエが獣人の皆の分、という担当分けになった。
「…………」
作っているときは俺たちは互いに無言で、黙々と料理を作っている。
というか申し訳ないが、トルエが料理を作っているという事実が正直恐怖以外のなにものでもない。
まぁそんなことはさておき、俺たちは着々と料理を完成させていって、とうとう盛り付けをするだけになった。
「うわぁーおいしそー!」
「ほんとだぁー!!」
子供たちが俺たちの料理を見てはしゃぎ回るが、それも仕方ないのかもしれない。
「……よし、じゃあ食べようか」
すべての盛り付けも終わり、皆が用意できたので早速俺たちは食事をとることになった。
俺の料理は当然、自分とトルエの二つ分があり、そしてトルエが作った料理はちゃんと他のみんなの分が用意されていて、皆はその料理をとても美味しそうに食べている。
「これおいしいーっ!!」
「すごーっい!!」
やはりトルエの料理を食べてそんな感想が出てくるということは、獣人と俺たちは味の感じ方が全然違うんだなぁと改めて実感させられる。
「ぼくそれもたべてみたーいっ!!」
そんな時、一人の獣人の子供が俺の手元にある料理を見ながらそう言ってきた。
「ん、別にいいけど」
俺は特に気にせずその子に料理を渡す。
その子は俺から料理を受け取り一言お礼を言うと、すぐに料理を口にする。
「…………うぇぇ……」
しかしやはりというべきかあまりお口に合わなかったようだ。
「こっちの方がやっぱりおいしい!!」
そういってまるで口直しをするかのようにトルエが作った料理を食べ始めた。
「…………」
俺は何も言えず、ただ自分が作った料理を食べ続ける。
しかしその時ふとトルエの顔が目に映った。
トルエは俺に対して、どこか勝ち誇ったかのような表情を向けてきている。
……もちろん、獣人にとってはトルエの料理の方が美味しいのかもしれない。
でも、それでも……。
納 得 が い か な い っっ!!!