遠慮なく触って
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「……はぁ……」
俺はベッドの中で一人、溜息を吐いた。
お風呂に入ったあと俺たちは色々と話をしたりして。その後はそれぞれ自分の部屋へと戻っていった。
というのもメイドさんの配慮で、子供達や女性は別々がいいだろうというのと、それならば俺やブロセルは一人部屋がいいだろう、と今の部屋にしてくれたのだ。
当然俺はニアの獣耳やさらには尻尾を触れる時を期待していたのだが、部屋に連れて行かれるまでずっと俺の傍にいたトルエや子供達にそんな姿を見られる訳にもいかず、何とか自分の欲求を我慢し続けていた。
部屋の中は灯りもなく暗闇に支配されていて、当然部屋の中には俺以外には誰もいない。
「……寝るか」
心の中では未だに触りたいという気持ちがあったものの、俺は明日に備えて大人しく眠りにつくことにした。
――ガチャ。
「…………ぅんぅ……?」
欲求を抑えてようやく目蓋が重くなってきた頃、微かに扉が開けられたような音が聞こえてきた。
しかしちょうど眠くなってきていた俺は、特に反応することもなくベッドで横になっている。
この時間にやってくるということは恐らくトルエあたりだろうと働かない頭の中で考えたからだ。
「……ん…………」
扉が開けられた音がしてから少ししたあと、まもなくして誰かが俺のベッドの中に入ってきた。
恐らくはトルエだろうその誰かは、目を瞑っている俺の胸元までやってくると、俺に身体を預けるようにして動かなくなる。
「…………」
何か怖い夢でも見たのだろう、と俺は慰めるためにも目の前に感じる頭を優しく撫で始めた。
手が触れた瞬間、どうやら俺が眠っていると思っていたらしく、ビクッという反応が帰ってくるが、それ以降は大人しく俺に撫でられている。
「…………ん……?」
それからしばらく無言でその頭を撫でていた俺は、ふと撫でている手に変な感触があることに気がついた。
それは何やら髪の毛にしては硬いような気がするが、しかし頭にしては明らかに柔らかすぎる。
眠たい気持ちを必死に抑えてその何かを触り続け、どうやらそれが曲がったり動いたりすることがわかった。
「…………むぅ……」
そしてとても触り心地が良く、何時まででも触り続けられるような気さえする。
「…………?」
それならば反対の手でも触ってみようと、もう片方の手をその頭まで持ってきたところ、なんと手には今まで触っていたのとはまた別のそれがあることに気がついた。
「…………ぉぉぅ……」
俺は眠気が覚め始めてきていることを自覚しつつ、それを触り続ける。
一体これは何なのだろう。
俺はまだ働ききれていない頭で考える。
頭の上にある二つの触り心地が良いもの。
そして途中で曲がったり、自分で動いたりしている。
「………………ぇ」
俺はその時、その条件にあてはまるかもしれないものが一つだけ思い浮かんだ。
その瞬間俺からは眠気というもの全てがなくなり、俺の頬には冷や汗が流れ始める。
いやしかしここに居るのはトルエのはずで、そんなことはありえるはずがない……。
俺は閉じていた目蓋を恐る恐る開ける。
ちょうどその時、部屋の窓から一筋の月明かりが射し込んできて俺たちを照らす。
「…………っ……」
俺が目を開けた先には、涙を浮かべこちらを見上げてきている――――ニアがいた。
そしてニアの頭には俺の両手が置かれている。
つまり、『獣耳』を遠慮なく触っていたわけで……。
「……ご、ごめんっ!!」
大慌てでその手をニアの獣耳から離し、自分自身もベッドから落ちない程度でニアから遠ざかる。
「……ッ!?」
しかし俺がニアから離れたその瞬間、今まで布団に覆われていたニアの身体が露になった。
そして俺は驚愕する。
ニアは―――――服を着ていなかった。
「あふぁヴぁかるふぁああああああっっ!!??」
偶然にも真っ暗な部屋の中で月明かりに照らされたニアの身体を見た俺は、自分でも何を言っているのか分からないことを叫びながら、ベッドから転げ落ちた。